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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第八章 春まで待てない
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武闘大会(準備中)2

 一度外へ出て、出店でジュースを買うと、転移広場の芝生に転がった。

 いつもなら今頃から狩りを始めるところだ。

「今日もいい天気だ」

 天は高く雲一つない。

 突然僕の顔を覗き込む顔が!

「あの…… エルネスト様」

 食堂の使用人だった。

「おはよう、なんの用?」

「おはようございます。それがですね。うちの主人が窓からエルネスト様のお姿を拝見いたしまして、急ぎチーズを注文してこいと申しつかりまして…… 駄目でしょうか?」

「駄目じゃないけど。変な噂立てないでよね」

「もう皆さんご存じですよ。迷宮のどこかでチーズが取れるって」

「ほんとに?」

「ほんとです。この辺りでは希少ですからね。皆結構本気で探してますよ」

「クエスト報酬なんだ。クエストを攻略すればいつでも手に入るんだけど、敵はレベル八十の死神だよ。だから誰にも教えない」

 死神と聞いて使用人はどん引きした。

「それでは前回と同じ物を一ホールほどお願い致します」

 そう言って彼はそそくさと去って行った。

「あ、町への入場券は確かヘケトさんの狂った頭蓋骨幽霊だった。死神じゃなかった…… ま、いっか、強さはさほど変わらないし」

 それにしても気分のよかった朝が台無しだよ。死神のことなんか思い出したくなかったのに。

 もうさっさと用件済ませて帰ろう。

 僕は起き上がると、メルセゲルの町を目指した。

「ヘモジ、寝たりないならリュックのなかで寝てな」

「ナー……」

 メルセゲルの城落としちゃったんだよな。さぞや待遇が悪かろうと覚悟していったら、よくぞヘケト様を助けて下さったとこの町でも歓待を受けた。一方で城から逃げ出した王は思い切り嫌われていた。「次の世継ぎはヘカ様かね?」とか、「クヌムと国の統一だ」とかなんだとか、おかしな活気に沸いていた。

 この町の生地はとても柔らかくて上等だ。女性陣が長く利用するに違いない町なのだから、石が飛んでこないと分かっただけでも朗報だった。

 さて、有り得ないアイテム製作をしてくれる問題の店は、杖を売っている店の更に奥、知る人ぞ知る感じでひっそりとあった。

 蔦の絡まる怪しい古民家がそれである。

「こんにちは」

 店のなかはとても温かそうな雰囲気だった。暖色を使い、家庭のぬくもりを上手に演出していた。

「いらっしゃいませ」

 出迎えたのは物腰の柔らかそうな女性だった。顔は蛇顔だったがもう慣れた。

「製作を依頼したいのですが」

「どのような物ですか?」

 僕はメモ書きを渡した。

「少々お待ちください」

 僕が頼んだ物は普通では作れないレベルの代物だった。それこそ迷宮の掘り出し物レベルなのだが。


 たまたまこの町の雑貨店の軒先でアイシャさんが見つけたのだ。この店の銘の入った不思議なアイテム群を。どれも一般で手に入れるとなると膨大な時間とコストを要する物ばかりだったそうだ。アイシャさんはこの店の存在を雑貨屋の主人から聞かされていたのだった。


 僕が発注したのは、体力強化の指輪が二本で百パーセント増加するもの。つまり一つで五割増しの指輪を二つだ。有り得ないスペックの指輪だ。恐ろしいまでに純度に優れた石が必要になる。だがこの店の店主は顔色一つ変えない。蛇だからか?

 続いてスタミナ百パーセント増の指輪が二つ。それからスピード増が二つ。腕力増加が二つ。

 衝撃耐性強化が二つ。これで指輪は満杯。

 チョーカーには防御力アップと属性耐性。手首にはスタミナ回復とスタミナ増加。アンクレットは脚力強化とスピード増加だ。

 あと敵の装備によって換えるために切断と貫通の耐性指輪がそれぞれ二つずつ。

「おいくらになりますか?」

「魔石特大一つで」

 え? 特大?

