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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第15章 踊る世界

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タロス戦役(再戦)24

 僕は誰かに「どけ!」と言われた気がして、今度は風に身を任せながら後方に大きなループを決めた。

 ピオトが放ったバリスタの鏃が障壁を貫通してエンシェントドラゴンの鱗に突き刺さった。

 姉さんの仕込んだ鏃では落下は阻止できない! ここは通常の鏃を使うべきだ。

 甲板で舌なめずりしているエテルノ様が一瞬目に入った。

 これでいいのか?

 僕は横滑りしながら擦れ違ったエンシェントドラゴンの風圧を乗り越えた。

 風に巻かれた僕を食い時と判断したドラゴンタイプが右手から大口を開けて飛び込んでくる。

 僕は結界で押し返しながら『魔弾』を口のなかに放り込んだ。

 ドラゴンタイプの頭が吹き飛んだ!

 エンシェントドラゴンは背中から衝撃の煽りを受けて姿勢を崩した。

 エテルノ様は思惑通り、身を竦めた相手の片翼二枚をまとめて切り落とした。

 ブレスは船の結界をかすめただけで、身体は捻れて不規則な螺旋を描きながら山間に落ちていった。

 船の集中砲火に紛れてテトが二本目の鏃を撃ち込んだ。

 船は船首を下げながら大きな弧を描いていく。

 僕は船の航跡を突き抜けてエンシェントドラゴンを追い掛けた。

 距離をどんどん詰めていくが、不規則な動きが邪魔をする。

 目の前の物体から魔力の膨らみを感じた! 

 来る! 転移だ!

 僕は適当にゲートを開いた。

 それこそドラゴンの後頭部付近にでも転移してやろうかと目標を定めた。

 当然、今飛び込んだら大変なことになる。どこに飛ばされるか、そもそも五体満足でいられるかも分からない。

 エンシェントドラゴンは何が起きているのか気付いていなかった。何度も異空間に逃げ込もうと試みるが異空の扉は開くことはなかった。

 エンシェントドラゴンは転移に回す魔力を羽の再生に回し始めた。

 膨大な魔力が切断された断面を光らせた。

 が、既に地表はそこにあった。

 タイムアップだ!

 衝撃で山の峰が一つ瓦解した。

 雪を被った山々の斜面が一斉に雪崩を引き起こす。

 山裾が雪煙に覆われた。

 崩壊してきた瓦礫と舞い上がった土砂がエンシェントドラゴンの姿を隠した。

 船はドラゴンタイプに邪魔されて、追尾が遅れている。

 反応がある!

 さすがにこの程度ではくたばらないか……

 エンシェントドラゴンがくたばったと勘違いしたドラゴンタイプが横取りしようと数体、下りてきた。羽を広げ、羽ばたかせ、砂塵をさらに巻き上げてこちらをでかい口を開けて威嚇した。

 最近その手の顔にも慣れて来た。迷宮で散々角突き合わせていれば、ドラゴンの威嚇も猫の欠伸と変らない。

 それにそこにいる肉の塊はまだくたばっちゃいない。転移を阻害してはいるが、手足まで縛っているわけじゃない。

 吠えたドラゴンタイプがエンシェントドラゴンの尻尾に吹き飛ばされた。おこぼれに預かろうとしていたドラゴンたちが一斉に羽ばたいた。

「せっかく一つ所にまとまってくれたんだ、まとめて死んでいけ」

 僕は雷を落として頭を押さえ込んだ。

 巨大な炎の柱がドラゴンたちに襲い掛かった。

 雪煙にけぶった白い景色が一転、熱波に押し返されてそこだけ日が降り注いだ。

 日に反射したドラゴンたちの障壁は一瞬で突破され燃え上がった。

 熱波が障壁を越えてヒリヒリと伝わってくる。

 まったく、でかいは、強いは、おまけに逃げるのが得意とか、他のドラゴンたちがまるで赤子のようだった。

 警戒されていないことをいいことに僕は姿を現わしたエンシェントドラゴンの残った羽を容赦なく『無刃剣』で切り落とした。

 エテルノ様が切り落とした方の羽が既に半分程回復していた。

 ドラゴンタイプを焼き尽くしてもなお吐き続けていたその口が叫び声を上げた。

 こいつ、舐め過ぎだろ。

 いくらこっちが隠遁スキルを発動しているからといって、転移を阻害し続けている魔力源をスルーするなんて。そりゃ、威嚇代わりに魔力を撒き散らしていたドラゴンたちに比べたら、省力化と効率化で消費を抑えている僕は食べ応えのない小鳥程度の小物だろうけど。

 お前を窮地に追い込んでるのはこっちだぞ。

 ブレスを吐き切ったエンシェントドラゴンはでかい尻尾を打ち込んできた。

 僕はでか過ぎる尻尾を結界でいなして『魔弾』を放り込んだ。

 エンシェントドラゴンは咆哮を上げた。

 尻尾はかろうじて尻に繋がっていた。

 さあ、もっと怒れ! 逃げることも忘れるくらい! 目の前にいる相手を倒さないとお前に逃げ場はないぞ!

『魔弾』の発射と同時にブレスを吐かれた。

 爆風と炎が弾けて、敵の障壁が次々破壊されていった。

 称号がある分、すべてにおいてこちらが有利だ。エンシェントドラゴンの障壁はないに等しかった。衝撃を直に受ける一方、こちらのブレスに対する耐性は確実に上がっていた。

 大地が鉄板の上のように焼き上がり積雪は水蒸気となって熱波で焼けただれた皮膚を蒸し上げた。

「手を抜いていると死ぬぞ」

 突然、目の前に血飛沫が。

 空から真っ二つになったドラゴンタイプが降ってきた。

 しまった!

 完全に不可抗力だった。

「逃げられるッ!」

 船が落としたドラゴンタイプが運悪く僕たちの間に降ってきて砂塵を巻き上げた。

「どけーッ」

 僕は目の前を塞ぐ砂塵と亡骸を衝撃波で吹き飛ばした。

「やられた!」

 エンシェントドラゴンのいた場所にドラゴンの姿はなかった。

 逃げられた……

「避けろ! エルネストォオオオ」

 兄さんの声が聞えた。

 僕の後ろにいつの間にかエンシェントドラゴンのでかい口と牙があった。

 僕は暗闇に飲まれた。

 そして踊り狂う熱気が闇の向こうから押し寄せてくるのを感じた。



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