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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第八章 春まで待てない

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武闘大会(二回戦~三回戦)8

 僕たちはトーナメント表を確認しに行く。

 二回戦の相手は、ヴェレーノ・ヴァンヴィーノ。大柄、肘固定式の丸盾、ハンマー使い。

 どうやら会場に毒を撒き散らした三人組のひとりのようである。

 よかった。どうやら騎士道精神など持ち合わせていない御仁のようだった。遠慮なく叩けそうである。

 三十分の間に僕たちはエミリーの作ったお昼にありついた。チーズと肉の挟まったサンドイッチに、ポテトサラダ。と僕にはジュース、爺さんにはワインだった。

 控え室が変わるので僕たちは荷物をまとめて移動した。


 相変わらず最終組なので出番はなかなか回ってこなかった。トントン拍子に行かないからストレスばかりが溜まっていく。モチベーションを維持するのも大変だ。

 入念にストレッチをして、食後の眠気と戦いつつ、身体が冷えるのを防いだ。

 三十二人がこれでようやく半分の十六人になる。

 戦いはより難易度を上げて混戦模様を呈していた。玄人受けする試合が増えてきたと言ったところか。色物は恐らく僕の試合で最後だろう。

 ようやく僕の番号が呼ばれた。

 僕は外したイヤリングをもう一度付け直した。


 広い闘技場に僕と対戦相手と審判のみだった。

 いつぞや、王様と対戦したときのことを思い出す。今は天蓋の日陰に隠れて顔を拝むことはできないが、きっとつまらなそうな顔をして見ているに違いない。

 対戦相手はなるほど毒を今にも吐きそうな悪人面だった。ハンマーは容赦なく硬く、痛そうだった。一発頭に食らったらお陀仏かもしれない。武器の選び方からして、容赦のない御仁であった。

