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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十二章 星月夜に流れ星
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エルーダ迷宮征服中(レイス討伐編・ロメオ君とゴーレム狩り)9

「これからどうするの?」

 食事を済ませると現地解散になった。そこでロメオ君が聞いてきた。

「僕はジュエルゴーレムを狩って宝石集めかな」

「僕も行っていいかな?」

「構わないけど」

「育てたいんだよね」

 そう言って杖を掲げた。

 心なしか石が赤っぽくなった気がする。火属性を使っていたからだろう。でも柄の部分は以前より白くなった気がする。それに柄尻の部分だけが石突きのように太くなっていた。

「石突きが……」

「レイスと戦ってたらね。これでアンデットを殴れってことかな?」

「なんだろうね?」

「杖の先がどうしても重くなるから、いい感じなんだ。バランスを取るための錘代わりかもしれない」

「リオナの短剣も柄が白くなったです」

 実際レイスを切り刻んではいないリオナの短剣にも同じような変色が見られた。

『楽園』のなかに放り込んでいた僕の杖はさすがに変色してはいなかった。

「リオナはどうする?」

「みんなと買い物行ってくるのです。生地と羊毛の買い付けしてくるです」

 その後、スイーツでお茶会か。

「アイシャさんは?」

「もう行ったわよ。聖都の本屋に行ってくるって。頼んでおいた本を受け取るついでにアンデット関連の書籍を漁ってくるそうよ」

 ロザリアが言った。

「ボスキャラを一撃で葬れる魔法陣でも見つけてきてくれないかな」

「そんな物があったら誰も苦労してません」

「それもそうだな」

「チョビ貸して。荷物持たせるから」

「じゃ、ここで解散ということで」

 ナガレはリオナたちと、チョビを荷物持ちに加えて迷宮に消えた。

 ヘモジとオクタヴィアは僕と一緒だ。いつもの編成プラス、ロメオ君でゴーレム戦である。


 相変わらず広いだけの閑散とした倉庫だった。

「頂戴。投げるの」

 オクタヴィアが二本足で立って、光の魔石を柱に打ち付けるためのクナイを所望した。

 僕はオクタヴィアの腹にクナイ用のベルトを巻いてやった。

 元々屈強な男の腕に巻く物らしいが、オクタヴィアの腹回りにちょうどいいと思って買っておいてやったものだ。

 アンデット装備がそのままだから、お宝が多すぎて持てなくなった墓荒らしみたいな格好になっていた。

 前回のクナイは余り物で作ったので使い捨てにしたが、今回はちゃんとしたものなので回収できるように、柄尻に細い紐を付けた。

 オクタヴィアは紐を振り回して遠心力で投げる投法を覚えた。

 はっきり言って周りにいるこっちが危ない。たまにとんでもない方向に飛んでいく。

「ゴーレムより神経使うね」

 ロメオ君も同意見のようだ。

 みんながいなければ、僕も自分の杖の修行をするところなのだが、パーティー戦なのでいつも通りライフルで対応する。

 オクタヴィアが明かりを点け、敵を起こす。敵の急所を指定し、あとはロメオ君に任せる。

 精密射撃はお手のもののロメオ君はいろいろな属性を試しながら、核を破壊していく。先頭が倒れれば後続がつまずいて倒れるので、止めを刺しづらい相手にはヘモジが対応する。

