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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第五章 開かない扉と迷宮の鍵
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ロメオ君育成計画(火蟻遍)4

 今回は出発前にロザリアにもライフルを一丁新調した。白木の彫刻の入ったきれいな銃だ。

 ちなみにライフル一丁、金貨百枚だ。

「ぼったくりだろ!」 

 何割かのマージンが僕の口座に入ってくるのであまり大きな声では叫べませんが。

 ロザリアが使うので短銃身のものにした。付与の付いた魔石は別売りで、さらに法外だったので、僕の必中用の石を載せた。これなら短銃身のデメリットも相殺できる。リオナの銃剣と変わらないので、後は本人の捕捉能力次第だ。問題は威力だが、こればかりはやってみないと分からない。


 地下七階は大きな蟻の巣だった。通路はすべて地肌丸出しの土壁だ。枝道が縦横無尽に張り巡らされ、まさに迷路を形成していた。

 現在位置はマップの縁、出口は中央の大部屋だ。螺旋状にほぼ全てのルートを通らないと辿り着けないようになっている。面倒臭いことこの上ない。

「いた!」

 土埃のなかに黒いものが蠢いていた。

 人並みにでかい蟻ってどうなの?

 探知スキルで周囲を探る。ほどよくばらけている。

「誘い出そう」

 このフロアーの罠は落盤だ。敵味方関係なく爆発の震動で天井が落ちる仕組みだ。他の罠に比べて影響範囲が広い。だが一度落としておけば二度は落ちてこない。

 僕はライフルを構える。

『一撃必殺』を発動させようと照準を合わせる。頭らしき部位に照準を合わせる。

 発動した! 

 頭が吹き飛んで細い脚のなかに堅そうな本体がグシャリとうずくまった。

「誘い出すまでもなかったか」

 通常弾でも行けそうだ。

 次の一匹は角を曲がったところにいる。直接は狙えない。

 仲間がいなくなったことに気付く様子はない。

 僕は角の壁に一発撃ち込んだ。

 リオナとロザリアが構える。姿が視線上に入ると、ふたりが発砲した。

 どちらも頭を外した。必中のデメリットが出た感じだ。身体のど真ん中を射貫いているが即死には至らなかった。

 キーキーと甲高い声を上げながらこちらに襲いかかってくる。

 リオナたちが続けざまに発砲する。

 そのときだ。蟻が口から粘液を吐き出した。

 予想外の攻撃だった。

 想定していた射程より遙かに遠い位置からの攻撃だった。

 爆発が目の前で起こり、罠が発動した。轟音と共に地面が揺れ、天井が落ちてくる。

 土埃が舞い上がって何も見えなくなった。

 周囲に音と振動が伝わり、こちらの存在がばれたようだ。

 蟻たちがこの場所を中心に群がり始めた。

 リオナが発砲した。騒動の張本人を葬ったようだ。

 この視界でよく撃てるものだ。

「囲まれるぞ」

 僕たちは入り口まで下がって籠城戦を強いられた。脱出部屋の前は蟻の大群にすっかり占拠されてしまった。

 次々と爆発が起こって、土埃が舞い上がる。視界がいつまで経っても確保できない。

「最悪だ」

 埃でむせる。みんなも咳き込む。

 僕はライフルを構えて、スキルを発動して、反応があり次第めくら撃ちだ。少しずつ減らすしかない。

 リオナも発砲するが一撃必殺にはならない。蟻共が赤い糸柄の銃の射程外にいるからだ。

 誤算だった。

 倒せないことはないが、弾の減りが早い。

 ロザリアは更にお手上げだ。視界が確保できないのだ。適当に撃っても当たりそうな混み具合ではあるが、この状況では焼け石に水だ。無駄弾は撃たない方がいい。

 ロメオ君は風の魔法で土埃を押しのけ、視界を確保しようとするが、敵の攻撃が新たな土埃を舞い上げて鼬ごっこになっている。

 ロメオ君に特大の雷を落としてもらうか?

 騒ぎを聞きつけた敵がどんどん集まってくる。

「何匹いるんだ?」

「十二匹倒して、二十三匹なのです。あ、増えたです。二十四匹なのです」

 よく数えられるな。こっちの『魔力探知』では数が多すぎてもう個体判別できないのに。

「これで毛皮の一枚も獲れたらやる気でるんですけど」

 ロザリアもそのあまりの多さに愚痴をこぼす。

 ひっきりなしに結界にビシバシ反応がある。結界に気が行って、射撃に集中できない。

「一撃入れるよ!」

 ロメオ君が詠唱を始めた。

「結界を狭める!」

 僕は結界を一気に狭めた。魔法の射程になるべく多く引き込むためだ。

 堰止める物がなくなった蟻たちがゾロゾロと接近して来る。

 リオナとロザリアが斉射して脇にそれる連中を牽制する。

 突然、土埃のなかで閃光が走った。

 絹を裂くような断末魔の叫びが洞窟内に響き渡る。

 ボン、ボボボボボボバァン!

 驚くべき事態になった。

 何かに雷が引火したのか、悶え苦しむ蟻たちが内側から一斉に爆発し始めたのだ。

 体液と肉片がバケツでぶちまけたように一帯に飛び散った。床も天井も壁も何もかもが緑色に染まった。

「なんなのよ!」

 こっちが聞きたい。

 ロザリアが半べそをかいた。

 汚れなかっただけでも礼を言ってほしいもんだね。

 間隙を縫って接近する生き残りにリオナが発砲する。

 頭が吹き飛んだ。

 連続で三匹をヘッドショットで片づけた。

「おおっ?」

 急に腕を上げたのか? その歳でもう銃の名手かよ。

 僕の顔を見て、自慢げにニコリと笑う。

 後で聞いたら頭が中央に来るよう位置取りながら撃っただけだそうだ。

 ほとんど曲芸の域だな。

 残党を個別に殲滅して、ようやく第一波を凌いだ。

 集めた火の魔石(小)の数、四十三個。

「弾薬の残りが半分になったです」

 僕たちは大きな溜め息を付いた。

 何が『さくっとクリアーする予定』だよ。これじゃ泥沼だよ。


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