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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星

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エルーダ迷宮征服中(レイス討伐編・検証報告)22

 前回同様、道場地下の魔法訓練所で回収した獲物をぶちまけた。

 案の定、家具の類いはすべて消滅。兵士の詰め所にあった武装の類いや、宝飾品の類いだけが残った。一方、積み荷は当たりだった。

 特に銀食器は見事だった。ポットにグラス、バターナイフ。フォークにスプーンに大皿、小皿。目がチカチカする。

 他にも宝飾品、王冠やら宝剣やら宝石やらが、どっさりだ。

 落ち込んでいた僕たちは舞い上がった。

 残念だったのはオクタヴィアとヘモジである。一生懸命持ち帰った回収袋はぺしゃんこで、残った品が瑪瑙でできた馬の置物と銀のカフスの二点だけだったからだ。

 置物だけでもそれなりの値が付くのだが。本人たちは質より量らしく、口をへの字にして涙を浮かべていた。

 気の毒に思ったのだろう。珍しくアイシャさんがふたりに呟いた。置物の値段を呟いたのだろう。ふたりの目は見る見る輝きを増した。オクタヴィアの尻尾が暴れるのでヘモジが踏んづけたが、当人はそんなことが気にならないぐらい舞い上がっていた。

 リオナは銀食器のピクニックセットを抱えて僕の下にやって来た。

「キープなのです。また山の上でピクニックするのです」

 食器の収まった箱を手渡して、お宝の山に再突入していった。

 そうこうしていると迷惑そうな顔をしてアンジェラさんが現れた。ここへ来る前に声を掛けたのだが、宝の山を見て気が変わったようだ。やはり目が行ったのは銀食器だった。人数分の皿や食器を積み上げた。

 そして、申し訳なさそうに小さなブローチを一つ。

「もっと持って行っていいのに」

 今回も僕が欲しいと思ったものはなかった。強いて言えば、リオナが持ってきたピクニックセットが狙い目だったのだが。

 また呪われても困るのですべての品を『認識』スキルでチェックしながら振り分けた。

 今回は小物ばかりなので、選別作業も手分けできるから、楽である。

 そうこうしているとまだ鑑定依頼も出していないのにヴァレンティーナ様たちがまたやって来た。さすがに商人はまだ連れて来てはいないようだ。

 全員が欲しい物をキープして前回同様部屋の隅に並べた。

「また毛色の変わった物を回収してきたわね」

 そう言って、近くにあったスプーンを取り上げると、ヴァレンティーナ様の足は床に貼り付いたように動かなくなった。

「またとんでもない物を集めてきたわね……」

 傍らの宝の山に目を向けた。

 聞けば、これまた年代物のアンティークらしかった。見た目の何十倍もの価値があるらしい。

 僕たちの目も点になった。

 オクタヴィアたちの回収してきた二点も素の価値の五倍は固いそうだ。

 すぐさまギルドから目利きの連中がやって来た。

 あっという間に値札を付けていく。そのなかのひとりがリオナのピクニックセットに目をやった。

「これを売っては貰えませんか?」

 異例のことだったが、聞けばピクニックセットはよく売れるらしい。その分相場も上がりやすいとのことで、オークションの目玉にシダリス王のいた時代の出物として出したいらしい。

