表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
654/1072

エルーダ迷宮征服中(レイス討伐編・領主館)10

 翌朝、いつものように振り子列車のなかで次のフロアーの対策が話し合われた。

 まず戦場は領主館である。城壁に囲まれたなかでも戦闘がメインになる。

 接近戦になる可能性が大きいので、注意が必要だ。

『生命吸収』を使われる前に倒し切らなければいけない。そのためにはまず実体化が欠かせないが、中途半端な攻撃ならしないで防御に徹することも選択肢の一つである。

 接近戦の場合、聖結界によるダメージが先に入ってしまう可能性があるので、そのときは全員の火力を集中して優先的に処理することになるだろう。いつになく先手を取ることが重要になる。


 そして、最深部に辿り着けたら、いよいよ本命アレッタ・レイス戦である。

 アレッタ・レイスが使役するレイスとの集団戦がどの程の規模なのか、まずそこから確認作業である。

「記録では使役してくる数は五体から十五体」

 ロメオ君が大雑把すぎる数字を読み上げた。

「はっきりしないわね」

 ナガレが言った。確かにこれでは作戦が立てられない。

 取り巻きの数も含めて十五という数字になっているのかもしれないし、時間差で五体ぐらいずつが三回出てくるのかも知れない。或いは早期決着が付けば五体で済むのかもしれない。いつぞやのヒドラ戦のように当たり外れがあるのかもしれない。今日のところは最悪を想定することになるだろう。一度に相手にするレイスの数は十五体プラス、ボスであると。


 そこで新たな情報を投下された。

 攻略のヒントとして、聖結界でアレッタ・レイスを封じ込める方法が紹介されていた。そのために情報では、光魔法の使用者を二人以上連れて行くことが望ましいとあった。

 これが成功すると敵の数の如何を問わず、アレッタが消滅した段階で作戦は終了するらしい。

「ロザリアを攻撃で使うっていうこと?」

 ナガレが尋ねた。

「そんなことしたらロザリアが集中的に狙われるぞ。誰がロザリアを守るんじゃ」

 アイシャさんが言った。


 幸い前回の戦闘では『生命吸収』を悉く聖結界によって無効化することができた。攻防一体の結界なので、邪魔にならないように僕の結界は聖結界の内側に展開していた。

 その結果、僕の結界を突破する者はなく、有効かどうか調べる機会もなかったわけである。

 そうだ。まだ試していない手が残っている。


 前回の戦闘で『生命吸収』の射程が思ったほど長くないことが分かっている。故にロザリアの結界に突っ込んできたわけだが。

 もし僕の結界も突破さえされなければ、距離をおくことで『生命吸収』を発動させないようにできるかもしれない。ダメージを与えなければ『生命吸収』も効果はないし、押し出して、距離を開けられれば、余裕で各個撃破が可能になるだろう。

 問題はやはり、僕の結界を素通りしないかということだ。何せレイスは虚空を転移する。これを防げるかは実際、やってみなきゃ分からない。

 迷宮に着いたら、まず四十一階フロアで試して見ることになった。


 結界がどうあれ、十五体のレイスを倒す手段が話し合われた。

 ボス以外にも取り巻きのレイスが参戦するかもしれない。それで十五体なのか、越えるのかは分からない。できればボス戦までには周囲は掃討しておきたい。

 ボス戦を優位に進める意味でも『眩しい未来を貴方に!』の小型版を使うことにした。

 虚空に逃げて回避されることも考慮に入れて、発動時間を長めに設定する。

 死に損ないほど怖いのがレイスなので、殲滅している間こそ要注意である。

 ついでにボスも巻き込めたらとも思うが、そこまでは期待しないでおこう。それはそれで何が起こるか分からないし、できれば攻勢に転じるまで、蚊帳の外に置いておきたい。

 どうしようもない状況に追い込まれたら最後の手段。『眩しい未来を貴方に!』の小型版の大量散布だ。

 散財だが仕方がない。攻略しないと先には進めないし、命にも替えられない。お守りを大量に装備して。付与も完備。回復薬も山のように……

 回復薬?

「!」

 その手があった!

 最近めっきり万能薬に立場を奪われ、保管庫で眠っていることが多かった『完全回復薬』だ。腰のポーチとリュックのなかの在庫をチェックする。

「使える…… これならやれる」



 まずは、手の内の確認作業からである。

 地下四十一階層の一番近いポイントでと言うことで、今回もまたあそこになるのだが、戦闘開始である。

 まず対岸に渡ると、レイス目掛けて『完全回復薬』の投擲が行なわれた。

 それと同時に僕たちの前方にも、少しばら撒いた。

 投擲は見事に命中した。

 よけると思いきや、小瓶程度ではよける気にならなかったようだ。手で払われただけだった。

 だが小瓶は見事に割れた。見事に液体を浴びたレイスは空に向かって絶叫した。そしてのたうちまわってあっという間に虚空に消えた。

 さすが『完全回復薬』容赦がない。

 仲間が死んで、警戒したレイスが姿を消しながら近づいてきた。

 が、薬をふりまいた場所まで来てこちらも叫び声を上げた!

 姿を現わしたところをみんなで集中攻撃、とどめを刺した。

「なるほど浄化された場所は消えていても近付き難いのか」

 思わぬ効果だ。

 これなら『眩しい未来を貴方に!』を戦闘開始と共に放り込めば、そこを安全地帯にできるかもしれない。


 残る課題は僕の結界だ。僕は結界を前方に展開した。

 すると突っ込んでくるレイスを阻むことに成功した。

 レイスはすぐに姿を消した。だが結界のなかに出ることはできなかった。周囲をうろつくのみだった。

 僕は壁に押しつけて一箇所に押さえ付けようと試みた。でもそれはできなかった。当然のように消えて別の場所に移動されてしまった。

 これでは一つ所にボスを押し込んでおくことはできない。侵入を阻めただけでも大きな前進だけれど、余りボスにうろつかれたくはない。

 最後の一体を残して僕たちは迷宮の入口に戻った。

 幸先は良好であった。


 そしていよいよ四十二階層突入である。

 脱出部屋を出ると、外を覗いた。

 するとそこは情報通り、領主の館の前だった。

 だが、様相は情報とは大分異なっていた。廃墟のはずなのに建物は健在だった。

「騒がしいのです」

 しかも石の城壁に囲まれた建物のなかでは戦闘が行なわれているようだった。

「聖水を振りまけ! 奴らに地獄の苦しみを与えるのだ! さすれば弓も当たろうぞ!」

 壁の向こうから声が聞こえた。

「ああ、聖水か! その手があった」

 ロメオ君が手を叩いた。

「何感心してるんですか!」

 ロザリアに突っ込まれた。

「近づかれて『生命吸引』をされるな! 銀の矢を打ちまくれ!」

 濁声の指揮官の声が聞こえる。

「魔法使いも思う存分戦え! この日のためにそなたらを雇ったのだからな!」

 女領主の声だった。

「ええ? なんで?」

「クエストの影響かの?」

 マップ情報に記されていたのはもっと簡単なシチュエーションだったはずだ。廃墟になった領主館で、レイスとレイスのボスが待ち構えているだけの。なのになぜ、領主が健在なんだ?

 なんで戦ってるんだ?

 計画がすべてぶち壊しである。

 僕たちは侵入できる場所を探した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