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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第三章 ユニコーン・シティー

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腸詰めの日2

 三人は起きていた。

 買ってきた腸詰めと燻製肉を見て、リオナの目の色が変わった。

「おっちゃんのお店の腸詰めは最高なのです!」

 早速、女たちの手で夕飯の準備が始まった。

 その間僕がフィデリオの見張り番だ。

 食器の音がし出すとフィデリオもご機嫌になる。まだお乳しか飲めないくせにいっしょになってそわそわし始める。

 皿に料理が並べ終わるとアンジェラさんがフィデリオにお乳をやりにくる。

 僕はキッチンのテーブルについてリオナとエミリーと一緒に食事を始める。

 最初「使用人が一緒に食事などおこがましい」と、頑なに断っていたエミリーだったが、今ではリオナと楽しそうに団らんを楽しんでいる。

「おいしいのです! 親父最高なのです!」

 リオナは感動しすぎて椅子の上で跳ねている。

 エミリーもパンに挟んで頬張っている。

 やがてアンジェラさんも席に着く。

「どうだい? あの店の味は?」

「おいしいです。どれもとてもおいしい」

「ちょっと高いけどね、一度この味を覚えちゃうと病み付きになるのよね」

 そう言って試供品の燻製をつまんだ。

「なんだいこりゃ? うまいね。なんの肉だい?」

 アンジェラさんが狐に摘ままれたような顔をしている。

「豚肉、ベーコンですね」

「知ってるのかい?」

「食べたことはありませんが、知識だけ。作り方ならわかりますよ」

「本当かい! 教えとくれ!」

 ベーコンの作り方はマイバイブルの料理レシピのなかにあった。でも塩漬けに一週間とかの記述を見た時点で、僕の興味は失せた。でも、誰かが作ってくれるのなら話は別だ。

 僕は秘密のレシピの内容を紙に書き写してアンジェラさんに手渡した。

「こりゃあ、ずいぶん手の掛かるもんだね。でも、保存庫があれば腐らせずに済みそうだし…… チャレンジしてみようかね」

 アンジェラさんはすでに今後のことを考えていた。

 引っ越す先は未開の地。町に産業が定着するまでなんでも自前ですまさなきゃいけない。なるべく食生活を犠牲にしたくないというのが母親としての彼女の想いだった。


「ゲートを使えばいつでも戻って来られるんじゃ……」

「公共のポータルは無料じゃないのよ。お姫さんがいくらに設定するかわからないけど、アルガスの公共ポータルは一番近場でも一回銀貨二枚よ。往復で銀貨四枚。新しい町が仮に同額だとしても二都市合せて銀貨八枚よ」

「高ッ…… って、出入口両方でお金取られるんですか?」

「知らなかったのかい? 転移結晶があれば片道分で済むけど、それでも庶民には大きな出費なんだよ。あんたの実家にもあっただろ? 町の防壁の外、街道のウェルカムゲートのそばにさ。使ったことないのかい?」

「子供は使っちゃ駄目だって…… あれ? もしかして、使ってたらアルガスまで一瞬でこれた?」

 今更気付いた僕をアンジェラさんは呆れて笑った。

「あんたの両親もたいした玉だね。「かわいい子には旅をさせろ」とはよく言ったもんだよ。確かに転移ゲートの往復ばかりじゃ、世界の大きさに気付けないからね。いい経験になったとは思うけど、安全を考えるとね…… ご両親の決断に感謝するんだね」

 そう言ってフィデリオを優しく見つめた。

 僕の旅先の苦労は何だったんだ。自分がお坊ちゃんだという自覚は多少はあった。でもまさかこれほど世間知らずだったとは、自分で自分が情けなくなってくる。

 独り立ちを反対されるのも当然に思えた。

「ちなみにあんたの実家からアルガスまでだと片道、金貨二枚だね」

「高いよ!」

「王都までならさらに倍の倍よ。領地を跨ぐ度に加算されていくからね。ちなみに今言ったのは一人頭の料金だから。運べる荷物も手荷物だけだからね」

 あれ? 干し草大量に運べたけど…… あれってもしかして…… みんなが運んでいたのは新型ゲートだったのか!

 知らずに使ってた自分が恐ろしい。これってもしかして国家機密レベルなんじゃないのか?

 て言うか今の話を聞く限り、画期的な技術なんじゃ。特に物資を大量に運ぶ商人たちには喉から手が出るほどほしい物なんじゃ。

「おいそれと買い出しに使える代物じゃないってことは理解できたかい?」

 僕は大きく頷いた。

「それじゃ、明日は豚肉をよろしく!」

 リオナもエミリーも「よろしくー」と相槌を打った。

 アンジェラさんには銃やゲートよりもベーコンの方が大切らしかった。


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