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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第二章 カレイドスコープ
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閑話 近況報告

『宛て アールハイト王国王家第一王女マリアベーラ・カヴァリーニ殿下


 予てよりの懸案事項につきまして、目標との接触に成功した旨、ご報告申し上げます。

 以降、今日までの動向を記します。


 水後月七日

 ブランジェ候替え玉陽動作戦において、ミコーレ公国先遣部隊挑発の折、偶然目標と接触いたしました。

 姫様とレジーナ様が現着したときには、すでに交戦は終了しており、先遣部隊は逃走した後でした。その折、目標はアラン卿率いる傭兵部隊に味方し戦闘に参加していた模様。

 目撃者の情報に寄りますと、矢を一切外すことなく、すべて一撃にて十一人を仕留めたとのこと。『魔弾』、または魔法の使用はなかったとのことでございます。

 目標、エルネスト・ヴィオネッティー様はきわめて温厚、従順にて、予定されている災害指定等の必要性はないものと判断いたします。

 僭越ながら、手合わせをした限り、剣の腕は近衛騎士団の新人採用試験に通るかどうかといった程度のものであります。

 現在、ヴァレンティーナ様の庇護の元、アルガスの新たな拠点にて共同生活を営んでおります。

 尚、当初の予定通り、姫様はリオナ様のお相手としてエルネスト・ヴィオネッティー様を正式に襲名し、我ら満場の元、本人に承諾させることに成功いたしました。


 水後月二十二日

 本日、予てより地下の結界内において修行中だったエルネスト様が二週間ぶりに姿を現しました。当日、制御は不慣れなれど魔法を使う彼をエンリエッタ隊長が確認しております。

 一体あの結界のなかで何が行われていたのか実に不可解であります。


 水後月二十三日

 エルネスト様とリオナ様、おふたりの鎧の完成を機に、急遽エルネスト様の能力チェックが行われました。

 場所はルージュの戦場の森入り口付近、レベル三十代の魔物が生息する危険地帯であります。

 まず、特質すべきは銃という『雷砲』に似て非なる兵器を使った戦闘であります。

 これによりエルネスト様はフェンリルを一撃で仕留めることに成功しております。


 敵があっけなかったためか、リオナ様と相談の上、以降は魔法の訓練を兼ねて、戦闘形態を変更。魔法にて同等クラス数体と戦闘を繰り広げました。

 魔法の技量は稚拙なれど、魔力に限界がなく、属性にも制限がなく、姉の素質に匹敵する可能性をのぞかせました。

 さらにこれらの戦闘において、彼のとった戦略的戦闘手法は、我らにとっても一考する価値があるものと考えます。新人故の柔軟性というものでしょうか? 彼の性格を顕著に表すものと考えます。

 戦闘の詳細については別紙をご確認ください。


 水後月二十五日

 騎士団の薬剤調達部に効能調査を依頼した薬品の件について、そちらでもお聞き及びでございましょうが、こちら側の対応といたしましては物々交換に応じるということに相成りました。つきましてはこちら側の要求リストを添付いたしましたので確認いただき、陛下の分も合わせて先方に叩きつけておいてくださいますようお願い申し上げます。

 尚、薬の製造者に関してはご推察の通りでありますが、本人が望んでおりませんので、どうかご内密に。

 代わりと言ってはなんですが、追加依頼分として例の薬を同型の瓶にて五本分献上いたします。よしなに。


 取り急ぎ。

近衛師団・第二王女付き特殊女性科部隊副長 サリー・ミルドレッド』



「相変わらず、サリーの手紙は面白味に欠けるわね」

 アールハイト王国離宮にて王家第一王女マリアベーラ・カヴァリーニが何通かの手紙をテーブルに並べながら言った。

「まじめな娘なのだろ? 悪く言うものではないよ」

 王女の婚約者にしてミコーレ公国皇太子のジョルジュ・ブランジェが置かれた手紙に目を通しながら言った。

「確かにこの子たちに比べればね……」

 王女は細い指でテーブルの上に置かれた他の手紙を探った。


『マリア、弟に手を出したら結婚前に冥土に送ってやるからそう思え』


『姉上、あの豪快すぎる老人に一言言ってやってください! そのうち国が滅びますよ』


『リストは届きましたでしょうか? サリーさんがたぶん送ったと思うのですが、確認までに』


『作戦は滞りなく進行中。おいでになるならぜひ、お菓子と援軍を!』


「人をなんだと思ってるのかしらね?」

「慕われてる証拠だろ?」

「とてもそうは思えないのだけど。それに…… 肝心な弟君の情報がないわ。なんのために情報を多元的に集めてると思っているのかしらね? あの子たちは。わたしを苦情係か何かと間違っているんじゃないかしら?」

「わたしより先にアランと面識ができるとはね。これも縁と言うものかな」

「早く会ってみたいわねぇ……」

 マリアベーラは一通の手紙を指で弾いて、ジョルジュに見るように促した。

「どうやらこの手紙に勝る情報はなさそうだね」

 マリアはジョルジュの言葉に頷いた。

「幸せそうでよかったわ」

「スケジュールは空けておくかい?」

「そうですわね。咳の一つでもしていただければ、なんとか休みをねじ込んでみせますわ」

 テーブルにはつたない文字で書かれた一行だけの手紙が置かれていた。


『優しい人でよかったです。でもダメダメです』



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