表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第七章 銀色世界と籠る人たち
297/1072

エルーダ迷宮迷走中(キマイラ編)18

 作戦はキマイラをこちらの攻撃の軸線に載せ、狙撃して仕留めることだ。

 囮は……

 オクタヴィアが哀願するので、取りあえずは囮なしで。

 矢を上手に除けながら、軸線の左右に散らばる。部屋の入り口は狭いので大した角度は付けられないが、少しでも広角に対応しようと思う。

 ナガレのブリューナクだけでいい気はするが、備えあれば憂いなしだ。

 まずはロザリアが光の魔法を放つ。

 明かりで誘って、入り口までおびき寄せるのだ。

 目映い光を放つ光体は矢に干渉することなくふわふわと入り口上空を漂う。

 キマイラがのっそりと動き出したのが分かる。

 のらりくらりと出入り口に近づいてくる。

「当たったです!」

 リオナの一撃が獅子の顔に命中した。

「ちゃんと当たったのです!」

 わざわざ言い直さなくていいんだよ。チビ姉ちゃんに失礼な。

 ゴリアテ工房公認なんだから、腕はあるんだよ。性格が問題なだけで。

 キマイラは前のめりに一瞬崩れそうになるが、すぐさま姿勢を持ち直した。

 ナガレが雷撃を放った。

 今度こそ大きな身体はズシンと床に沈んだ。鎌首をもたげていた蛇の頭が事切れて項垂れた。

「頭全部やらないといけないみたいだな」

 躊躇するオクタヴィアに行かせた。

 矢の攻撃はすぐに収まったが、オクタヴィアは飛んで戻って来た。

 一応、魔石の回収がてら小部屋を覗く。

 マップ情報には載っていない宝箱があった。

「ランダムで沸く宝箱だね。ラッキーだよ」

 ロメオ君が喜んだ。

 僕は警戒しつつ鍵を開ける。

「金貨だ」

 枚数を数えたら十枚あった。一人頭二枚だ。

 因みにナガレには分配されない。もし分配されるとおかしな事態になるからだ。僕がヘモジを出したときも分配するのか? ロザリアがアムールとベンガルを召喚したときも二匹分出すのか、全員出したらどうする? オクタヴィアはどうする? という話になるので、ナガレの分はリオナの財布からということになった。早速リオナとの間で労使間交渉を始める。どういう結論になったかは、魚がどうとか言い出した時点で関知しないことにした。

 取りあえず一人二枚だ。

 魔石は火の魔石(中)だった。

 元のルートに戻り先を進むと曲がり角にぶつかった。

 ごく普通の煉瓦造りの道だ。ただ道幅はない。

 ガコン。

「うわっ!」

 誰かが罠を発動させた。

 壁に開いた規則的な穴から針状の槍が突き出てきた。

 僕たちは罠のそばにいなかったので驚いただけで済んだ。

 オクタヴィア? は背中にいる。誰だ?

「ごめん……」

 ナガレが近くにあった壺を持った女神の像の宝石を取ろうとして、台座に負荷を掛けたせいらしい。

 罠の場所が事前に知れてなかったら危なかった。

 僕は槍が伸びきったタイミングで、剣を振り下ろすと、槍がスパッと切れた。

 カランカランカランカラン…… 切り落とされた槍の欠片が床に転がった。

「ただの鉄か」

「これ投擲用の武器にならないかな」と考えていたら、みんなが呆れた顔をして僕を見た。

「何か?」

「いや、なんでも」

 像の壺のなかから、宝石をせしめた。売ってみないと分からないが、ギミックでなければ、いい値段になるだろう。重さが軽くなったせいで罠は延々と動いている。突出した部分はないので問題ない。

