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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第六章 エルーダ迷宮狂想曲
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エルーダ迷宮狂想曲20

地下十七階攻略を前に、ゲートの権利を獲得し、十六階の諸々をこなす。

 ガーゴイルは相変わらず余所見をしているし、ゴーレムは引っかかっている。

 魔法はよく効いたが、麻痺弾は一発も通用しなかった。当然と言えば当然、麻痺する脳も神経もないのだから。

 地下十七階は十六階よりさらに広い空間が用意されていた。一方で足場を制限する仕掛けも施されている。吊り橋や、突起した通路など様々だ。

 立体迷路のような構造をしていて、思うように進めないのは新手の手法だ。

 スタート地点から入ってすぐ道は上下に分かれている。

「匂い見つけたです」

 リオナが言った。

「一つだけ違う匂いなのです」

 僕たちは色めき立った。

 方角は分かった。でもそこに辿り着く道は複雑に交差している。リオナに地図を見せながら確認を取ると随分トリッキーな場所にいることが分かった。

「ライバルも数組いるみたいだし、急がないとね」

 今ロメオ君とルートを確認している。およそ出口までの距離の二倍は歩くことになりそうだ。

 全員に確認すると全員が行くという。

 どうやら昼食はオクタヴィアが一番豪勢になりそうだ。

 僕たちの選んだルートには誰もいなかった。チームに鼻の利く奴がいないのだろうか? それともリオナの鼻がよすぎるのか?


『アースジャイアント レベル三十 オス』


 おや、レベルが低いと思ったら、装備がガチガチのプレート装備だった。

 戦闘はほぼロメオ君の雷撃で仕留めていった。たまに討ち漏らすとロザリアが魔法で追撃してとどめを刺す。

 壁の陰に潜んで魔法で狙えないような敵は、リオナとアイシャさんが近接で仕留めた。

 僕の出番はなく、相変わらず結界担当と荷物番である。

 オクタヴィアはそんな僕の背中のリュックに収まり頭だけ出して居眠り中である。

 たまにピーとか音を出して鼻提灯を膨らませている。

 今日は時間との勝負なので、落としたアイテムの回収も値打ち物以外はスルーしている。魔石の回収はしておきたいところなのだが、待ってる時間が惜しいので放棄する。


 マップを半周して、ひたすら下に降りていく。すると渓谷を挟んで道が二手に分かれる場所に出る。この先に例の一匹がいる。

 問題はこの先にある『スイッチ』の表記である。地図で見る限り、罠ではないようだ。ただ、『恐れず床に乗れ』とだけ表記がある。それが、道の交互にあるのだ。

 アイシャさんも出口へ一直線だったのでこの『スイッチ』という物を知らないという。

 やがて僕たちは一番近い『スイッチ』に着いた。地面に明らかに人工物と分かる大きな踏み石が置かれていた。

「なんだろうね? 罠じゃないんだよね?」

 ロメオ君の問いに誰も答えなかった。

 先へ進む道は途切れてなくなっていたからだ。

 またマップ情報に穴が?

「踏んでみるしかないじゃろう」

 全員を紐で縛って一番体重の軽いリオナが床に載ることになった。反射神経なども加味しての決定だ。何かあったら紐を引き上げる。僕が結界を張り、ロザリアは緊急事態に備えて簡易神殿の用意をする。