「こんなに簡単だったっけ?」

 ロメオ君が首を傾げる。

 こっちは急所の指定しかしてないよ。オクタヴィアより何もしてないんだから。消化不良になりそうだ。

「ミスリル出た!」

 オクタヴィアが跳ねて戻ってきた。

「ああ…… ごめん、言ってなかった。今回から宝石集めがメインになったんだ。船に使う分はもう充分だから、ミスリル集めは優先しなくてよくなったんだ」

 オクタヴィアがきょとんとしている。

「ごめん、説明してなかったな」

「船の分は集まったんだ?」

 ロメオ君が聞いてきた。

「このあいだね。あって困る物じゃないんだけどさ。市場に流すと、剣一本分の塊だけでも結構目立つからさ」

「でも、ミスリルを欲しがってる冒険者は多いよ。ミスリル製の剣は冒険者の憧れでもあるしね」

「アガタがミスリルを扱えれば安く卸してやるのにな」

「そう言えば、エルフがアガタの工房に入ったって知ってる?」

「え? ほんと?」

「ほんと」

「ナーナ」

 オクタヴィアとヘモジが話に加わった。

「美人だって?」

 エルフは大概美人だけどな。

「てことは女鍛冶師なのか?」

「女で店を持ったアガタに憧れたんだってさ。アガタの方も自分の身の上に似てるからって即採用したみたい」

「技術を盗みに来たとかじゃないよね?」

「それはゴリアテやヴァレンティーナ様側も徹底的に調べて、保証済みみたいだよ。アガタ工房はコアなパーツの生産はしてないけど、何気に魔法使いの盾やフライングボードを扱ってるからね」

「じゃあ、ミスリルは扱えるのかな?」

「それ以前に買う資金がないんじゃないかな」

「…… 酒代に消えてるとか?」

「いや、そう言うことでは」

「じゃあ、練習用に一塊寄付して、打てるようになったら、売り付けるとしようか?」

「ミスリルって別の意味で扱いづらいよね」

「本来なかなかでない物だからね。姉さんはギルドを利用して他のレアアイテムと物々交換するときに利用してるみたいだけど」

 ゴーレムが一山消えたので、僕たちは手分けしてアイテムの回収を始めた。

 よし、宝石ゲット!

「ゴーレムの核とか回収できないかな。研究用に欲しいんだよね。ギルドに発注掛けてるんだけど、梨のつぶてでさ。掛け金が少ないのかな?」

「迷宮のゴーレムはシステム的に無理だからね。取るなら野生のゴーレム限定だよ」

「そんなの遭遇できたら奇跡だよ」

「エレメンタル系でいいなら、環境の厳しいところに行けば結構いるって聞いたことがあるよ」

「どれぐらい厳しい所?」

「雪の国の北端? 息も凍るってさ」

「先にこっちが死にそうだね」

「船も改造済んだし、今度みんなで防寒対策して行ってみようか?」

「是非、おねがい! 本物の核をこの目で見たいんだ」

 姉さんはウィスプの核にご執心だし、師弟ってのは似てくるものなのかな。

「全部回収した。次起こしてくる! ミートパイのためにがんばる!」

「ナーナ!」

 ふたりが闇に消えた。

「ミートパイ?」

「いつもここ終ったら、ご褒美にね」

「道理で張り切ってると思った」

 僕たちは笑った。

 僕たちはオクタヴィアのクナイに注意しながら、順調に狩りを進めた。

 ロメオ君の杖は形状こそ余り変わらなかったが、目に見えて、魔力の収束速度が増していくのが分かった。

 どうやら、杖に吸収した魔力から使用するため、魔力を溜める工程を省略しているらしい。まるで銃を撃つような速射と連射性能だ。魔力の回収は戦闘時以外の合間にしてるようだった。

 それもこれもロメオ君の制御能力の高さによるものだろう。


 狩りも無事終り、僕たちは食堂に向かった。

「ミートパイ! ミートパイ!」

 猫と小人がお尻フリフリダンスをして喜んだ。

 どこで覚えてくるんだろうな。こんなこと。

「ほら、オクタヴィア。腰巻き外すから動くな」

「なんか、見られちゃってるよ」

「最近、時間帯で客層が変わるからさ。結構目立っちゃって」

「僕たち、冒険者の威厳みたいなもの、皆無だもんね」

「ミートパイ、人数分頼んでる段階で駄目でしょ」

「ミートパイ! ミートパイ!」

 猫と小人がお尻フリフリダンスを再開した。

 通り過ぎる店員に「いつも宣伝ありがとうございます」と笑われた。

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