 少し行った先に部屋があった。ルート的に回避不可能である。

 なかにはキマイラが一匹。

 いきなり吠えてこちらを威嚇した。そして獅子のたてがみを逆立て突進してきた。

「雷撃!」

 ナガレがあっという間に燃やした。


 格子状に入り組んだ廊下を進むと、また矢が飛んで来た。どっちからだ? 十字路に差し掛かったところを横から射られた。

「オクタヴィア」

 敵はいないのでオクタヴィアは元気に駆けて行ったが、すぐに猛烈な勢いで戻って来た。

「敵来る。オクタヴィアのせいじゃない」

 どうやら前後から挟まれたようだ。

 格子状の短いスパンの通路では、狙撃はできない。

 僕は剣を抜いた。

 アイシャさんも剣を抜いた。

 後方から来るのはキマイラスネーク。初見だ。

 どちらが先に来るのか。リオナも身構える。

 挟まれる前に打って出る方がいいと判断して、前方から来る標準的なキマイラ目掛けて打って出た。

 曲がり角、繰り出してきた爪を防ぐとそのまま前脚を切断。

 リオナはその隙にいつもの低空から顔面に一撃入れる。

 僕は暴れている獅子を横目に、尻尾を切り落とした。

 でかい図体はズシンと沈み込んだ。

 が、切り離した尻尾の蛇がどこかに行ってしまった。

 僕は探知スキルを働かせた。すると、でかい図体の下に隠れていることが分かった。僕は図体の上から蛇を串刺しにした。

 すぐさま踵を返すと、キマイラスネークが。なんとこちらは大蛇が付いていて、前後が逆だった。

 身体を二つ折りにして、蛇頭と獅子頭が同時にアイシャさんを狙う。

 僕とリオナは同時にステップを踏む。

 僕は蛇の胴体を切り伏せ、リオナは獅子の足に一撃を食らわせた。

 アイシャさんは獅子頭を切り裂き、踊るように旋回して矢継ぎ早に蛇の首を切り落とした。

 ナガレが獅子の頭をブリューナクで串刺しにした。

「でかい蛇頭だな」

「スネークでこれだとドラゴンってどんなだろうね」

 出番のないロメオ君が暢気だ。

 オクタヴィアはくたばった遺体に蹴りを入れている。

 どちらも火の魔石(中)になった。

 スネークの方は(大)でもおかしくなかったが運がなかった。

 それにしても、あのキマイラはどこから現れたのか?

 それぞれが現れた辺りを探すとそこには大きな檻があった。

 どうやらこれもトラップの一種だったようだ。

 マップ情報にもなかった。確認が必要だ。

 檻のなかにまた宝箱があった。

 檻のなかというのが一抹の不安をかき立てるが、問題はなかった。

 箱の中身は金貨二十枚だった。

 フロアー固定の宝箱は完全な脇道にあるので、嬉しいおまけである。

 格子状の通路を抜けると階段があり、僕たちは階段を登った。登り詰めた場所はさっきまでいた通路の上になっている。

 通路を進むと橋が見えてくる。長い吊り橋だった。

 その橋脚の上に築かれた石柱に大きな斧が吊されている。

 僕たちが近づくに従い、斧が左右に大きく揺れ始める。

 足元を見ると、さっきまでの二倍の高さはある。

 床が見えない。闇のなかに何かいるようではあるが。

 落ちないようにしよう。

 目の前に巨大な斧が振り子のように揺れている。

 さすがにこれを、剣で受けることはできない。

 スイッチは先の橋脚の柱にある。通り抜ける以外方法はない。

 幸いキマイラの反応はないが、檻がどこかにあるとすれば油断はできない。

 さて、一応試すことにする。

『魔弾』を斧の根元目掛けて放り投げる。

 ドドーン、豪快な爆風と共に斧が粉砕された。

「おおっ、壊せるもんだねー」

「有り得ないのです」

「罠を解除する方法として、これはありなのかな?」

「馬鹿じゃないの。迷宮壊したらどうなるか分かってるんでしょうね」

「いや、脆すぎる。これは元々破壊できるギミックなんじゃないのか? 罠を解除する一つの正当な手段なのかも知れない」

 ギギギギギッ…… 斧を吊り下げていたはずの梁が崩れ始めた。

 崩壊が始まり、橋の上に梁が落ちて、橋ごと奈落の底に落ちた。

「あらー」

 ロメオ君が橋ごとフロアーが崩壊する姿を見下ろして呆気にとられている。

 炎が見えた。

 最下層で戦闘が起きていた。瓦礫が降り注ぐなか、キマイラと何かが戦っていた。

 問題はどうやって、橋の向こうに移動するかだな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