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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中(レイス討伐編)16

「シダリス王だと?」

 骨董屋が驚いた。

 さすがにどん引きしたようだった。

「迷宮のすることですから」

 他の商人がなだめた。

 別に付加価値を付けなくても、これらの品が皆いい品だということは、素人目にも分かる。 冒険者が余計な言葉で飾ることもない。口八丁で売り付けるのは商人の仕事だ。

「まだ幼いというのに、とんでもなく優秀な冒険者諸君だと言うことは分かりました。さすが『銀花の紋章団』ですね。冒険者ギルドとしては一線を退いたものだと思っておりましたが、なかなかどうして。人材が揃っている」

「それにしても、冒険者ギルドの認定作業も困難を極めるでしょうな。まさかレイスが無限に湧くというのは」

「教会に働きかけてみては? これだけの報酬があると分かれば確認作業に手を貸すでしょう?」

「それは駄目だ! そんなことをしたら何もかも教会に持って行かれてしまう」

「幸い攻略方法は分かっておることじゃし」

「そりゃ、大手さんは手駒もありましょうが、我らには」

「ここはどうでしょう? 取り敢えずクエスト情報は『銀花の紋章団』が彼らから買い取ると言う形にして、公開は控えて貰うことにしては? 冒険者ギルドの方にも既に一部情報が流れておりますから、いつまでもと言うわけには行かないでしょうが。話を聞く限り、早々クリアーできるものでもなさそうですし。物資の運び出しも限定的のようですから、この件で市場が飽和することはないと思いますが。それに繰り返しこなせるクエストなのかもまだ分かってはおりませんから」

 下手をするとヘモジクエストのように特定条件下での限定クエストの可能性もある。

 パーティーの誰かがネックレスで呪われれば単純に始まるものなのか、あるいは階層をまだ攻略していないとか、アレッタと戦っていないとかいう条件が加味されるものなのかは分からない。

 感触的には呪われればいけそうな気がするが。こればかりは僕たちには検証ができない。

 未到達エリア発見という単純な話ではない。

 条件次第では幾つものパーティーを、ときには初陣のパーティーを投入する必要も出てくるかもしれない。

 おまけにレイス無限湧きとなれば、引き受ける冒険者がいるかどうか。

「うむ、姫様にそう言われてはの」

「今、騒いでも仕方ありません」

「できればもう一往復ほどして貰いたかったがな」

「それが可能か、まだ分からないと言ってるだろ」

「贅沢は言いっこなしじゃ」

 みんなが頷いた。

 こちらとしては二度と行きたくないエリアなので、ある意味どうでもいい取り決めだ。

『眩しい未来を貴方に!』の原材料は魔石(大)だ。一番安い属性でも金貨四十枚だ。それを何発放り込んだ? 事前の装備調達、万能薬の消費量、命の重さを考えると、僕たちのパーティーでは金貨千枚以下では受けられない。

 正直、光の魔法使いを三人雇った方がいい。その方が楽だし、安上がりだし、安全だ。

『餅は餅屋』という異世界の言葉もあるしな。

 どちらにせよ、クリアーするために僕たちももう一度だけ行かなければならないが。

 取り敢えず明日はオフである。


 搬出は朝のユニコーンの散歩の前に行なうことにした。

 その後だと子供たちやユニコーンで広場一帯は雑然とするので、それまでに終らせるべく、僕が準備することになった。僕の能力をばらすわけにもいかないので、早起きも仕方がない。

 商人たちには定刻までに空荷の馬車を指定の場所に並べておいて貰うことにした。

 取り敢えずこのまま定刻になるまで梱包作業をやって貰うことにして、僕たちはこの場を後にした。


 因みにヘモジとオクタヴィアが集めてきた小物の数々が金貨二十枚で売れた。無造作に放り込んだ香炉とか、陶器の小皿とか、レトロな小瓶とか、飾りの施された小物入れとか、アクセサリーボックスとか。

