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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第八章 春まで待てない
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エルーダ迷宮暴走中(無翼竜・クヌム・メルセゲル編)9

「あらーっ、確かにこれは無茶だわ」

「軍隊じゃないと無理なんじゃないのかな?」

 近寄ることもできないか。

「いきなり難易度上がった?」

「まさかな」

 アイシャさんが笑った。

「迷宮がいきなりハードルを上げたりするものか。もしそうなら、そんな迷宮は欠陥品じゃ。あのマリーが涼しい顔をしているはずなかろう? 単に攻略方法を見つけていないだけじゃ。それを見つけられるかどうかが、この先進めるかどうかの試金石なんじゃろうて」

「抜け道はあると?」

「なきゃ、単なる嫌がらせじゃ?」

「となると地下しかないよね?」

「真っ正面から例の馬鹿貴族の城を落としたときのようにやるのもありだがな」

 アイシャさんは笑った。

「そんなことしたらたぶん飛びきり強力な『闇の信徒』が出ますよ」

 ロメオ君が言った。

「見たい気もするがな」

「町ごとはさすがに壊せないんじゃないですか?」

「壊せなくて結構。入り口探すぞ、みんな」

「見つけた!」

 オクタヴィアが耳をピンと立てて言った。

「ナーナ!」

 ヘモジもハンマーを目標に向けている。

「簡単だったのです」

「分かりやすいわね」

 何を見つけたのかと思ったら、水路だった。

 無翼竜が屯している辺りの奥になんとなく進めそうな取水口があったのだ。

「何処が試金石なんだ?」

 あそこから入れと言うのか? 

 地図上では行けることになっている。でもこれが試金石?

 行き止まり感しかないのだが。うちの索敵要員があそこだと言ってるしな。

 問題はあそこに辿り着く方法だ。このまま真っ直ぐ草原を行けば城壁の上から丸見えだからな、森のなかを迂回して抜けることになるな。取り替えず無翼竜を片付けつつ、右から迂回しよう。

 陽動を掛けるのもありだな。正面ゲートをぶち抜くか? あの門ぐらいなら破壊しても問題ないだろう。恐らく破壊可能なオブジェの筈だ。だったらいっそ正面突破、いやいや、不味いだろう。情報ではあの町は死者の町を模しているという。なんでそれが死者の町だと分かったのかは置いといて、ロザリアの言う通り、町ごと一気に破壊できなかったらまずい状況になる。メルセゲルの視線は人を盲目にし、攻撃は毒を与えると言われている。町の住人規模でゾロゾロ来られるとさすがに面倒だ。

 やってやれないこともないだろうが、やる意味があるのか分からない以上、僕たちは大人しく遠回りすることを選択する。


 森のなかを慎重に進んでいたときだった。

 三十人ぐらいの冒険者の集団が突如現れた。

 壮観だった。

「装備の確認を! 各リーダーは前に」

「陣形を取れ」

「盾役は各パーティーにふたりだ」

「回復役を各隊ひとりずつ割り振れ!」

 来て早々、大騒ぎをし始めた。どうやらこのフロアーを専門に攻略しているチームらしい。 限界を感じて集まった人たちではなさそうだが……

「あれで利益が出るのかな?」

 ロメオ君が素朴な疑問を投げかける。

 魔石換算で中以上を三十個回収しないと全員分の報酬は出ない。回復薬やら装備の修理代やらを考えると一人当たり魔石(大)が欲しいところだ。

「クヌムなら儲かりそうだけど、メルセゲルは土属性だし、盲目にも毒にも備えないといけないし、どうなんだろうね? 宝箱でも出るのかな?」

 ロメオ君は暢気に望遠鏡を取り出して覗いている。

「出るんでしょうね」

 ロザリアも他人事だ。

「わたしたちは森のなかを行くだけよ」

 そう言いつつナガレはロメオ君の望遠鏡を取り上げて遠くを覗き込む。

「後で鉢遭わなければいいけどね」

 僕たちは思い思いのことを言いながら、無翼竜と開戦すべく前進する。

 いざと思いきや、一斉に無翼竜が方向を変え、去っていった。

「ああッ?」

 無翼竜が城門を突破しようとする巨大レイドチームを大量の餌がやって来たと勘違いしたようだ。

「あらー」

 見事に全部持っていかれたな。あの人たち大丈夫かな?

