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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第五章 開かない扉と迷宮の鍵
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スケルトン先生

 一日働いたら一日休む。

 みんなは私用で出ているので、僕も出かけることにした。

 スケルトン先生に会いに行くのである。久しぶりのソロプレイだ、緊張する。

 エルーダに着くと修道院に物資搬送用のゲートを使わせてもらう許可を貰って、お布施を行う。

 どうやら修道院の惨状が教皇様の目に止まったようで、改修の話が出ているらしい。治外法権ではあるが営業許可も一応領主にとって、ゲートも教区教会が改めて用意するらしい。シスターが嬉しそうに話してくれた。


 一方既に詰め所にいたメアリーさんは僕の顔を見るなり嫌な顔をした。

「君のおかげでわたしは懺悔する羽目になりましたよ」

 厳密に言うと僕というよりロザリアだが。同罪ではある。

「すいません。強引すぎました」

「納得したわけじゃないですからね」

「はい……」

「お昼一回分で手を打ちましょう」

「はい?」

「忘れてあげます」

「ありがとうございます。では昼頃には戻ります」

 リオナの腹時計がないから、時間が読めないんだが。早い分には構わないだろう。



 地下四階、スケルトンナイトのエリアだ。

 先客は一チーム。狩りというより、通過が目的のようだった。

「では始めるとするか」

 最寄りのスケルトンを探す。ナイトではなかったので燃やした。

 前回の教訓から付与装備以外は放置する。


 三匹目でスケルトンナイトに当たった。

「いざご教示願います」

 僕は二匹目のスケルトンから回収した剣を構えた。僕の剣では勝負が一瞬で付いてしまうので、今は鞘のなかだ。

 僕はジワジワと接近し間合いを詰めた。間合いは当然、リーチの長い先生の方が遠かった。

 いきなり喉元目掛けて突いてきた。

 僕は咄嗟に身体を捻り、剣を跳ね上げた。

 切り返して首を刎ねてやろうと、腕に力を込めたところに盾が飛んできた。

 はじき飛ばされて、全身を壁にしたたかぶつける。

「いってぇ……」

 さすが先生。いきなり『シールドバッシュ』かよ。

「今度はこっちから攻撃だ」

 剣を振り、切りつけるもことごとく盾で防がれる。

「くそー、やりづらいな」

 まるで隙がない。生前は名のある剣士だったとか変な設定ないだろうな?

 何合か目のこと。

 やった!

 一瞬の隙ができた。

 今度こそ!

 盾が後ろに大きく流れたところに僕は剣を撃ち込む。

 だがそれも身体を捻られてかわされる。

 剣を退くタイミングに合わせて先生が剣を薙いだ。

 大振りだ。ただ牽制するために横に大振りしたものだと思った。

 フェイントだった。

 当てる瞬間、手首をゆるめ、剣の先を後方に寝かせたまま振り抜くことで、切っ先の到達を遅らせるのだ。身体の回転だけで切るので威力は落ちるが、当たり所が悪ければ死ぬのは同じだ。

 一瞬遅れて剣先が届く。

 サリーさんによくやられた技だ。切られた方はなぜ切られたのかわからない。完全にやり過ごしたタイミングで切りつけられるのだ。

 サリーさんの剣は見えなかった。でもスケルトン先生の剣の軌跡は目で追える。

 さすが教官。指導に抜かりはない。

 僕が避けて姿勢を戻すタイミングで、先生の剣の切っ先が通過する。

 鼻先をかすめた。

「あぶなッ!」

 僕は仕切り直すために回り込む。盾のない方、ない方に。

 先生がいきなり突っ込んできた。

『ステップ』だ! 跳躍距離が急に伸びた。

 僕も咄嗟に引き下がるが壁にぶち当たる!

 しまった!

