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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第四章 避暑地は地下迷宮
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これのどこが避暑地なの? 4

「壁壊したのこの子だと思う?」

 ロメオ君が当然の疑問を投げかけてくる。

「違うでしょ。階層の壁を壊すって確かできないはずだから?」

「でも崩れてたです」

 僕たちは振り返り、荷台の少女をしげしげと見た。

「やったのかな?」

 今度は僕が尋ねた。

「教会関係者なら、あるいは」

「そうなの?」

「教会って迷宮を浄化するのも仕事のうちじゃないですか。だったら壁を壊すことも容易なんじゃないかなと」

「ロメオ君、物知りなのです」

「いえ、希望的観測です。第一、彼女が教会の人間とは限りませんからね」

「ただのコスプレイヤーであってほしい」

「コスプレ?」

「コスプレイヤーっていうのはいろんな職種に扮して楽しむ人のことだ。メイドとか、メイドとか、メイドとか」

「全部メイドじゃないですか」

「人気があるらしいよ」

 異世界では。

「本人が目覚めたら、聞いてみるしかないですね」

 僕とリオナはその意見に賛同した。

 でも、なぜ壁を壊す必要があったんだろうな? それに行き倒れるってよっぽどだぞ。

「出口発見です!」

「あっ……」

 僕たちは下層に伸びる階段を前に思い出した。ここから荷車は下ろせないと。外に出すには道を戻らないといけないと。

 僕たちはとりあえずゲートの権利を獲得するついでに少女を外に連れ出した。

 詰め所にいた僧侶メアリー・コルセット女史に行き倒れの少女を預けたら、思いっきり驚かれた。何に驚いたのかは知らないが「僕たちは荷車回収があるので」と断って、その場を後にした。

 来た道を戻るのはなかなかに辛いものがある。脱出用の結晶を使おうかとも思ったが、勿体ないからと、ふたりが言うので我慢することにした。

 どう考えても今日の収益は金貨五十枚は下らなそうだが、それでも銀貨十枚を惜しむというのか?

 ま、敵もいないことだし、構わないんだけどね。

 それにしてもメアリーさんのあの驚きようが気に掛かる…… また面倒なことにならなきゃいいけど。飛行船の一件もあるし、今回は関わらないようにしておこう。



「銀は全部で金貨三十五枚と銀貨三十四枚。鉄屑は金貨二枚。付与付きの装備品はまとめて金貨五百枚だ。宝石類は鑑定に時間がかかるから今日のところはこの割り符を持って帰ってくれ」

 そういうと係の者は書類の角をちぎって切れ端を僕に渡した。

 割り符には既に番号の判が押してあった。九十一番だった。それは専用の書類らしく、紙自体に花柄の透かしが施されていた。頁の角が無造作に切り取られている分厚い書類の束に僕たちの一枚が足された。

「なくすなよ。一週間ほどで済むからな。それと、アドバイスだ。次からは鉄屑は拾ってこない方がいい、割に合わん」

 ふたりは装備品の値段の高さに驚いていた。

 だが実際は、持ち込んだ数からすると相当値切られた勘定だ。武器の値段も含めてこの値段だと売値の十分の一といったところだろう。

 努力して集めた鉄は重いだけで二束三文。素のまま持てるだけ持ち帰った方がよかったかもしれない。

 銀は含有量が少なく取れても少量だったし。

 喜ぶべきか悲しむべきか。宝石の値段次第といったところか。

 一番いいものは自分たちでがめているので今回はこれで良しとするか。


 ちなみに僕は盾と指輪を頂戴した。どちらも身体強化付きだ。二つ合わせてもリオナの剣ほどの効果もないのだが。黒剣がすっぽ抜けないだけの握力さえ補ってくれればそれでいい。

 リオナはメイスと指輪を手に入れた。メイスは銀製で、一番攻撃力のある物だ。アンデットエリアを通過するまでは使う気でいるらしい。指輪は完全に見た目で選んでいたが毒耐性があるものだった。ピンク色の宝石がはめ込まれた可愛らしい銀製の一品だった。

 ロメオ君は実用重視で魔力増加とか回復力強化とかいった指輪を両手の指の数だけ身につけた。塵も積もればというやつだろう。

「魔法使いの本気具合は指を見れば分かる」と昔から言われてるし、指が全部埋まってるだけでも好印象になる。ガントレットなど小手や手袋を付ける前衛職には、指輪は装備の邪魔にしかならないので、余り好まれないのだが。

「一人頭、金貨百七十九枚。おつりが銀貨三十四枚」

 僕は窓口で一千七百九十万ルプリの小切手を三枚貰った。

 前回は馬鹿なドワーフのおかげで空振り同然だったし、ロメオ君も今回は大満足だろう。

 そうだ、忘れないように今日の裏技を記録しておかないとな。一階側の通路を塞ぎ、あそこの壁を崩して、応援要請の罠を発動してやりさえすれば…… ぐふふ、スケルトンホイホイの完成だ。なんとしても壁を壊す方法を知りたいものだ。

「そこのにやけたお兄さんちょっと」

 窓口から聞き慣れた声が呼び止めた。

「マリアさん…… 何か御用でしょうか?」

「迷宮で女の子を拾ったんですって?」

 災いが向こうからやって来た。


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