 レイドチームは織り込み済みのようで、まず無翼竜を殲滅する方向で動き出した。

 一方、城壁の上のメルセゲルは地上を襲う様子がない。

 なるほど、城壁を攻撃しなければ近づいても攻撃してこないわけか。

「まあ、手間が省けたな」

 僕たちは水路を横目に取水口を目指した。

 取水口には侵入者を拒むための柵がしてあった。

「?」

 ここって侵入ルートなのか? 扉もないぞ?

 振り返って僕は索敵班の面々を見ると自信満々に頷かれた。

 リオナ、ヘモジ、オクタヴィア…… ほんとにいいのか、信じて?

 取りあえず、自力で道を切り開くことにした。

 僕は魔力を載せた剣で鉄柵を切り刻んだ。

 僕の剣は最近どうでもいい物ばかり切っている気がする……

 なかなか天井高のある用水路だった。

 僕たちは水の流れに沿って細い歩道をほぼ一列になって進んだ。

「真っ暗だな」

 ロザリアの灯した杖の明かりで先を照らす。

「ここって本当に攻略ルートなのか?」

「間違いないよ、ほら」

 ロメオ君が差し出した地図にも確かに先があるような記述があった。

 しばらくするとなんだか嫌な音がしてきた。

 ゴーッという水が流れ落ちる音だった。

 通路は行き止まり、奈落は落下する水の行方が見えなくなるほど深かった。

「行き止まりだが……目の前に通路はある……」

 これを攻略ルートと呼ぶべきか? 脇道があった記憶はない。

 みんなは頷いた。

 僕は溜め息を付きながら奈落の向こう側にゲートを開いた。

 周囲に敵影はない。

 僕は確信した。僕だけじゃなく、アイシャさんもロメオ君もロザリアもナガレも確信した。

 ここは本来あるべきルートではないと。

 ちびっ子チームの非常識さが導き出した答えか? パーティーの総合力を鑑みたルートらしいが。

「最後まで付き合うしかなかろう?」

 アイシャさんも呆れ顔だ。

 リオナとヘモジとオクタヴィアは楽しそうにあーでもない、こーでもないと議論を進めていた。

 飛び移った通路を進むと、上に行くどころかどんどん下に向かっていった。幸い明かりは付いているようで、若干気は和らいだが、敵の姿が見当たらないのが気に掛かる。

「どんどん下に降りてないか?」

「もうすぐなのです」

「もうすぐ」

「ナーナ」

 何がもうすぐなんだ?

 鉄格子の付いた扉が現れた。

 これって留置所じゃないのか?

 ヘモジがハンマーで強引に扉を開けた。

 なかから蛇頭の兵士が二体出てきたがリオナに瞬殺された。

 やはりなかは牢屋だった。

「ここなのです」

 三人が指し示したのは突き当たりの扉だった。

 なかに何かいる様子だった。

「おっさん、助けに来てやったのです」

 突然、ガンッと扉にぶち当たる音が響き渡ったかと思うと、鉄格子からゴツゴツした指輪をはめた手が出てきた。

「助かった。さっさとこの扉を開けてくれ!」

「その前に渡すのです」

「そちらが先だ。扉を開けよ」

「疑うなら話しはなしなのです」

「……よかろう。裏切ればただでは済まさぬぞ」

 鉄格子越しに何かがこちらに投げ込まれた。

 何かの鍵のようだった。

「地上への鍵だ。持っていけ」

「今扉を開けるのです。下がっているのです」

 リオナが鍵を受け取ると、ヘモジが鉄格子をぶち破った。

 一体何をしているのか? そもそも扉のなかにいるのは誰なのか?

「おおっ、ようやく…… 遂に解放されるときが来たか。嗚呼…… なんと待ち遠しかったことか。まさかこんな日が訪れようとは…… 礼を言うぞ、冒険者よ」

「礼などいいのです。お互い様なのです」

「かたじけない」

 完全に蚊帳の外なんですけど…… 

「死者の町には女たちが邪魔をしおって辿り着けぬ。我はもはや訪れること敵わぬ身なればこれを託そう。妻の墓に供えておくれ。そしてわしが『愛していた』と伝えて送れ。妻の名はヘケト、最も高き墓所に眠っておるはずじゃ。邪魔をする蛇共が多かろうがよろしく頼む……」

 一通りの会話が終ったようなので僕たちは明かりもない真っ暗な牢のなかを覗き込んだ。

 そこにいたのは手枷をされ、朽ち果てた羊頭の骸骨であった。指輪がはめられたその手には髪飾りが握られていた。

「で、これ誰?」

 三人組は首を捻った。


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