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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第七章 銀色世界と籠る人たち
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スノードラゴン討伐再び1

システム障害でメンテ入りましたね。

十二時終了の予定が、四時復旧です……


遅くなりましたが、本日分です。m(_ _)m

 翌日になっても、姉さんたちは帰ってこなかった。

 さすがに不安になった。

 館に行っても情報を貰えないばかりか、「書類が溜まってしまって仕方がない」と愚痴られる始末。あとで呼び出される予感がしてならないが、そう言う執事のハンニバルの顔を見ても不安の色が見て取れる。

 何が起こっているんだ? 

 僕はポータルや、『銀花の紋章団』のゲートを試したが、第二師団の駐屯地へのゲートは繋がらなかった。

 戒厳令下で向こうからゲートを閉じているのか? 

 そんな馬鹿な話はない。それでは増援も補給も受けられないじゃないか。

 考えられるのは僕自身が弾かれているということだ。

 兵士じゃないからか? いや、この町の騎士団も弾かれている。エンリエッタさんですら弾かれたと言う。

 やったのは誰だ? ヴァレンティーナ様の意思か? それとも他の誰かの仕業か? あるいは大量の増援が来たりしてゲートが魔力切れを起こしているとか? まさか基地が落ちて、ゲートが破壊された…… 

 僕は自室の書庫に籠もると考えを巡らした。

 あの場所に戻る手はないのか。いくら何でもスノボーではあそこまでは遠すぎる。

 誰かが書斎を激しく叩いた。

「エルリン、船が帰ってきたのです! 早く来るのです」

 帰ってきた?

 なんだ、よかった。気の回しすぎか。

 僕はリオナに手を引かれて、屋上のテラスに出た。

 そこに浮いていたのはまるで幽霊船のような有様になっている一番艇だった。

 帆をはためかせて、風の力まで借りてようやく戻って来たのだ。

 船は半壊、片側の装甲はなく、『第二の肺』が収まっている気球が剥き出しになっていた。搭乗スペースの後ろ半分もなくなっている。予備の『浮遊魔法陣』を使って応急修理した跡が見える。

 ドックではなく工房に降りるらしい。

「僕たちの船は? 零番艇は?」

「戻って来てないのです」

 リオナも心配そうな顔をする。

 ヴァレンティーナ様はリオナの姉でもあるのだ。

「行くぞ」

 僕たちは工房に走った。ロザリアもアイシャさんもアンジェラさんも僕に続いた。サエキさんが馬車を出して僕たちを道すがら拾い上げる。

 工房の手前の大通りでロメオ君にも会った。


 船から降りてきたのはスタッフだけだった。

 エンリエッタさんが情報の確認をしている。

 僕たちもしばらく待っていたが、詳しい情報はもたらされなかった。

 今更部外者には教えられないときた。

 だが、近くで聞いていた棟梁がこっそり教えてくれた。


 ドラゴン討伐の部隊はヴァレンティーナ様のシンパ以外で組まれたそうだ。

 理由はアシャン老がナスカでアイスドラゴンを倒したという情報のせいらしい。要するに僕のせいらしかった。

 アシャン老は王家ではないが、王宮の筆頭魔道士である。王家の手柄はもう充分であろうというのがその理由らしかった。

 手柄を独り占めしようとしたのは、第一師団から応援と称してやってきたオーギュスト侯爵である。そもそも第二師団に手柄を渡す気はなかったらしい。

 ヴァレンティーナ様が断われなかったのには理由がある。それはこの命令が近衛騎士団第一師団の師団長命令であったことだ。同じ地位でも第一師団が優遇されるのは騎士団の決まりである。

 ヴァレンティーナ様はまして師団長でも何でもない。今は一領主に過ぎないのだ。子飼いの第二師団幹部たちも歯ぎしりをしながら見ている他なかった。

 その際、僕の飛空艇は徴発されてしまったらしい。一番艇はヴァレンティーナ様の船として徴発は免れたが、戦闘には参加させられたようだ。

 ヴァレンティーナ様も姉さんも第二師団の精鋭も駐屯地に待機したまま動けないでいるという。

「僕の船を盗んだのか? そいつは……」

 オーギュスト…… 侯爵だか、大隊長だか、連隊長だか知らんが、許さないぞ。

「済まんな、商会の船は今会長の所なんだ。一番艇もあの様だ。救援にも向かえん……」

 船が戻って来られただけでも奇跡だ。飛空艇でなければ浮かんですらいられなかっただろう。


 僕は家に戻ると算段を練った。どうやってあそこまで行くか…… スノボーしかないのか…… 何かないのか?

