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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第十一章 夏休みは忙しい
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夏休みは忙しい(パスカル君と夏休み)44

「兄ちゃん、肉、肉入りッ!」

「僕も!」

「僕も!」

「新作って何? チコ、チーズたっぷり!」

「ナーナ!」

「ホタテ入れて! ホタテ!」

 パスカル君たちが突然、ワンテンポ遅れて万歳した。

「やったーっ!」

「どうだ、見たか! やればできるんだ!」

「やったのはあんたじゃないでしょ! ダンテ君とフランチェスカでしょ!」

「みんなの勝利だよ!」

「全問正解だって……」

「おめでとー」

「ありがとう」

「やったな。ダンテ君!」

「ありがと、パスカル君」

 全員が熱く抱き合った。

 そんなパスカル君たちを横目に子供たちは言った。

「兄ちゃんたち、早く頼まないとなくなるぞ」

「専用窯じゃないんだから、そう簡単に焼けないのです!」

「手伝ってくるわ」

 ファイアーマンが厨房のカウンターを飛び越えてきた。

「手伝うぜ、若様」

「助かる。オーブンを高温にしてくれ。どんどん焼くぞ」

「了解、任せとけ!」

「一枚目焼くぞ! ベーコンとパタータ、たっぷり載せだ!」

「おーっ」

 子供たちが怒濤の勢いで食器棚を漁り、皿を並べ始めた。

「誰か、パタータ、持ってきて!」

 ロザリアが子供たちに声を掛ける。

「ジュース樽、持っていきまーす」

 チッタがちび樽をテーブルに持ち出す。

「若様、シーフード海老載せ一枚追加」

 ナガレがカウンターに肘を突いて注文してきた。

「海老?」

 既に昼食を取っていたチョビたちもピザをご所望のようだ。

「蟹がピザ食べて平気か?」

「食べられなかったら、わたしが食べるから」

「海老ならボイルしたのがあるのです」

 リオナが生地にチーズをちりばめる手を休めて、倉庫に駆けていった。

 オクタヴィアがカウンターに飛び乗った。

「ホタテ! ホタテ!」

「忘れてないよ。ああ、そうだな。シーフードに入れれば一石二鳥だな。リオナ、ホタテも頼む!」

 オクタヴィアが真剣な顔で倉庫の方をじーっと見つめる。

 リオナは両手一杯に食材を抱えて戻ってきた。

「持ってきたのです」

 調理台にぶちまけた。

 ボイルした海老と貝柱の他にブロック肉が……

「サイコロにして載せるです」

「ナーナ! ナナナナナ!」

 ヘモジが野菜の盛り合わせピザを頼んできた。

「さすがにそれはちょっと…… いや、ラットゥーガ、レタスにペペローネ、生ハムでいけるか? いけそうかな? おっしゃ、待ってろヘモジ。うまいの作ってやる」

「ナー!」

「一枚目、焼けたぞー!」

 賑やかな昼食が始まった。



 昼寝を済ませた子供たちは午後の予定を爆弾処理に充てた。

 先生が助っ人に本領を発揮した。先生の株が子供たちの間で急上昇していた。

 パスカル君たちはゲームの復習を始めた。ダンテ君とフランチェスカ以外のメンバーが、五十個の魔石当てゲームに順番に挑戦中である。

「全問正解したら、今度は距離を取って繰り返しな」

 僕は傍観しながら、やることがなくなったような顔をしているダンテ君とフランチェスカに言った。

「エルネストさんはどれくらいの距離でできるんですか?」

 ダンテ君が聞いてきた。

「ん?」

 できるも何も、やったことないからな。

「わからないな」

「じゃ、手本見せてください。これからこの石を隠しますから見つけてみてください」

 フランチェスカが五十個の石のうち一番魔力の少ない石を隠すと言う。

 僕は近場の部屋に押し込められた。

 が、僕には生憎、見えている。みんなが魔力量の少ない石から順に六つ、それぞれ手に持って各々隠すのを。

 フランチェスカは石を魔石が入ったざるのなかに放り込むのが分かった。意趣返しのつもりだろうか?

