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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第15章 踊る世界
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時を待つ日々(実験演習)39

 敵も回廊の柱に隠れながら、慎重に接近してきていた。

 弓矢の応酬だったらこちらは圧倒的に不利な状況に晒されていたことだろう。

「いい練習になるな」

 僕がそう言うと「こっちまで獲物が回ってこないのです」とリオナが愚痴をこぼした。

 弾数は多いが、パスカル君たちは敵をうまく捌いていた。

「こりゃ、炎竜が暴れるわけだ」

 いつも回廊が壊されていた理由が分かった。

 数による敵の執拗な攻撃はこちらを不安にさせる程だった。

 みんな自分達が魔法使いだということを忘れてないか?

「魔法使わないのか?」

「練習しに来たので」

 ダンテ君が答えた。

 目的意識は立派だけど…… 押されてるぞ。

 突然、敵が燃え上がった。

 周囲にいたミノタウロスの足並みが乱れた。

 柱の陰から姿をさらした敵が一斉射撃の餌食になって床に沈んだ。

 属性付きの弾を使い始めたか。

 リオナとヘモジも参加し始めた。ただし狙いは集団の遙か後方である。

「指揮官クラスはいただくのです」

「ナーナ」

「魔法使い!」

 オクタヴィアが叫んだ。

「お、実験できるな」

 リオナがミスリル弾の入った弾倉と取り替えた。薬室のなかに残った一発を側の敵に撃ち込むと魔法使いに狙いを定めた。

 多重結界ではないし、通常弾でも障壁を破壊できるレベルだが、取り敢えず結果が見たい。

 銃声と共に望遠鏡に映っていた魔法使いが視界から消えた。

「転移したか?」

「速過ぎて見えるわけないでしょ」

 ナガレが言った。

 個体の確認をしたかったが、そこまで辿り着くには距離があった。

「炎竜がいないと面倒なのです」

 ほんとこれが常識的な展開なんだろうけど、どうにも前に進んで行かない。

 僕たちが参加してもパスカル君たちの獲物を奪うようなことにはならなさそうだ。

「ナーナンナー」

 ボウガンの巻き上げ器をグリグリ回す。

「ヘモジ、これな」

 パラメーターを変えたボルトを渡す。弾速を上げておいた。

 ぼくは望遠鏡を覗く。

「ナーナ!」

 ヘモジがボルトを放った。

 ボッシュ!

「首なくなった!」

 巨人サイズの首が…… 

 オクタヴィアが僕の頭をポンポン叩いた。僕の望遠鏡を覗きたくて頭を押しつけてくる。

 望遠鏡を両手で掴んで両目でレンズを覗き込んだ。

「…… 見えない」

「あれだけ敵がいたら下敷きだろ」

「ヘモジ、もう一回だ。鎧の堅そうなところに頼む。それと回収できそうな位置の奴をな」

 ヘモジは言われた通り二発目を放った。

 最寄りの魔法使いが一体倒れた。

 僕たちは乱射しながら、敵を押し込み、その一体に接近した。

「陥没してる」

 一番鎧の分厚い胸部の鉄板が内側に大きく凹んでいた。ボルトも原形を留めていなかった。

 サンプルとして鎧を引き剥がすと『楽園』に放り込んだ。

「敵がこっちに来るのです」

「よし、後退するぞ!」

 衝撃波を放って足止めをしながら僕たちはパスカル君たちの迎撃ラインまで下がった。

 僕は壁を作り直して、陰で次のボルトの調整を行なった。

 次のボルトは先端の強度を増したものだ。

 あの鎧ぐらいなら貫通できるだろう。

「ヘモジ、同じ場所にもう一発だ!」

「はぐれてるあれがいいのです!」

 パスカル君たちの攻撃のせいで柱に釘付けになって動けずにいる一体がいた。

 頭は見えているが胸部は隠れている。

 リオナが放った銃弾がミノタウロスの脳天を撃ち抜いた。

 ヘモジが続けて次を放った。

 崩れて柱の陰から出てきた胸部を撃ち抜いた。

 骸が力なく転がった。

 柱の陰に隠れながら接近して回収しようとしたら、鎧の内側が……

 回収せずに僕たちは骸から離れた。鎧をきれいに貫通したボルトは体内で破裂していた。嫌な感触が手に残る。まるでゾンビだった。

 でかい相手だからいいが、小さい相手にこれでは精神衛生上余りよろしくない。もっともこの威力なら貫通してしまうだろうが。

 殺し合いにちょうどいいなどと言う形容もないものだが、タロス戦では有効打になりそうだった。

 情報を記録する。

 ミスリル弾ならミスリルの強度だけで同等以上の効果を生み出せるだろう。

 障壁を貫通してもその先に待ち構える装甲を貫通できなければ意味がない。初期の設定より若干弾速を上げてやるだけでうまくいくかも知れない。

 付与は破裂系じゃない方がいいかもしれないな。凍らせるか…… 

 調整したミスリル弾を二発作った。内一発を自分のライフルに込めた。

 障壁を跳躍するかは後回しだ。

 僕は前列にいる一体に的を絞った。

「行けッ!」

 胴鎧を貫通されたミノタウロスが動かなくなった。見る見るうちに身体が白く凍り付いていった。仲間に押し倒され、氷像と化した骸はバラバラに砕けた。

 手答えがあった。これだ、と。

「ナーナ」

「完成したのです」

 手応えを感じたのは僕だけではなかったようだ。ヘモジもリオナも調整済みの物を欲しがった。

 リオナに弾速だけを上げたミスリル弾を渡した。

 ヘモジは一回休みだ。



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