「行くのです」

 リオナが恐る恐る床を踏みしめる。

「……」

 何も起きない。

 リオナは床の上で飛び跳ねるも何も起こらない。

「もしかして軽すぎるんじゃ?」

 ロメオ君が石に足を置く。そしてゆっくりと体重を移動していく。

 ゴリゴリゴリ…… 岩が沈んで行く。

 ゴトンと音がして、床が止まる。

 周囲を見渡すも何も起きていないことを確認する。

 全員が安堵する。

「あっち、動いた」

 寝ていたはずのオクタヴィアが僕の頭に手を置いて、遠くを見つめる。

 全員が渓谷の反対側の通路を見る。

 ロメオ君が石から降りる。

「ああっ!」

 山道に脱落した箇所が現れた。

 もう一度踏み込むと、断絶した道の間に足場ができた。

 僕たちは目の前にある断絶した道を見つめた。

「そういうことね」

 ロザリアが言った。確かに罠ではなかった。これは一種の仕掛けだ。

「二手に分かれる必要がありそうじゃな」

 床から降りると架け橋は消えてしまうのだから、そうするしかない。同様のものがこの先にまだいくつもあるのだ。

 問題はどう二手に分かれるかだ。

「まず探知スキルに優れた物を分ける。オクタヴィア、参加して貰うぞ」

 オクタヴィアはリオナの横に並んだ。

「次に遠距離だが」

 ロメオ君とロザリアが別れた。そして最後は僕とアイシャさんが別れたが、どうにもバランスが悪い。僕がいる組の方が結界のせいで圧倒的に有利になってしまうのだ。結界のない組は明らかに防御不足に陥ってしまう。

 僕とオクタヴィアが組むことで調節していたが、最終的にはリオナと僕のチーム、残り全員のチームに分かれることになった。防御は火力で補うことにしたのだ。前衛はアイシャさんとロザリアの幻獣が担当する。そこへロメオ君の火力である。

 一方僕の方は結界ありきの銃撃戦になる。

 僕とリオナは反対側の『スイッチ』を目指した。あちら側の『スイッチ』でできた足場を通り過ぎて、目的の場所に辿り着くも、そこには敵さんが待ち構えていた。それも三匹。

 ライフルでそれぞれ別々の相手をターゲットにした。

 僕は『一撃必殺』を作動させる。脳天に一撃である。リオナの方も麻痺弾が利いたらしく、一気に距離を縮めて、赤柄の方で顔面を吹き飛ばす。

 三匹目が怒りの声を上げて棍棒を振り上げる。

 僕は結界で奴を押し返した。

 リオナはゆっくり狙いを定めて脳天をぶち抜いた。

「もういないか?」

「いないのです」

 僕たちは回収すべきアイテムがないことを確認すると『スイッチ』を作動させた。

 僕はライフルの望遠鏡を覗きながら向こうの様子を確認した。

 やはり、行き止まりだった場所に岩がせり出してきて道を作っていた。

 アイシャさんを先頭に一行が先に進む。全員が渡りきると、僕たちは踏み石を降りる。

 そして魔石を回収して、待機する。


 しばらくすると「作動するです」とリオナが言った。

 どうやら向こうもうまくいったようだ。

 僕たちは足場を越えて、その先にある洞窟のなかに踏み行った。広い洞窟のなかに巨人が何匹も闊歩している。ここは彼らの巣のようだった。

 向こうのチームが心配である。

 僕たちは音を立てずに遠距離から始末していった。

 リオナの麻痺弾もよく効いた。ほぼ抵抗なく殲滅することに成功した。途中宝箱があったので『迷宮の鍵』で開けた。なかから金貨二十枚が出てきた。

「がめちゃおうか?」

 冗談でリオナに言ったら「オクタヴィアも耳いいのです。聞かれたですよ」と言われた。

「じゃ、オクタヴィアにはクッキーの盛り合わせで」

 もちろん冗談だったのだが、「了解」と返答が返ってきた。

 全く困った猫である。

「がめるのは冗談だが、詰め合わせは買ってやるよ」

 僕たちは『スイッチ』の場所に辿り着いた。


 思ったより時間がかかっていた。でも向こうの様子はリオナには聞こえているようで「問題ないのです」とだけ答えが返ってきた。

「下りて大丈夫なのです」と言うので僕は踏み石から下りた。

 そして次の断崖に橋の架かるのを待った。

 やがて岩の擦れる音がして、せり出してきた岩が道を作った。

 僕たちは足場を越えると最後の『スイッチ』を目指した。


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