 パスカル君たち全員が思い思いの場所に石を隠し終ると、部屋の扉がノックされた。

「時間は――」

「五分でいい」

 僕はそう言って、一直線にテーブルに向かってざるのなかを漁った。選び出すついでに石を順番に箱に収めていった。

 ざるに入っていた石をすべて箱に収めると、目的の魔石をフランチェスカに手渡した。

 そして身を翻すと、残りの魔石を回収すべく建物を上から順に調べた。

 最上階のソファーの下、三階本棚の奥、台所の鍋のなか、バーカウンターに無造作に置かれた酒瓶のなか。

「ヘモジ、その柱の植木鉢の下だ」

「ナーナ」

「後は…… ファイアーマンのポケットのなかだな」

 パスカル君たちはダミーの石まで全部発見されて、口を開けたまま立ち尽くした。

「並べてやろうか?」

 全員首を振った。

 兄弟子の面目躍如になったかな。

 でもまた退屈になってしまった。

 

 暇になった僕は明日からの行軍ルートを屋上から観察したり、装備の点検をしたりしながら時間を潰した。

 後半戦は正式名称アダマンタイトシェルタートル、黒くて鉱石と見紛うほど硬い甲羅の亀のお出ましだから、討伐方法の確認をする。売れ筋の甲羅はなるべく傷つけないようにして如何に倒すか。トレントが少なくなる代わりにこいつが増えてくる。

「スルーするのがいいんじゃないかな?」

 ロメオ君がマフィンを頬張りながら、手元の『魔獣図鑑』を覗き込んだ。

「わざわざやらなくても、財源には困らないしさ」

「そうだよね。もし攻撃してくるようならそのとき考えようか?」

「やっぱり倒すなら魔法だよね?」

「物理的には面倒臭そうだからね。リオナが斬り付けて駄目なら――」

「雷でも通じればいいけど。それより問題は食屍鬼(グール)だよね」

「索敵しただけでも結構数がいたな。あのゾンビ猿、動きが速そうだ」

「覚えたての『魔力探知』にも捕まらないだろうし苦労するだろうね。それこそ倒しても一ルプリにもならないし、燃やすしかないね」

「食屍鬼がいるってことは不浄な地が結構あるってことだよね? 屋上から見た限りそんな土地はなさそうだけど」

「あれだけの数、範囲外からわざわざ来ているとも思えないし、恐らく…… 浄化しておきたいな」

「他に危ないのは闇蠍だね。毒対策だけはしておかないと」

「毒耐性の指輪でも作っておくか。症状が軽減するだけでも気分的に違うだろ」

「これから物資を送り返すところだから、明日の早朝の便に間に合うように、リストに宝石を加えておこうか?」

 僕はロメオ君の申し出に頷いた。

「ところでそのマフィンは?」

「今ロザリアとリオナちゃんが作ってるんだ。そろそろ紅茶を入れた方がいいかな。子供たちの宿題も終るだろうし」

「じゃ、お湯でも沸かそうか」



「明日の予定を変更する。散策の目的を地図作成から、洞窟発見に切り替える」

 夜のブリーフィングで姉さんはいきなり方針変更を発表した。

「洞窟?」

「食屍鬼が潜んでいる洞窟の発見を最優先する。食屍鬼の地上の分布を見る限り相当広範囲に渡っていると考えられる。洞窟内の殲滅は目的ではない。あくまで地上への出口を発見、封鎖することだ」

「浄化しないと根本的な解決にならないんじゃないの?」

「これほど広範囲に渡ると一気にとは行かない。だから食屍鬼を閉じ込めることを最優先する。勿論地上に出ている食屍鬼は殲滅することが前提だ」

「ある程度はやってもいいんでしょ?」

「地下には入るな。地上の出入口からやれるだけに留めておけ。お前たちがやり過ぎると地上部分が崩壊しかねないからな。殲滅は手数がもう少し揃ったときにする。細かいことはまた明日の朝だ。何か言うことはあるか?」

 僕は挙手して、闇蠍の毒対策用の指輪を明朝支給すると報告した。

 最後に子供たちが一足先に明日、帰宅することが報告された。必要な調査任務が終了したことが理由である。


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