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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第六章 エルーダ迷宮狂想曲
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エルーダ迷宮狂想曲(食人鬼編)9

遅くなりました。

 石の砦は関がいくつも設けられていて、そこを突破して進むことが唯一の道になっている。地図を見ても地下十四階は完全な一本道で構成されている。しかもこちらからはほぼ上りで敵が常に優位な位置を占めている。

 岩を落とすという単純な攻撃だが、状況によっては脅威となりうる。

 それに岩の城壁に囲まれた要害というのも仕掛けるには手がかかりそうだ。

 今までのような魔法上位の戦い方ができるのか、はたまた遮られるのか。

 僕の結界がどこまで通用するかにもよるが、砦の迎撃能力が定かでない以上、オプションを用意しておく方がいいだろう。

 結局、午後はできあがった薬を小分けにする作業を行なうと、町を出て、森のなかを散策した。自分の町の近傍だというのに、歩いたこともなかったのだ。

『エルーダ迷宮洞窟マップ・前巻』を片手に、明日の狩りを想像しながら、道を進んだ。


 まずは岩対策だ。

 転がってくる岩はどうするか?

 穴を掘って落とす。はい、解決!

 飛んでくる岩はどうすればいいか?

 粉砕する。難しいか? コースを変える。風魔法が有効? ロメオ君もアイシャさんも風魔法は得意だ。障壁の迎角を調整すれば、受け流すことも可能だ。解決か?

 何とかなりそうかな?

 次に岩の城壁はどうするか? 久々に『魔弾』を使うか?

 食人鬼は? 多少頑丈らしいが、筋肉の塊だ。問題ない。たぶん。

 潜んでいる不届きな奴がいたら? リオナが見つける? 裏を取られそうだな、何か考えないと。姉さん同様、警告後発砲が有効か? 

 宝箱は? 最後に開けられてからどれくらい経つ? 努力は報われるのか? こればっかりは開けてみないと分からない。最後に開けた情報なんて、宝箱に貼り付いてなきゃ分からない。

 日が浅ければ競合の危険性も低ないが、逆なら敵は多かろう。

 せせらぎで、川魚を捕ると転移一発、帰還した。



 翌日、僕たちは砦の攻略を行なっていた。

 前日の自分のシミュレーションとは全く違うものになっていた。

「あっちにいるです!」

「見つけた!」

 望遠鏡の付いたライフルで、遠距離狙撃である。

 バシュ!

 櫓の上の食人鬼が手すりを乗り越え落下する。

『一撃必殺』が炸裂する。

「殲滅完了!」

 リオナが足元の仲間に合図を送る。

 砦に架けられた橋を僕とリオナ以外の別働隊が渡る。

 僕たちは高台を降りるとみんなの後に続いて、橋を渡り櫓に駆け登る。

 出口方面と宝箱方面の分岐まではこの調子らしい。

 急斜面らしい急斜面もなく、橋を渡ってくる者を高所からの攻撃と力業で襲ってくる戦法のみであった。

 食人鬼は確かに頑丈ではあったが、でかい的でしかなかった。


 そして、分岐に辿り着いた。


 当然、僕たちは宝箱方面を目指すことにした。

 景色は変わり始めた。見張りの配置が的確になり、互いが互いを補うポジション取りができていた。進む先には、柵や罠が配置されて、まっすぐ目的地には行けなさそうだった。


 僕たちは先手必勝を旨に突き進んでいたが、とうとう乱戦になってしまった。こっそり狙撃とは行かなくなったのだ。

 それでも、広場を一掃するのに時間はかからなかった。

 だが、それもここまで。

 目の前の吊り橋の先に巨大な関所がそびえ立っていたのだ。

 アンジェラさんが言っていた砦のイメージはこの景色がルーツだとすぐに分かった。難攻不落の要塞だ。

 人工的に積み上げられた岩の城壁。狭い入り口。そこへ至る見晴らしのよすぎる吊り橋。見つかるなというのが無理な話。

 先客がいるとすれば余程の手練れだ。

「とりあえず橋の上を片付けよう」

 見つかることを勘定に入れて、見張りを狙撃する。すると、あっという間に襲撃がばれて警戒されてしまった。

 銃を持つ者全員で迎撃する。

 橋を渡ってくる兵隊たち。狭い門を塞ぐ肉の壁。城壁の上から下を狙う食人鬼の群れ。

 敵は吠えながらこちらを見つけようと必死だ。

 見える敵を順に倒していたが、さすがに時間がかかりすぎた。

「今日中に攻略できるのか?」

 そんな疑問が沸き上がる頃、たまたま全員の弾が切れた。食人鬼の襲撃がそれ程までに厳しかったからだが。

 弾倉を換装するまでの間、僕が『魔弾』で持ちこたえることにした。

 橋の上に、僕たち目掛けて詰め寄る一群。

 さして気にすることなくいつもの調子で一撃を放った。

 すると、一群はまとめて消し飛んでしまったのだ。

 衝撃が関所の前に群がる肉の壁を襲う。

 食人鬼の群れだけでなく、関所そのものが吹き飛んだ。

 衝撃が僕たちを襲う。自分の攻撃を自分で受けきった僕は辺りを見渡す。

「橋が破壊不可能なギミックでよかったな」

 アイシャさんが言った。

「例の成果ですかね?」

 一度に開放できる魔力が増えたんだった。

「それにしても」

 僕は砦の上部に蠢く一団を狙った。

 一団はおろか、城壁が崩落した。崩落した外壁は谷底に落ちていった。

 そして砦を構成する土砂も堰き止める外壁を失ったことで、雪崩を打ったように崩れ落ちていった。

「なっ?」

「砦が崩れる……」

 茫然自失で見送る僕たち。

 敵は常軌を逸した状況に右往左往している。

 我に返った僕たちはこのときとばかりに前進する。


 風の魔石が山のように手に入った。

「装備品は鉄屑ばかりだ」

 使えそうな宝飾関係だけまとめて転送する。

 しばらくすると次の砦が見えてきた。


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