 リオナは悩んだ。

「別にアンティークにこだわっているわけではないでしょ? 新しいピクニックセットを買ってあげるから」

「買ってくれるですか?」

 ヴァレンティーナ様が頷いた。

「分かったのです」

 リオナは渋々了解した。


 数日後、価値はともかく、売り払った物より立派なピクニックセットが届いた。リオナは大いに喜んだ。


 訓練所から出て、渡り廊下を歩いていると、中庭の池の畔でチョビとイチゴが遊んでいた。

「ん?」

 ふたりの頭に何やら光るものが……

「宝冠(コロネット)なのです。ふたりにもさっきあげたのです」

 あれ、確か金貨三百枚ぐらいしたんじゃ……

「大丈夫か? 落としたりしないだろうな?」

「ナガレが固定化の魔法で固定してやったのです」

「ま、いいけどね」

 誰も蟹の頭に本物が載っているなどとは思うまい。

「それにしても結構な稼ぎになったな」

「でももう行きたくないのです」

「同感だ」と皆が頷いた。



 一週間後、僕たち全員は領主館に呼び出された。

 執務室の方では手狭なので、広間の方に通された。

 何ごとかと思ったら、迷宮に送り込んだ検証部隊から報告書が上がってきたと言う。

「検証の結果、分かったことを報告いたします」

 エンリエッタさん直々に報告書をまとめた物を読み上げた。

 まとめ上げる前の報告書の束が意外な程分厚く、後ろの長テーブルに鎮座していた。

「検証部隊を三班編成し、検証作業を行なった結果、以下のことが判明致しました。まず、呪いを受け、解呪に高い山を目指すところまでは、三班とも同じ結果を辿りました――」

 だが、ここで一班がある行動に出た。

 あの山の上でネックレスを領主側に差し出したのである。

 するとクエストは別のイベントに分岐したらしく、下山途中の領主たちをアレッタと老婆が襲撃するシナリオとなった。

 部隊長はそこで戦死。奪われたネックレスの回収を領主に依頼されたそうである。

 こちらのアレッタたちは直情的で領主側との対立は既に表面化していた。パーティーは次のマップまで、未開領域を逃げるふたりを追い掛けることになったそうである。

 そして次のマップでは、僕たちと同様、館のなかで戦闘を繰り広げることになった。

 ただ、老婆はおらず、アレッタの姿だけだったらしい。しかもアレッタ・レイスは五体程度のレイスを段階的に召喚するに留まったそうだ。

 しかもこちらのシナリオではアレッタの言い分も変わっていた。

 アントネッラを火刑台送りにしたのは領主ということになっていて、自分の命かわいさに、侍女を替え玉に仕立てあげたのだそうだ。

 そのとき引き合いに出されたのがアレッタの命であったらしい。姉は妹のため火刑台に送られ、そこで憤死したのでる。

 妹の怒りはいかばかりか。老婆と協力して、その息子を見殺しにした村人を殺害。レイスに変え、次々配下に納めていったらしい。

 アントネッラを領主に仕立て上げるとき、首に掛けられたのが例のネックレスであった。ネックレスは領主の一族の家宝であり、それを首に下げている限り、誰も彼女を疑わなかったと言う。

 そして彼女の死と共にそのネックレスはカースアイテムとなった。

 射殺された妹は、僕たちのときと同様、それによりアレッタ・レイスとなるのである。

 そして領主もその場で命を落とす。

 パーティー曰く、何をしても助からなかっただろうとのことだった。

 ダメージを受けていないレイスの『生命吸収』はほとんど無害のはずだが、領主はそれでも命を奪われたらしい。

 アレッタを倒したパーティーは領主の懐から鍵を取り、館の散策を行なっていたが、やはりレイスが湧いてきて、時間制限を迎えたそうだ。

 回収品はすべて『銀花の紋章団』の支店に簡易ゲートを設置して転送したらしい。当然、アルガス領主の許可を得ていないので違法行為である。

 残念ながら収穫は、僕たちが荷馬車から回収した分とほぼ同程度の物だけになったらしい。家具や調度品類はギミック扱いですべて消滅してしまったそうだ。

 しかも別荘には入れず、アントネッラ・レイスとの戦いも起こらなかったらしい。

 出口近くで老婆の遺体が転がっていて、事の顛末を記した手紙が握られていたそうである。


 別のもう一班が僕たちの行動と同じ行動を取った。しかも二回である。

 残念ながら、二度目のクエストは起こらなかったらしい。そもそも呪いのネックレスがイルダの家の金庫に納められていなかったのだそうだ。

 地下四十二階層に赴いても通常の廃墟イベントだったらしい。通常のアレッタ・レイスが湧いていただけだったそうだ。

 やはりそうそううまい話はなかったかと、全員溜め息をついた。


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