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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中(レイス討伐編)17

 ロメオ君の分を配達した。

 初めてロメオ君の自宅を訪れ、ロメオ君の部屋に入った。

「うわっ、天井高っ!」

 建築費をロメオ君が負担したとは言え、想像していたより大きな個室だった。しかも、壁には真新しい本棚が…… まだ半分も埋まってないけど。梯子がないと上の方には届かない。

 机の上にはゴーレムの研究書籍が堆く積んであって、机としてまるで機能していなかった。

 僕は言われるまま、机の隣にライティングビューローを下ろした。

 そしてお茶を頂きながらゴーレム談義をした。

 机の上の一冊一冊には借りた先を書いたしおりがご丁寧に挟んであった。借りた日時までしっかり記入してあった。ゴーレム関連の書籍は魔法学院の書庫から借りた物のようだ。しおりの記述を見る限り、学院長が手を貸したようだ。

 お茶が冷めると、僕たちは冒険者ギルドの事務所に寄った。

「今だ!」

 奇跡的に事務所のなかにいる人たちの視線が外れた瞬間、僕はプレートメイルを装備した等身大人形をこの辺かなという場所に設置した。

 僕たちは急いで逃げ出すと窓からなかを覗いた。職員が、つまりロメオ君の家族が皆、びくっと驚いて身構えた。一番ビビっていたのはアイアンクロー親父だった。僕たちはそれを見て笑った。

「それじゃ、僕はこれで」

「うん、ありがとう。後はごまかしておくから」

 ロメオ君は僕に手を振りながら、何食わぬ顔で事務所に入っていった。

「母さん、僕の荷物届いてる? この時間に配達してくれるように頼んだんだけど」


 本屋に寄ろうと思ったら、まだ開店していないことに気が付いた。

「困ったな」

 本屋で雪の国ファーレーンの地図を頼みたかったのに。今度、ゴーレム狩りに行く日のために。

 ゴーレムか…… ジュエルゴーレムひとりで行ってくるか。僕も杖を育てないと。

 でもひとりで行くのはなぁ。

 しばらく路上で考えた。

 どっちにしても家に戻らないと。

 装備の準備をしながらまだ考えていた。

「ヘモジとオクタヴィアは?」

 掃除をしていたエミリーに尋ねた。

「買い物に行くそうですよ、新しい寝床が却下になったそうで。今、アイシャさんのお部屋の方にいます」

「へー、アイシャさんと一緒か。珍しいな」

「雑誌でいい物、見つけたみたいですよ。さすがにあの陳列棚を居間に置くわけにはいきませんから」

 いよいよひとりになりそうだな。

「リオナの予定は?」

「久しぶりに稽古するそうです。最近動いてなかったからと」

 レイス相手じゃ、活躍の場もなかったしな。

 ちょうど帰ってきたので聞いてみた。

「ゴーレムは切れないからいいのです。きょうは稽古するのです」

 どうやらワカバも来るらしく、ピノたちと一緒に汗を掻くらしい。

 門下生だって切っちゃいけないんだけどな。

 しょうがない、ひとりで行くか。


 杖を掲げ、核を破壊するイメージをする。すると輪っかが現れて光り出す。そして魔法陣を作ると閃光を発して、ゴーレム三体、まとめて終わりである。

 ゴーレムは作動することなく、ただの像になった。

「次はピンポイントに行くか」

『一撃必殺』で、核の位置を見つける。

 よし、ピンポイントで! 狙いを定める。一瞬の明滅で終った。一緒に並んでいた二体が反応した。

 次の一体を狙う。珍しくコアが肩の横にあった。あの辺りは結構、気付かない。死角になる。

 よし! 破壊した。

 最後のぉおおお?

 やばっ、近すぎる!

 倒したゴーレムのすぐ後ろにいた。

 殴られる! 間に合わない!

 くっ…… 発動まで時間が掛かり過ぎる!

 結界で押し返す!

 まだか……

 輪っかが揃いようやく杖が光り出す。そして閃光がゴーレムを照らした!

 ゴーレムは床に突っ伏して動かなくなった。

「はあーっ」

 このタイムラグは致命的だ。普通に属性魔法を試そう。

 杖に頼らず、次の一角の三体を報酬度外視で『無刃剣』を使って切り刻む。

 おお、切れる、切れる!

 気分爽快! でもドロップ品は期待できない。

 次は衝撃波! まとめて三体ぶっ飛ばす!

 うわっ!

 三体同時に吹っ飛んだ。

「なんだ、これ?」

 いろんな意味で損害がでかい。ゴーレムが粉々だ。

 急に柔らかくなったようだ。

 姉さん、この杖は……

 次の三体を狙撃モードで狙った。

 すると先端の一枚の輪を形成していた物が、今度は三つに分かれて三角形をなした。

『一撃必殺』で急所確認!

「それッ!」

 三体の核が一瞬で吹き飛んだ。

「同時攻撃!」

 これは凄い…… これは面白い! いくらでも化けるぞ。

「次は凍らせる!」

 突然、ぶわっと冷気が絡み付いた。

 一瞬だった。

 僕は凍りついた倉庫で立ち尽くした。

「とんだじゃじゃ馬だ」

 元々、アイスウィスプだったからか、僕の得意属性だったからか知らないが。

「こりゃ、やばい」

 僕は周囲を照らした。

 広い倉庫が隅から隅まで凍りついた。

 反応は? 

『一撃必殺』で確認した。

 凍っただけでなく、息の根も止めたか。

「寒っ……」

 このまま消えるまで待つのは寒いな。

 空気を暖めようと、万能薬を口にしたとき、魔力の消費が遅れて一気に来た。


 気が付いたときには倒れていた。周囲の氷も溶けて消えていた。

 ドロップアイテムはまだ転がっていた。

 大して時間はたっていないようだ。

 僕はアイテムを拾う。

「なるほどね」


 相手がいなくなったので戻ることにした。

「まだ半日ある」

 なんだかまだ頭がくらくらする。

 食事をする気にもならなかったので、スプレコーンの北門に転移した。

 ポータルから本屋に向かった。

「あ、飛空艇だ」

 ヴァレンティーナ様の船とミコーレに納品する船だ。

 婚礼仕様から通常使用に換装が終ったようだ。真っ赤だった船が今度は青くなっていた。船腹にミコーレの紋章が描かれていた。

 本屋に着くと、扉を無造作に開けた。すると店主がでんと中央に鎮座してこちらをぎょろりと見つめた。読書好きの老人である。いつも何かしら読んでいる。

 四方を本棚に囲まれ、二階部分まで吹き抜けになっていた。

「いらっしゃい」

「ファーレーンの地図が欲しいんですけど。最新版、ありますか?」

「おや、若様かい。ファーレーンの地図ね…… 最新版じゃなきゃ駄目かい? 二年前の物ならあるんだが、あそこは環境が環境だからね、余り変わっていないとは思うんだけどね。時間があるなら取り寄せるけど、最新版は高く付くよ」

「できるだけ、正確を期したいので」

「三日でどうかね? 転移ゲート代はそっち持ちで。海を渡らなくても、王都の知り合いの所にあると思うんだが、原価プラス手数料一割でどうかね?」

「ではそれで」

 

 三日後の夕刻を期限にして、僕は書店を出た。

 家に帰ったら、軽く食事して…… いや、城のレストランに行くか。

 昼までまだ時間はあるから空いているだろう。と思ったらこういう日に限って、団体客が押し寄せていた。

 こんなことなら、エルーダで済ませてくるんだったと後悔した。


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