 最有力はナスカまで飛んで、そこから山越えだが…… 未開の地の端を越えなければならない。フェイクが屯している山岳地帯を飛ぶなんて自殺行為だ。


 そういや、爺ちゃんどうやってここに肉を届けたんだ?

 いや、そうじゃないな。爺ちゃんはなぜ、肉をこのタイミングで送り届けたのか、だ。

 今肉がここにあるというのは、爺ちゃんが討伐したことにした場合、辻褄が合わなくなるはずだ。爺ちゃんならもっとタイミングを考えて、遅らせて送ってくるはずなんだ。なのになぜ?

 僕は家族全員にしばらく部屋に入らないようにと、釘を刺して『楽園』に行くことにした。

 目的は『牢獄』の使い方を学ぶためである。

「『牢獄』の使い方をまだ知らんだろ?」と爺ちゃんに言われているような気がしてならなかった。

 僕は身近に万能薬を並べた。口にも一瓶くわえて、いつでも飲める状態にした。

 そして、僕は久しぶりにあの部屋に至る扉を開いた。



「ここまでリアルじゃなくていいのに……」

 僕のやって来た世界はかつて姉さんに閉じ込められたときの小さな小部屋であった。

 また戻って来たと喜びたいところだが、どうやら巨大なドラゴンの亡骸に部屋を丸ごと押し潰されたようだった。

 普段なら笑うところだ。

 でも今はそれどころじゃなかった。

 僕は部屋の再生を望み、世界はそれに応えた。

 無数の書籍が壁一面の棚に収まっていた。ゆったりとしたソファにはクッション。温かそうな暖炉。無造作に積み上げられた本の束。

「懐かしい……」

 本棚の一角が光っている。

 僕は本を手に取ると、タイトルも見ずに頁をめくる。

『牢獄』に関する情報が、他のユニークスキルを解説した頁のなかから現れる。だが、そこに書かれていた文章は『詳細不明』だった。

 一枚のメモが挟まれていた。そこには具体的な文章はなかったが、絵が描かれてあった。

 丸のなかに人がいて、矢印が外から人へ、人から外へと伸びていた。

「落書き?」

 そんなはずはない。ここは僕に答えを与えてくれる禁断の場所だ。

 僕は紙片の裏を見た。

 そこには爺ちゃんの字で『(ミート)。では人は?』と記されていた。

 僕は叫んだ。

「爺ちゃん、サイコーだ!」


 僕は書庫から出ると駐屯地に行ってくると告げた。みんなも行きたがったが、連れては行けないことを説明した。

 連れて行ったら、あちらの世界で全員、土左衛門である。アイシャさん辺りはケロッとしていそうな気もしなくもないが。試すわけにはいかない。

 僕は装備とボードを手にすると書庫に入り扉に鍵を掛けた。

 僕は魔力を回復させ、もう一度『楽園』に飛んだ。


 駐屯地に出るには…… 僕は出口をどこに設定するか考えた。

 アシャン老なら構わず駐屯地に出るだろうが、僕は駄目だ。『楽園』を出たときには魔力切れが待っている。

 敵が近くにいたら、容易に捕まってしまうだろう。軍隊ともなれば探知スキル持ちは多いはずだから。

 何が起きているか分からない以上、慎重に動かなければ。ヴァレンティーナ様が拘束されているとしたら、助け出せるのは僕だけだ。捕まるわけにはいかない。

 僕が選択したのは雪原の真ん中だった。スノードラゴン討伐用にバリスタがあった場所だ。姉さんと最初に合流した場所でもある。


「寒!」

 外套忘れた。書庫から飛んだせいで、すっかり忘れてきてしまった。

 寒いのに冷えた万能薬をがぶ飲みする羽目になった。

 結界を張れるぐらいまで回復した僕は、結界を張り吹雪を防いだ。

「くそー、マジ寒い」

 すぐさま結界内の空気を暖めた。

 ほっと溜め息を付く。

 周囲を索敵し誰もいないことを確認すると、駐屯地のある方角目指して飛んだ。

 辺り一面雪ばかり。雪に埋もれた木々が時たま姿を現わすのみであった。


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