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エルーダ迷宮侵攻中(殺人蜂・ジュエルゴーレム・ミノタウロス編)26

予約したはずなのに……

遅れましたm(_ _)m

 いつもの定食を食べながら、午後の予定の確認をする。ヘモジにはサラダ盛り合わせ特盛りを注文してやった。

「終ればいいね」

 ロメオ君が言った。

「固定の宝箱は大体隠し部屋だしね。戦闘を最小限に済ます手もあるけど」

「駄目よ、もし羊のレプリカ持ってたらどうすんのよ!」

 ナガレが抗議した。

「それって急がなくてもいいんじゃないの?」

「そもそも十本揃えて何が貰えるか知ってるのか?」

「決まってるじゃない。本物よ」

 問題はそこだよな。本物貰って嬉しいか?

「金色の羊でも飼うのか?」

「金色の毛玉で何か編めるでしょ!」

「お前、編み物しないだろ?」

「エミリーがするわよ」

「金色の毛玉渡されたって、エミリー、困るだけだぞ」

「面白けりゃいいのよ。子供たちにお揃いの金色マフラーさせるのよ。傑作よ、きっと!」

「そんな罰ゲーム考えてたのかよ」

「どこが罰ゲームよ!」

 ナガレの奴、本気のようである。

「確かにどんなものか、一度見てみたい気はするのです」

 召喚主が賛同した。

「別に構わないけどね。魔石も溜まるし」

 ロメオ君も反対する気はないようだ。

「残り八本か……」

「物は同じだったから、十種類集めるのとは違うと思うわ」

 ナガレが言った。

 確かに十種類と十個では雲泥の差だからな。

「で、そっちは何件クリアーしたのよ」

「依頼か? 十二件だな」

「意外に少ないわね」

「もっと狩った気でいたのです」

「午前中の分だけだぞ」

「分かってるわよ」

「半日で六十は多いだろ?」

「広い割に密度がないのよね」

 広さに合わせて敵がいたら、困るだろうが!

「後半は少しはやれる手合いが欲しいのです」

 これだけ戦えばミノタウロスにも慣れるか。慣れが一番怖いんだよな。冗談じゃなくて、そろそろ歯ごたえのある敵を拝まないと、気が緩みっぱなしになる。

「午後は部屋も広くなるし魔法主体でいく」

「えーっ」

 アイシャさんの宣言にリオナは凹んだ。

 さすがに見ているな。リオナの気の緩みに気付いてる。ヘモジはいつも緩んでるけどな。

「午前中頑張ったんだから、午後は偵察な」

「戦ってる方が楽なのです」

「リオナ、みんなで戦ってるんだからね。頑張りすぎないのよ」

 ロザリアが懐柔する。

「頑張りすぎたですか?」

「六十てことは、普通のフロアーだとワンフロアー分よ。それ全部ふたりで倒しちゃったことになるんだからね」

 言われて、ようやく自分の偉業に気付いたようである。

「頑張りすぎたみたいなのです。サポートに回るのです。でも、危なくなったら戦うのです」

「そのときはお願いね」

 丸く収まったようだ。

「ナ?」

「お前もだ」


 一階の残りのエリアには特出すべきことはなかった。

 攻略も扉を開けては魔法攻撃の単純な作業の繰り返しになった。せめて、廊下にいる自分たちを察知して行動を起こしてくれれば気合いの入れ方も違うのだが、ミノタウロスも広すぎるエリアに辟易しているのだろう、サボタージュしてやる気がないようだ。部屋のなかぐらいはなんとかカバーしてやろうと踏ん反り返っているのだろうが、それでは索敵能力の高いうちのチームには駄目なのだ。すべてに後手を踏むことになる。

 モチベーションがかろうじて維持できたのはひとえにレプリカ探しのおかげだった。もしレプリカ探しがなかったら、どうなっていたことか。面倒だと諦めて、最短ルートを行っていたかもしれない。

