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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第三章 ユニコーン・シティー

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コロコロりん2

 僕たちは再び城門を出て、解体屋に向かった。

「お、帰ってきたな。ごくろうさん。獲物は届いてるよ」

 届いた魔物の伝票を貰った。

大王豚(グレートキングピッグ)?」

「コロコロです?」

「ああ、獣人はそう呼ぶんだったな。そうだ、これがコロコロだ。大王豚の依頼もあるけど消化しておくかい?」

「それじゃあ、後受けでお願いします」

 後受けとは、取ってきた獲物が先にあって、それにあった依頼を後から受けることだ。

「ちゃんと依頼受けておいてくれよ。後で帳尻が合わなくなるからな」

「了解です」

「で、黒毛の方は一匹丸ごと捌いておいた。お代は別料金で、銀貨三枚と言いたいところだが、こないだ蟹で儲けさせて貰ったからな。無料にしておくよ」

「ありがとなのです」

 さすがに一匹丸ごとは多すぎた。ふたりで背負い、両手に持って再び転移。屋敷に半分お裾分けして、こんどこそ帰路に就いた。

「あっ、ギルドに報告忘れた」


 アンジェラさんは早速ベーコン作りを始めた。あれだけあった肉を全部捌いて塩漬けにした。

 台所には真新しい腐敗防止用の保管庫が鎮座していた。

「これ、どうしたの?」

 天井の高さまである高級な木製家具だった。扉を開けると内装は全面金属板で覆われていた。

「買ったのよ。これから必要になるものだからね」

 箱の扉は横開きで、棚が何段にも据え付けられていた。

「お金大丈夫でした?」

「大丈夫よ。あんたに貰った支度金がまだ余ってるから。それより、台所が狭くなっちゃってごめんなさいね」

「ベーコンのためなのです」

「姉さんみたいに地下室でも掘れればいいんですけどね」

 掘ることはできるが家が傾くこと請け合いだ。

「まあ、あと一ヶ月もすれば引っ越せるようになるから、それまでの辛抱よ」

「そんなに早く?」

「候補地は見つかったそうよ。お姉さんも街道作りを中断して、城壁作りを始めたって言ってたから」

「ほえーっ、姉さんフル回転だな……」

「『銀花の紋章団』の本拠地になるんだからね。気合いも入るわよ」

「終わったギルドだって聞きましたけど? ヴァレンティーナ様が自分の部隊に使ってるくらいだし。団員なんて残ってるんですか?」

「確かに冒険者のギルドとしてはそうなんだけど、商業ギルド的な横のつながりは今も健在よ。何割かは家族ごと引っ越してくるんじゃないかしらね。あと」

「あと?」

「町を開拓してる連中がユニコーンを見たって話が広がっていてね。新しい町には獣人の入居者も殺到するんじゃないかって」

「ユニコーンの住む森なら獣人の村の二、三個ありそうですけどね」

「村ってのはどこも閉鎖的なものよ、新参者には…… ね。それより、報告行かなくていいのかい?」

「あ、そうだった!」

「夕食前に行っておいで」



 冒険者ギルドの入り口を潜ると早速コロコロの依頼書を探した。

 それはDランク依頼の掲示板にあった。

『依頼ランク、D。依頼品、大王豚。数、一以上。明前月(あけのまえづき)月末まで。場所、アルガス北部の森。報酬依頼料、金貨一枚から/匹、全額後払い。依頼報告先、冒険者ギルドアルガス支部』

「こちらは金貨五枚になります」

 窓口嬢は解体屋の伝票を確認しながら言った。

「ずいぶんと大物を倒したようですね?」

「まあ、群れのボスみたいでしたから」

「それで、ほんとにこの場所にいたんですか?」

「はい。間違いないです」

「どうやって辿り着いたんでしょうね?」

「へ? 歩いてじゃないんですか?」

「あの渓谷への入り口は洞窟だけでしたでしょ? 大王豚、通れそうでしたか?」

「あっ!」

 とてもじゃないが、あの洞窟にあの巨体が通れる広さはなかった。

「どこから入ったんだろ?」

「貧乏くじ引いたみたいですね」

「え?」

「調査依頼です。近日中に大王豚の移動経路を見つけてください。これはSランクギルドへの正式な依頼になります」

 机の下から書類を出してきた。

「報告の書式はこちらになります。できれば簡単な地図も添付していただければありがたいです。報酬は特にありませんので、この依頼をもう一度受けて行かれるといいかと思います。ええと…… もう一つの依頼と合せて報酬は金貨六枚と銀貨二十枚ですね。お確かめください。以上です」

 にっこり笑った。

「……」

 何も言い返せなかった。



 僕は帰ってアンジェラさんに相談した。

「おやまあ、とんだ依頼を受けたもんだね」

「子供の頃に黒毛に混じってそのまま大きくなったとかじゃないんですかね?」

「名鑑に載ってないんじゃ、最近やって来たってことだろ? いくら成長が早いといっても金貨五枚にまでなるかね。最悪の事態にならなきゃいいんだけど」

「最悪って?」

「迷宮が近くにできて、そこから溢れてきたとか?」

「コロコロは魔物じゃないですよ?」

「初期段階では魔物は沸かないわ。入り口ができるだけ。でも複数の入り口ができていたとしたら」

「そこが通り道になるんですか?」

 アンジェラさんが頷いた。

「滅多にあることじゃないんだけどね。もしそうなら早めにつぶしておかないといけないからね」

「つぶす?」

「魔力溜まりができているから、散らしてやるのよ」

「どうやって?」

「教会がやるんじゃない、普通? まあ、あんたが気にする必要はないわよ。あんたがやるのは調査だからね。育てて迷宮として活用するのか、つぶすのかは領主が判断することよ。あんたがするのはそのための資料集め。気楽にやんなさい」

「調査費なんで出してくれないんでしょうか?」

「なんでって、実態の分からないものにお金払えないでしょ? どんな依頼にもスポンサーがいるのよ」

「スポンサー?」

「依頼主のことよ。今回は領主。『何かあやしいことがありました、お金ください』なんて詐欺みたいなことギルドだって言えないでしょ? こういう場合、何があったか調査して初めてお駄賃が出るのよ。でもS級ギルドだから、やっぱりただ働きかしらね。地域貢献ってことで」

 だから「貧乏くじ」って言ったのか。

「わかりました。ちなみにコロコロってある程度乱獲しちゃっても大丈夫なんですかね?」

「解体屋が泣くわよ。大きめを見繕って二、三頭にしておきなさい」


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