「食らいたくなきゃ、さっさと棄権しな」

 いきなり恫喝かよ。

「私語は慎むように!」

 ほれ見ろ、注意された。

「構え!」

 僕は盾を構えた。

「開始!」

 審判の手が大きく振られた。観客席から喚声が上がった。

 そんな大したもんじゃないんですけど。

 僕は即行で消えた、ようだ。

 消えたつもりはないのだが、相手の視線は明後日の方角を見ていた。

 こりゃ、『隠密』スキルのレベルが上がったかも知れないなと思った。一気に上位の『隠遁』まで進化しないかなと安易なことを考えた。

 それにしても戦闘の度にこれでは困るぞ。付与装備、やはり外しておくべきだったか。

 男が闇雲にハンマーを振り回す。

 なるほどでかい武器を振り回すには足腰がしっかりしていないといけない。大木のような足がどっしり構えている。

 だから大木のような足を攻撃することにした。

 見えないのをいいことに後ろに回り込み、膝裏を蹴り上げた。

 男は転倒し頭から地面に落ちた。

 首筋に剣を当てるにはまだ生きがよかった。ハンマーを振り回して僕を遠ざけた。

 隠遁系スキルは対策しにくいのか、この男も対策らしい対策を立てて来ていない様子だった。

 いきなりは準備できないのだろうか? でも、アサシンタイプの参加者も当然考慮に入れられるべきだと思うのだが。

 ハンマーを振り回していれば寄ってこないとでも思っているのだろうか。

 僕は隙を見てもう一度膝を蹴り飛ばした。

 砂地だからこちらの足跡ぐらい見えるはずなんだが。そんなことにも気付かず、男は烈火の如く怒っていた。

「出てこい、卑怯者! 姑息なアサシンめ!」

 自分の能力のなさを責めて欲しいのだが。

「姿を現わせ、一撃で仕留めてくれるわ!」

 口ではなんとでも言える。

 今度は剣で胴を打ち付けた。装備付与でアップしたパワーは大男を揺らした。

 ようやく危機感を感じたのか。男は小さく身構えた。ここまで残ったのは伊達ではなさそうだ。

 そして、黒い霧のようなものを纏い始めた。

「貴様が悪いんだぞ! 貴様のせいで観客が大勢死ぬんだからな! 嫌なら今すぐ棄権しろ!」

 なるほど『毒の息』に似たユニークスキルだ。たぶん。

 審判が警戒して数歩引き下がる。外野のスタッフに毒対策をするように手で合図していた。

「いいから、さっさとやれ」

 僕はハンマーを持つ指を狙って打ち付けた。微量な雷を混ぜて。

 男は痺れてびっくりしたのかハンマーを落とした。

 男の顔が見る見る青くなっていくのが分かった。

「がはっ、馬鹿な……」

 自分の毒に当てられたようだ。

「なぜだ?」

 僕は発せられた毒を結界で囲んで彼ごと閉じ込めていた。

 メルセゲルの対毒装備は完璧に機能していて、僕にはなんの影響もなかった。元々『毒学』を持っているのでBランク程度の毒は余り効かないのだが。

 一方相手の男の対毒装備は僕の放った『装備破壊』でいくつか壊れていた。

「普通自分の放ったスキルで自分が不利益を被るということはあるのだろうか?」

 僕の言葉に審判が何かに気付いたようだ。

 男は膝を突いてそのままその場に倒れた。白目を剥いて泡を吐いている。

「勝負あり!」

 宣言と共に聖女ロザリアが飛んできた。

「まったく何してるんですか?」

「ユニークスキルかどうか確認したかったんだよ。もし違ったら申し訳ないだろ?」

「解毒します。拡散しないように結界張ったままにしておいてください」

 ロザリアの浄化が済むと審判が駆け寄ってくる。

 革の手袋を嵌め、大男の装備を入念にチェックする。

 すると、鎧のプレートと内側の当て布との間に薬品を染み込ませた二種類の薄い布が発見された。どうやら二種類の薬品の成分が混ざり合うことでガスが発生する仕掛けになっていたらしい。なかなか高度な仕掛けのようだった。混ざり合うまでは毒ではないから検査にも掛からなかったようだ。ただの当て布と判断されていたようだ。

 すぐさま警備に知らせが行き、勝ち進んでいた他のふたりも芋ずる式に捕まった。ひとりは正真正銘『毒の息』の使い手だったが、同罪とみなされ、お縄になった。最初のばらまきのとき、彼がスキル持ちだったせいで発覚が遅れたようだ。

 これまた前代未聞の不祥事になった。


 後日、こいつらは新しい毒薬製造法のデモンストレーションのために犯罪組織に雇われたことを自供した。薬品を染み込ませた布きれ二枚を重ねて反応させるだけで、殺傷力のある毒ガスが作れるのだから画期的であることは間違いはなかった。が、余程の自信があったのだろう、ばれることは想定していなかったようだ。自供から簡単に製造工場が摘発され、主犯格諸共、組織はお縄になったようである。

 面白い試みは以後魔法の塔が引き継ぐことになる。


 試合は、二名の棄権者を出しながらも何ごともなかったかのように進行された。

 三回戦、十六人から八人に絞られる戦いが始まった。

 一試合目は、騎士同士の勝負になった。近衛に入りたい将来を夢見る剣士たちだった。

 白亜城なんてまるで眼中にない、未来を信じて疑わない剣士たちの競演になった。

「これこそ、健全な大会と言えような」

 爺さんも感心しきりだった。実に正々堂々とした戦いっぷりで歓声が絶えなかった。

 二試合目は、完全に白亜城狙いの刺客同志の戦いになった。新鮮味より外連味が目立つ試合になった。

 三試合目も、新人というより、元騎士同志の試合になった。勝った方と次の対戦であたることになるが、どちらにしても僕の練習に付き合ってくれた人たちとはランクが一つ、二つ落ちるようだった。

 そして四試合目は僕の番である。

 前回の口直しにと思って張り切ったのだが、例の三人組のひとりが相手だったらしく、不戦勝になってしまった。

 試合らしい試合をせずに四回戦進出である。

 五試合目も不戦勝で戦闘はなく、六試合目が行なわれた。

 六試合目は規定年齢ギリギリのベテラン年長者と若者の戦いになった。善戦空しく若者は敗退していった。

 七試合目はスピードスター同志の見応えのある戦いになった。今大会最高の盛り上がりを見せた。とは言え、リオナに掛かればふたりとも容易くやられるレベルだった。

 八試合目、この試合はどこか異様だった。対戦者のひとりがなんというか、ゾンビみたいな戦い方をする奴だったのだ。圧倒的ではないにしても相手の技量が常に押していた。にも関わらず、ゾンビ戦士の方は打たれても打たれても引き下がることなく、果敢に攻めていった。

 防御を固めた付与設定だったのかと一時は思ったが、どうやらそうではないようで、最終的には攻め疲れた相手が痛恨の一撃を浴びて降参したのだった。


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