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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第八章 春まで待てない
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エルーダ迷宮暴走中(ピザ製作)32

遅くなりました。m(_ _)m

「肉は?」

 ピノが聞いてきた。

 会話を盗み聞きしていれば、入ってないことは分かると思うし、お前の鼻なら分かると思うのだが、チーズの匂いがきつすぎるか? 最終確認みたいなもんか。

「入ってないよ」

 それを聞いた鼻の効かない野次馬の半数が興味を失って散っていった。

 だが、窯のなかの生地がぷつぷつし出すと、状況は一変、完成すらしていないのに匂いに釣られて、前より大きな人垣を作り始めた。

 というより、なぜうちの中庭に今日に限ってこうもゾロゾロと?

「お前らはいいとして、みんなはなぜ中庭に?」

「リオナ姉ちゃんが今日は中庭解放するって」

 テトが言った。

「普段入れない中庭に入れるってみんな喜んでるよ」

 ピオトが窯を覗き込んで言った。

「喜ぶって、雪かぶってんじゃねぇーか。火傷すんなよ」

「若様んちが見えるだろ。それだけでも見物なんだよ。若様んちの渡り廊下は壁と木々で覆われてるから普段見えないしな」

「そんなもん見てどうすんだ」

「渡り廊下は結構みんなに有名なんだよ。雅だって。長老たちがよく自慢してたからね」

「やっぱり出所は長老か」

「若様、焼けてる! 早く!」

 ピオトが声を上げる。

 木製のピザピールで掬い出す。

「まだ早いんじゃないかい?」

 アンジェラさんが出てきた。

「それじゃまだ生よ。もうちょっと焼き色が付かないと」

 僕はビザを窯の隅に追いやった。

「中もういいんですか?」

「エミリーもサエキさんもいるからね。リオナにも馬鹿な真似したら肉抜きだと言っておいたから大人しくしてるよ」

 子供たちが嫌な顔をした。

「あんたたちは我慢できるわよね」

 見事に子供たちに釘を刺した。家に帰れば好きなだけ食べられるというのに。

 アンジェラさんは窯のなかを覗きながらタイミングを見計らった。

「食べ頃ね」

 僕は掬って取りだし用意した皿に載せた。小麦色によく焼けていた。

 アンジェラさんはさっさと台所に運んで行った。

 試食が始まり、すぐエミリーが次の生地を運んできた。

「あの…… 焼きすぎない最初に取り出したぐらいの状態でください、だそうです」

 焼きすぎた?

