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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第五章 開かない扉と迷宮の鍵
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闇の信徒2

 なんだ? 闇の信徒? スケルトンなのに? ソーサラーとは違うのか?

 足元がひんやりとした。いつの間にか床が凍っている。

 いやーな予感がした。

 稲妻が走った!

 僕は盾を放り投げて、咄嗟に飛び退いた。

 放電が盾を襲って、僕の脇まで吹き飛ばした。

 間一髪だった。

「心臓止まるかと思った……」

 僕は警戒しながら凹んだ盾を拾った。

 でも正解だった!

「まさか僕とロメオ君の合わせ技をやってくるとはね」

 角に身を隠し、ふーっと、息を吐いて、呼吸を整える。

 今度はこっちの番だ。

 足元の氷を相手の足元まで伸ばす。

「捕まえた!」

 これで身動きできまい!

 足元を凍らせることに成功した。サンダル履きではさぞ冷たかろう。

 火の玉連射だ!

 火の玉を何発も放った。

 敵は回避することもせず、氷槍を放って相殺しにかかった。

 水蒸気爆発が起こって、爆風が通路を戻ってくる。

 僕は咄嗟に角に身を隠す。視界が塞がれる。

「ただの偶然か? それとも脳みそが残ってるのか?」

 スケルトンにしては魔力がありすぎるし、強力すぎる。普通ならとっくに枯れているはずだ。

『魔力探知』で敵の姿を追いかける。

 あいつ…… さっきも探知に引っかからなかったからな。

「どこへ行った? まさか、逃げたりしないよな?」

 希望的観測を述べてみる。

 結界を張りつつ周囲を警戒する。

 やつがいた場所にやって来たが、骨一本残っていなかった。

 残骸ぐらいあってもよさそうだが。

 まさかほんとに――

 結界に反応!

 後ろだ!

 結界に触れた火の玉が四散した。

 火の粉の先に黒いローブを着たスケルトンが次の一撃を放とうと、こちらの様子を窺っている。

 やつ目掛けて魔法を放ちながら体制を整える。

 こうなりゃ、中近距離での魔法合戦だ! 僕は結界を強くする。

 火の玉、氷槍、風の刃、どれも互いにことごとく弾き返す。

「対魔法結界……」

 一体、どこにそんな余分な魔力を隠してるんだ? 骨のくせに!

 余程自信があるのだろう、相手も隠れる気はないようだ。

 避けようともせず、応戦してくる。

 だが、僕も一歩一歩近づいて行く。

 どちらも相手の結界を貫通できないでいる。

 対物理結界も張っているのだろうか?

 ライフルならとっくに決着が付いてる気がするけど。

『魔弾』を使うか……

 でも、さすがにここまで粘られるとほしくなる。明らかに高級レア装備な気がするんだよね、あのローブ。それに全身ジャラジャラな小物たち。できれば無傷で手に入れたい。

 どうしよう……

 こっちの結界を貫通してきたら考えるか……

 でもそれじゃ、手遅れになる気がするし…… 

 このまま力で押し切れればいいんだけど…… やはり装備は諦めるか……


 悩んでいる間に黒いやつの手数が減ってきた。

 ようやく魔力が枯渇したか?

 タフすぎるな、こいつ。

 そのうち攻撃を止めて防御に徹し始める。

 やがて被弾し始めるが、装備が余程いいのかダメージは軽微だ。装備が気になって全力が出せないこちらのせいでもあるのだが。

「どれだけレア装備、身につけてんだよ!」

 敵は回避行動を取りつつ、杖を振り回す。

 逃げる選択肢を忘れていることに感謝だ。こちらの氷槍を叩き落とそうともがいている。いや、杖で殴りかかろうとしているのか?

 達人じゃないんだから。一発弾く間に二、三発食らう。そして押し戻される。

 黒いローブのスケルトンはジワジワと霜で白くなっていく。

 動きが鈍くなってきた。

 攻め時だ。

 僕は戦法を変えた。

 盾を前面に押し立て、深呼吸する、敵を見据えながら荒ぶる気持ちを抑えつける。

 そして…… 意を決して床を蹴る!

『ステップッ!』

『ステップ』を繰り返して一気に距離を縮める。速くなったと感じた。『ステップ』の効果が上がっている気がした。

 景色が止まっているようだった。

 敵はこちらのすることをフードの隙間から虚ろな眼窩で眺めている。

 固まった身体は反応しなかった。

『シールドバッシュ!』

 渾身の一撃だ。

 顔面を殴りつけた。

 手応えがあった。

 追い打ちを掛けるように盾で殴りかかろうとしたら、骨がばらばらに飛び散った。

 頭蓋がフードに引っかかって、なかで玉のように踊った。

 全身の力が抜けて人形のようにその場に崩れ落ちた。頭蓋もフードのなかから床にこぼれ落ちた。

 杖がガシャンと床に落ちた。

「げっ!」

 軽そうに振っていたから軽いものだと思っていたら、無茶苦茶重そうな音がした。

「当たったら死んでたな……」

 念のために転がった頭蓋に剣先を突き立てた。


 終った……


「はぁあーっ」

 大きく息を吐く。手の内のわからない相手との接近戦は怖い。


『認識』スキルをフル稼働させる。

 装備を見逃さず、すべて回収する。

「これでろくな装備じゃなかったら詐欺だからな」

 僕は息を整えながら一番怪しそうなモノを確認する。


『闇の信徒のローブ、魔法耐性。魔力量増加。魔法攻撃力増加。火属性耐性。吸血魔力回復』


「おおっ! 大当たりだよ、これ――」

 ………… 吸血?

「えええええっ?」

 僕は後ずさった。

 これってまさかバンパイア? 

 僕は砕いた頭蓋を手に取り、顎の歯並びを確認する。牙があったらバンパイアだが……

 さすがにそれはなかった。

「びっくりさせるなよ。妄想信者のなれの果てかよ」

 そうだよな、本物のバンパイアだったら骨になるはずないもんなぁ。灰になるんだから、スケルトンはないよな。

 ローブを丸めて収納袋に入れると他の装備品もチェックする。


 ワンランク上の付与のある指輪やネックレスも見つかった。

 杖は重かったが、『雷の杖』という一品だった。


『雷の杖、雷撃攻撃可。魔力消費、三十。魔力貯蔵量、三十。魔力残量、ゼロ』


 一体で午前中の収入を軽く超えるとは、実に美味しい相手であった。どれも売るには惜しい代物なので、お持ち帰りしよう。

「なんだこれ?」

 首にかけていたネックレスがもう一本転がっていた。本体部分が骨の下敷きになっていて気付かなかった。丈夫な紐の先に何か光るものがぶら下がっている。

 これは……

「鍵だ」

 それは金色の古ぼけた大きな鍵だった。


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