 間髪入れずに先生が『連撃』を放つ。

 僕は結界を張る。

 剣が弾かれて、先生のバランスが崩れる。

 僕は首を刎ねた。

 骨はガラガラと崩れ去り、剣は骨のなかに埋まった。盾がゴンッと重い音を立てて床に転がった。

「結界を使ってしまった……」

 戦いに勝って勝負に負けた。

 装備品を回収する。身体強化の指輪が一つあったので自分の指に嵌めた。ただの盾だがそれも回収した。


 新たな先生を見つけた。

 僕は盾を前面に押し立て突っ込んだ。低い姿勢から突き上げる感覚で盾を押し出す!

 先生も負けじとぶつかった。と思ったらすかされた。僕は転んだ。振ってくる剣を慌てて避けた。

「こえぇええ……」

 あんな動き普通するかよ。

 駄目だ、技量が違いすぎる。まさに先生と生徒だ。

 さっきの先生とはまるで違うタイプだった。同じスケルトンナイトなのに。

 この先生は盾捌きがうまい。

 どんな攻撃も軽くいなす。

「くそっ、鈍器だ! こういうやつには鈍器しかない!」

 でも僕の腕じゃ、それすら簡単に捌かれるに違いない。

 僕は距離を置いた。

 そして最初の先生が見せた戦法を試そうと剣を構える。

『ステップ』からの『連撃』。

 僕は床を蹴った。

 盾が顔面に飛んできた。

 先を越された!

 ガンッ! 大きな音がして気が遠くなった。

 また負けた……

 結界を張り、這いずるように必至に距離を取ると、また燃やした。

「畜生…… 頭蓋骨にヒビが入った」

 転がってる装備を確認した。盾に軽量化の付与が付いていた。僕は使っていた盾を捨てて乗り換えた。

 気分転換にスケルトンを数匹燃やした。

 銀装備を持っていたのでそのまま修道院送りにした。後で溶かしてやる。

 三人目の先生を見つけた。

 ううむ、なんか今度の先生は弱そうだ。

 次の瞬間、氷の矢が飛んできた。

 え?

 ソーサラーの存在を探した。もしかして見落としたのか?

 だが、目の前にいるのは先生だけだ。

「付与装備か……」

 スケルトンの魔力なんて高が知れている。精々撃てて数発。

 僕は盾を構えて、先手を打つ!

『ステップ』を発動して間合いを詰めると、盾をぶつけて盾ごと相手をはじき飛ばす。

 いなされても姿勢を崩さないように。前のめりにならないように腰を落とす。

 手応えがあった。

 先生の盾を持つ片腕がもげていた。

 このまま攻勢を掛ける!

 僕は隙だらけの胴を薙ぎに行く。

 先生が距離を置こうと後方に飛び退く。

 次の瞬間氷が僕の胸に命中する。

 一瞬の間ができた。

 先生は、床を蹴って間合いを詰める!

 そこへ『シールドバッシュ!』。

 出鼻を挫くためにこちらも踏み出し、一撃を加える。『連撃』に入ろうとしたところで、先生の頭が床に転がった。

 呆然と立ち尽くした…… 

 頭蓋骨の行方を目で追った。

「やった……」

 やった!

「勝った!」

 勝てた! 魔法を使わずに勝てた……

 嬉しくて全身が震えた。久しく感じたことのない感動だ。

 あれ? 僕『シールドバッシュ!』使った?

 おおっ! 新スキルゲットだ。

『認識』スキルを自分に使ったら、新しいスキルが増えていた。


 僕は装備品を確認した。案の定、氷の矢が発動する指輪を見つけた。

「リオナにやるか」

 それから昼になるまで、僕は雑魚敵数体と先生ふたりと対戦した。

 雑魚は燃やし尽くしたが、先生には全敗した。

 雑魚からは銀の武器が二本手に入った。後は宝石の入った指輪が五つと付与装備が一つ。

 僕は万能薬をすすり気を取り直してから、メアリーさんとの昼食に臨んだ。


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