「お持ちではないようですね」

「ああ、まさか特大が必要になるとは思わなくて、お見それしました。今すぐ用意して参ります」

「あら? お客様は今すぐ特大が用意できちゃう方なんですか?」

「え? まあ、一つか二つなら……」

「でしたらもう一つご用意しては頂けませんか?」

「もう一つですか?」

「もうワンランク上の装備をご用意しておきますので」

 思わず生唾を飲み込んだ。僕の出した条件も大概なのだが…… それの上を行くのか? これってもう国宝レベルだよ。

「分かりました。特大二つお持ちします」

 僕は店を飛び出した。一つはいつでも取れる。火蟻クイーンに手を出す馬鹿はいないからな。

 問題はセンティコアだ。巨大水牛からのドロップだが、こちらは空中庭園用の魔石集めのため、スプレコーンの隠密部隊が常時、狩り場をそれとなく占領している場所だ。

 急がないと、狩り尽くされてしまう。

 地下二十一階層に入った。時間的にまだ早かったが大分狩りが進んでいた。

「これは若様」

 僕の顔を知っている部隊長がいた。助かった。

「急用で魔石が必要になったんだ」

「例の?」

「はい。例のです。一つでいいんですけど。狩らせて貰えませんか?」

「何をおっしゃいます、元々あなた様の情報で我々はここで狩りをしているのです。ご遠慮なく存分に狩っていってください。今ならまだ三分の一程までしか進んでおりませんので」

「ありがとう」

「いいえ、お気遣いなく。お気を付けて」

 いい人で助かった。僕は標的を捕らえると一直線に進んだ。そして気付かれない位置から『魔弾』で仕留めた。ハギスが邪魔をしたが『無刀剣』で殲滅した。周りにいた連中が呆然とみていた。

「流石ですね」

「ハギスの方も魔石回収するの?」

「はい、水の魔石ならすべて回収せよとの命令なので」

「分かった」

 僕は沼の水を凍らせて地上に放り投げた。ハギスの大群が凍っていた。

「急いでいるので、手伝えなくて申し訳ない」

 僕はセンティコアが特大の石に変化したことを確認するとその場を去った。


 次にやって来たのは火蟻クイーンの狩り場だ。僕は裏から入場して、敵に見つかる前に狙撃ポイントに転移した。通路の両側を石壁で塞いで邪魔を排除し、女王と一対一で向き合った。

女王は『魔弾』の餌食となって果てた。


 水と火の魔石(特大)を持ってメルセゲルのアクセサリー屋に戻った僕に店主は言った。

「お待ちしておりました。それではこちらが当店謹製、近接戦闘仕様二十点セット詰め合わせでございます」

 専用の宝石箱に入った宝飾セットがショーケースの上に置かれた。

 頼んでいなかったイヤリングも追加されていた。どれも同じマリンブルーの石を基調にしたミスリル製の美しい仕上がりになっていた。イヤリングの付与は『隠密増加五十パーセント、毒耐性増加五十パーセント』、両耳でそれぞれ百パーセントだ。『隠密』の百パーセントというと上位の『隠遁』レベルである。蛇族だけに毒耐性は分かるが、それぞれの装備にも頼んでいない付与がいろいろと施されていた。石に余裕があったのだろう。

『片手武器強化』だとか、『両手武器強化』とか、『弓術強化』とか、『体力回復強化』とか『破壊防御』とか。

 極めつけは腕輪の『魔力回復増加五十パーセント』だ。ただでさえ使い切れないのに回復力を倍とは……

 アイテム破壊攻撃から守る『破壊防御』がそれぞれの石に仕込まれているのは有り難かった。

 面白いのはすべての装備に店の刻印が記されていることだった。店の名は『ヘルメス』。間違わないようにすべての装備に付与の効果が略字で記されていた。

 さすが魔石(特大)二個分である。

 これってレギュレーション違反にならないかな……

 取り敢えずいい買いものをした。他のメンバーの物もその内、揃えてやることにする。取り敢えず一日一匹、火蟻クイーンを狩ることにする。今はまだ大会に専念しないといけないが。

 昼まではまだ時間がありそうだった。

 二十六階層に降りて、装備品の効果を試すことにした。今回の実験のお供はスケルトンプルートだ。装備品が金になった気がするが記憶が定かではない。ブリューナクを手に入れたのは確かこのフロアーだったか。

 斥候のワーグがやって来た。


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