 ふたりの喜び様といったらなかった。

 オクタヴィアとヘモジは早速、アイシャさんから端た金を受け取ると市場に走った。

「ホタテ、ホタテ!」

「ナーナ、ナーナ」

 声が遠ざかっていく。

「たまにはいいじゃろ。それより我らの分を今のうちに回収して貰えるかの?」

 全員が今回の戦利品から欲しい物を選んでいだ。

 僕は転移する振りをしながらそれらを回収していった。

 アイシャさんが選んだのはロッキングチェアだった。特別装飾が優れているわけではないが、書庫の鍵部屋で使いたいらしい。

 古代語の書籍群はアイシャさんもいらないと言うのですべて売却することにした。

 ナガレが選んだ物は金製の大きな鍋のような器だ。チョビたちが光る石を集めてくるので入れ物にするらしい。

「あいつらにそんな趣味があったのか?」

「磨いたら売れないかしらね?」

 ロザリアは陶器の兎の置物を一つ選んだ。テーブルの真ん中に置く物が欲しかったそうだ。

 リオナは特に欲しい物はなかったらしい。その代わり、僕の部屋に書斎用のでかい机を選んでくれた。

 手紙も滅多に書かないから、食堂や居間のテーブルでもいいのだが。部屋のスペースもあることだし、あって困ることはないだろう。むしろ金出してまではいらないのだから、いい機会だったとも言える。

 僕自身は、車輿を貰うことにした。座席の後ろの物入れを改造すれば、四人乗りにできるだろう。城のレストランに行くとき、お洒落な馬車で向かうのも一興だろう。敷地を散策するにも、このサイズはいいんじゃないだろうか。早速、荷台の改造を依頼しよう。

 アンジェラさんは自分用に鏡台と衣装ダンスを。そのほかに家を飾るために美術品を数点選んだ。

 エミリーはロメオ君の物より一回り小さいライティングビューローを選んだ。勉強机がなかったから喜ばれた。収納にもなるし。

 


 翌朝、日の出前に僕は地下にあった物をすべて広場前のロータリーまで運んだ。

 そして作業員が来る前に荷物を取り出して、商人たちが用意した馬車に詰め込んでいった。

 どれも重量が半端ないことになっている。なかには六頭立ての馬車もあった。

 荷運び用の馬と一緒に店に雇われた人足たちがやって来た。

「なんだ? ほとんど荷台に載っかってるじゃねーか?」

「お早うございます。悪いけど、余りここに長居できないんだ。朝の配達業務があるからね」

「お早うございやす。若様がひとりでやったんですかい?」

「まあね。随分重い荷台もあるけど大丈夫かな? 荷物減らすなら手伝うけど」

「ああ、大丈夫ですよ。後は任せておいてください」

「この町は道もしっかり整備されてるし、『浮遊魔法陣』も設置済みだぁ。雇い主も今回は魔石を奮発してくれてよ。魔石を嵌めれば、馬もスキップして帰れらぁ」

 酒が残ってるあんたが一番駄目そうだな。

 荷物のチェックが終った馬車から出立した。あの重い書籍を積んだ馬車が、軽々動いたときも、六頭立ての骨董屋の長い馬車が動いたときも感動した。こんな景色、大商会の倉庫ぐらいでしか拝めない。

 商人の使用人たちが馬車と共に消えると、今度は村から、朝の荷運び業務のため、大人たちがやってくる。転移ゲートからも続々と集まってくる。

 リオナが大きな欠伸をしながら、裏口から出てきた。髪の毛に寝癖が付いている。

「お早う、リオナ」

 僕は寝癖を手櫛で直してやった。

「お早うなのです。秘密の任務は終ったですか?」

「ついさっきね」

「では、今度はリオナが頑張る番なのです」

 入れ替わりに僕は裏口から家に戻った。

 そして少し早い朝食を取ることにした。


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