 ピオトを見たら、そら見たことかと自慢げな顔をしていた。

 僕は薪を足すと、次の生地を石窯に投入する。

「こっちも二度目はうまくならないとな」

 僕は丁度よく全体が膨らんだところで窯から出した。

「焼き足りないよな?」

 渡せと言われれば仕方がない。

 皿に載せると厨房に届けた。

 厨房では黄金色に焼けた前作がほとんど原形を留めたまま残っていた。何人かの歯形が縁にばかり集中していた。

「食べ方教えなかったっけ?」

 僕は近くのナイフで八等分する。そして新しい方も八等分する。

「こうやって食うんだ」

 チーズが抵抗するなか、風の『無刃剣』で切り分けた一枚をとって、真ん中の三角から口に運んだ。チーズも生地も所々まだ半生だった。

「…… 焼き足らないな」

 僕は切り分けた残りを持ってもう一度窯に入れようと持ち出そうとしたら、「失敗はそのままにして」と言われたのでテーブルに戻した。

 アンジェラさんとエミリーとサエキさんが味見をして僕と同じ結論に達した。ただ他にも生地の厚さやバジリコがどうとか、こまかいことを相談していた。

「少々お待ちください」

 エミリーが以前より薄い生地を出してきた。そしてその上にトマトソースをこれまた薄く広げて載せていく。バジリコは今度は後載せの様である。

 僕はその生地を持って窯に。子供たちが火を見ていた。

「お、ありがとな」

「美味しい物を食べるためだからな」

「どうだった」

「もう一回チャレンジだ」

 僕は生地を放り込んだ。

 薄い生地はすぐ火が通り、プクリプクリと膨らんでいく。

 膨らみを潰していって原形をなるべく維持する。

 でもこのまま引き上げては駄目だ。でもこのままだとすぐ焦げることになる。

「貸してごらん」

 アンジェラさんがピザピールを取り上げると、掬ってピザを浮かせて表面だけを余熱で仕上げていく。そして数秒後窯から出して皿の上に。

 それを持ってまた奥に引っ込んだ。

 厨房では早速八等分され、一切れずつ試食を始めていた。

「あんたもほら」

 一切れ勧められた。後載せのバジルの青葉がチーズに浮いていた。

 皿から持ち上げると、前回と違うしっかりした感がある。

 一噛みすると焼けたチーズのうま味が口のなかに広がる。バジルの香りが鼻に抜ける。とても不思議な味。

 これがピザか。

「アンジェラさん……」

「これをこの家のスタンダードにしようかね」


 リオナたちが呼ばれた。食堂で異常な波動を出していたリオナとオクタヴィアとヘモジがやって来た。

 リオナに一枚。ナガレに一枚。ヘモジに「ふたりで仲良く食べるのよ」と言われて渡されたものが一枚与えられた。

 残った一枚は見本として残された。

 次は同時に二枚焼きだ。

 窯に戻ると子供たちが待ち構えていた。

 僕の顔を見ながらにやにやしていた。だから僕は言ってやった。

「待たせたな。みんなの番だ」

 子供たちの尻尾がユッサユッサと揺れた。

「手伝うよ」

「あたしも」

「僕も」

 子供たちがせがむので「ピノとピオトは地下からウーヴァジュースの小樽を持っておいで。テトは長老に言って、祭り用のグラスを急いで運んで貰え。チッタとチコはなかで作り方を教わっておいで。最後はみんなで雑用をして貰う。その内応援が増えたらお役御免な。取り敢えず今のうちにジュース樽と自分たちのコップ持っておいで」

 それだけ言うと僕はピザ生地を窯に二枚放り込んだ。


 できあがったピザのうちの一枚はその場でカットされ子供たちの胃袋へ。もう一枚はなかにいる連中の二枚目だ。

 子供たちは目の前の皿を見て言った。

「きれいなパンだね」

 チコが言った。

「パンじゃないわよ。ピザよ」

「円盤丸かじり」

「ピノ、やったら殺すわよ」

「やるわけないだろ!」

「切り分けるよ」

「バジリコ貰ってこなきゃ」

「八等分じゃ足りないよ」

 子供たちは五人二回食べようと思ったら十分割しなければいけないからだ。

 エミリーがバジリコを届けてくれた。と思ったらみんな出てきた。

「代わりますよ。わたしたちも窯炊き覚えないといけませんので」

「二つ目から二枚貰っておけ」

 そうすれば全員二枚行き渡る。

 子供たちが一斉に口に頬張る。

「……」

 言葉がなかった。

「お肉じゃないのに…… 美味しい」

「何この味、これがチーズなの?」

「不思議な味……」

「うま、うまッ。二枚じゃ足んない!」

「これって肉入れても美味しいよ」


 生地が今度は三枚来た。

 三枚同時焼きだ。

 リオナが出てきた。

「手伝うのです」

「うまかったか?」

「エルリンの作る物はミラクルなのです。マーベラスなのです」

「後で見学に来た人たちにワインかジュースをピザと一緒に振る舞ってくれ」

「ヘモジとオクタヴィアは?」

「まだなかで食べてる。あのふたり先に食べ終わったら負けだと思ってるから、放っておいた方がいいのです」

 窯は熱いからチョロチョロさせたくないし、丁度いいだろう。

 そうこうしていると丁度いい焼き加減になってきたので三枚を順番に処理して皿に移した。


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