 それでもレプリカは結局一本増えただけだった。


 爆睡しているヘモジをリュックに押し込んで修道院に向かった。代金を精算して、ワカバに渡す大斧を受け取ると帰宅した。


 自室に戻り、新型銃の図案を持ち出すと館に向かった。

 家主と姉さんが待ち構えていた。

 執務室に通されると、窓にカーテンが施され、使用人は許可あるまで入室禁止を言い渡され、消音結界が施された。

 そしてすぐに検討会が始まった。

 三枚のうち一つはすぐ廃案になった。車輪が二つ付いた大砲である。丸い砲弾を撃ち出す物だったが「弾は誰が運ぶんだ?」という一言でボツになった。馬一頭で運べる手頃さだったので、携帯性もいいかなと思ったのだが。

 どうやら姉さんたちが欲しているのは部隊で運用するような物ではなかったらしい。

 まあ、携帯性にもいろいろあるから、これくらいでもいいかなと思ったのだが、ご希望に添えなかったようだ。現行のカタパルトなどに比べたら雲泥の差だと思うのだが。依頼通り、弾に金を掛けないとなると、これくらいが限界だ。

 次の図案は銃に魔法の矢を装填するような物だ。一番分かり易い仕組みだ。軽量で、魔法の鏃を使うからそれなりの破壊力がある。銃の特性で弓より飛距離も稼げる。ただ、鏃だから装填できる魔力の量には限界があった。破壊力を重視した場合、『必中』の効果時間は短くなる。結果、破壊力はあるが追尾性がない、あるいは破壊力は小さいが追尾性の高い代物ができ上がる。どちらにしても火竜相手には役に立たない。連射性も弓を番えるのと変わらないので、悪くもないがよくもないと言ったところだ。迷宮では人気が出そうであるが。

 勿論、姉さんたちの欲しているレベルではないことは分かっている。

「却下だ」

「この程度のことなら、誰でも思い付くぞ」

 そりゃそうだ。

 僕は満を持して三枚目を出した。

「なんだ、これは?」

 僕が出したのは、太い筒と大きな魔石で作られた砲弾、もとい鏃である。矢だと言い張るために鏃に矢羽根の付いた棒が付いている。非効率だが止むを得まい。

「魔法の矢の欠点を排除しました」

「魔法の矢をでかくしただけじゃないか!」

「何か問題でも?」

 経費が問題か。自分で突っ込む。

 バリスタほどではないにしても何せ、大きな魔石で作る鏃である。屑石で作るのとは訳が違う。滞空時間と破壊力を考えると魔石(中)程度で充分だとは思うが。

「追尾性と破壊力を総合的に考えるとこうなりました」

 結局バリスタは理にかなった兵器だったということだ。射出に物理的な力を使い、魔力を温存しつつ大きな鏃で破壊力と追尾性を担保していたのだ。

「安く上げろと言ったはずだが」

「では筒の方に仕掛けを施せば。ただ操作する側にそれなりの魔力が必要になりますが」

 銃の構造を使うということは、射出に魔力をどうしても使うということだ。

「それでは魔法使いを使った方がいいということになる!」

 だから、元々そういうものですよ。射程が命みたいなもんなんだから。弾丸を改造できなくなったときからね。

「確実に火竜を一撃で仕留めるなら、石の大きさの調節はいりますが、これがベストだと思いますけど。弾にお金を掛けたくないのは分かりますが。質量と射速を増やさないと破壊力は生み出せませんし、そのためには結局、魔力がいるんですよ。汎用性を考えるなら魔石に溜めるしかないでしょう?」

「お前がリオナに持たせるならどれにする?」

「三番ですね。矢を事前に用意しておけば余裕で火竜を倒しますよ」

「連射性は?」

「何本か一緒に束ねるとか?」

 溜め息を付かれた。

「作れるか?」と聞かれたので「面倒臭い」と言ったら「作って持ってこい」と言われた。

 追々稼ぎになるならいいけど、市場には流れなさそうだもんな。自分たちの装備として持つ分にはやぶさかではないのだが。

 銃の魔石を改造したのは姉さんだったが、今回は自分でやろう。いろいろバランスを見ておきたいし。

 結論は試作を見てからと言うことで先送りになった。

 迷宮攻略も一日休みを入れたので、明日取りかかることにしよう。

 

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