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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第15章 踊る世界
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時を待つ日々(ケバブは終わらない)34

 そんなわけで僕とリオナは別荘に。

「なんでお前たちが……」

 テトたちだけでなく、タンポポたちが我が家の居間で待ち構えていた。

「村のみんなからお使い頼まれたの。一緒に連れてって!」

 保管箱を背負子に背負ったタンポポが言った。

 マルローもケッチャもモモイロも…… さすがにチッタとチコはどん引きしている。

 お前ら…… 歩荷(ぼっか)か!

「村中か?」

 子供たちが一斉に頷いた。

「この町にも店あるだろ?」

「本場がいい!」

 確かにこの町に比べれば砂漠に近いけど…… できたての観光地に本場はないぞ?

「何ごとも経験だろ?」

 こんな時だけ……

「若様!」

「兄ちゃん!」

「お金もう預かってるし」

 僕の所にはこの手の陳状しか来ないことになっているんだろうか?

「しょうがないな」

 ここで断わっても勝手に行くだろうしな。騒動になっては大変だ。

「背負子は降ろして、ちょっと待ってろ」

 村中の子供たちの依頼となれば、でかい保管箱が必要だ。

 僕は地下に降りて、使っていない保管庫を探した。

「先に行って、お店に知らせてくるのです!」

 階段の上から声がする。

「俺も行く!」

「俺も!」

 どうやらリオナとピノとマルローが先行するようだ。



 さすがに苦情を言われた。予約して出直してきてくれと懇願された。

 仕方がないので何人前だか、何百人前だか、今できる分だけでもと無理を言って買ってきた。

 別荘にあるもう一軒とミコーレにまで立ち寄って、なんとか約束の分を確保した。

 リオナも王様たちへの土産分は確保したようでほっとしていた。

 町にもケバブ屋はあるのに……



 まさかこんなに忙しいことになろうとは……

 保管庫を食堂に降ろすと、ソファーに腰を落とした。

「明日、四百人分頼んでおいたけどどうする?」

「どうするって?」

「持てないじゃん!」

 人が奢ってやるといったら、返金が面倒臭いと言って、明日の分を注文しやがった。

 チコを入れて十人で一人四十人前を背負うのは容器の重さだけでもつらかろう。公共ポータルで一般人扱いだから帰りは一人前の料金取られるしな。

「飛空艇使わせて貰う?」

「魔石代、幾ら掛かるの?」

 聞くな。使うなら別荘行きの振り子列車使え。赤字だろうが。

「兄ちゃん!」

 はー、その選択肢しかないだろうな。

「時間は指定してあるんだろうな?」

「お昼前に」

「十一時半!」

「取ってきてやるよ。中庭で待ってろ」

「若様、大好き!」

「助かったぜ、兄ちゃん!」

 こら抱きつくな! 男はいらん!

「でも、このままじゃ、この町のケバブ屋に恨まれるんじゃないですか?」

 呆れながら話を聞いていたロザリアが言った。

「大丈夫だよ。毎日どれだけ貢献してると思ってんだよ、姉ちゃん。全国売り上げ一位だぜ」

「え?」

「そうなの?」

「それに味見したいって言い出したの店の主人だから。お金も預かったし」

 ケッチャが持ち帰った料理を早く食べたくて、ソワソワしながら言った。

「知らなかったんですか? この町の肉の消費量も来年は王都を抜くかもしれないって言われてるんですよ」

 マルローが言った。

「因みに『アシャン家の食卓』は飲食店売り上げ全国三位だよ」

 モモが言った。

「お前ら、食い過ぎだろ?」

「普通だよね?」

 タンポポと相槌を交わした。

「他の獣人村に比べたら、バランスのいい食事してると思うけどな」

 でかい連中は食べる量も量だからな。たぶん酒の消費量もゴリアテ並みなんだろう。

「でもさ、そろそろ新しい肉料理が欲しいよね」

「若様、もう変な肉、獲ってこないの?」

 タンポポが言った。

 変な肉というのはクラーケンとかイフリートのことか?

「お前ら間違ってもゾンビの肉は食うなよ」

「食わないよ!」

 一斉に言い返された。

「アハハハハッ」

 アンジェラさんに馬鹿笑いされた。

「用意できたよ。友達を呼んでおいで」

 配達するのが面倒なので、中庭まで出向いて貰おうということになった。中庭で食べるもよし、家族に持ち帰ってもよしだ。

 結果、中庭は家族で大賑わいすることになる。

「悪いな、騒がしくて」

 居場所を取られたチョビとイチゴに言った。

「楽しいのは好きですから。気になさらないでください、ご主人」

「お肉が辛い気がします」

「そういう料理だからな」

 料理をこちらが提供するわけではないので気楽なものである。

 食べた家族は来られなかったご近所にも配ってくれるようなので配達の手間が省けた。


「やっぱり店ごとに味が結構違うものだな」

「そうですね。これは新しい発見です」

 エミリーが言った。

 中庭で給仕をしていて、昼食を取るのが遅れた面々がテーブルに着いていた。

「この町の味はマイルドですね」

「この国ではきつい料理は余り流行らないからな。香辛料も控えめで臭みも消してある。慣れればこの臭みが美味しいんだけど」

「どこでも同じ味だったら旅をする意味がないのです」

「そうね。お茶入れますね」

「そう言えば、ヘモジとオクタヴィアは?」

「そう言えば朝、温室に行ったきりなのです」



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