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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第15章 踊る世界
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時を待つ日々(収束)30

 どこから出てきたという顔をされた。

 しまった…… いつもの調子で転移してしまった。

「ありがとう、姉さん」

 咄嗟に誤魔化した。

 老兵たちは「ああ、筆頭補佐が迎えのゲートを出したんだな」と勝手に解釈して疑問を呈することを廃棄した。よくよく考えればどちらも同じことをしているのだが、信頼の差かなと理解しておく。

 常識はずれの許容範囲を信頼と呼んでいいものかは置いといて。

 早速テトが船の補修の仕方を、ピノが外装の点検の仕方を指導していた。

 はっきり言って老人たちにピノのような軽業は無理だ。ゴンドラを降ろせ、ゴンドラを。

 一方、姉さんは頭を抱えていた。

「告死蛇如きに遅れを取るとは」

 見つかったこともさることながら、一撃を容易く食らった点だ。周りが見えていなかったのだろう。

 子供たちの探知能力を当て込むにしても、反応し、行動に移せなければ意味がない。

 操縦桿をテトが握っていれば咄嗟に回避したかも知れないが、操縦もままならない初心者に期待はできない。むしろなぜ探知されたのか? それを考える方が先ではないのか?

 目がないのだから、視覚ではないことは確かだ。やはりアンデッドということは生命探知に引っ掛かったと考えるべきだろう。

 地上にいたこっちが狙われなかったのは単に地盤が固かったからだ。長い間ドラゴンを閉じ込め続けた地層であったが故だろう。

「呼んでる」

 オクタヴィアが僕の頬を叩いた。

「ん?」

 外装の修理をしていたテトが呼んでいた。

「どうした?」

 僕は甲板の手摺りから下を見下ろした。

「鏡像物質を一旦見えるように加工して貰えって、レジーナ姉ちゃんが」

 ああ、そう言うことか。

 錘に使っている金を取りに格納庫に下りた。

 甲板に戻ると損傷箇所に下りて、持ってきた金を鏡像物質の外装パネルに混ぜ込んでいった。

「おおっ!」

 目に見えていた以上にごっそり剥離していた。

 やはりある程度の隙間は力場のようなもので補正されていたようだ。庇いきれなかったエリアだけが目視できたのだ。

 僕は予備の鏡像物質を取りに格納庫の資材置き場にまた戻った。二度手間だった。

 見本のパネルを見ながら、同じ型に仕上げていく。返しが付いていてそこにボルト用の穴が空いていた。外装本体にも網目状の溝があってそこにはめ込んで、裏から固定する仕組みになっていた。パネル自体に強度はないので、装甲板特有の重量感はない。

 それを受け取るとテトと、バディを組んでいた老人は外装に下りて張り替え作業を始めた。二分の一メルテ四方のパネルを十二枚交換することになった。

 破損したパーツは僕が回収して塊に戻しておいた。


「いやー凄かったね」とロメオ君が操縦室から出てきて言った。

 僕はヘモジを肩車しながら周囲警戒と言う名の遊びをしていた。

「タイタンってあんなに機敏に動くんだね」

「僕も驚いたよ。タイタン部屋でもあんな動きをすればいいのに」

「こっちが困るけどね」

「ナーナ」

 僕たちは笑った。

「武器は拳だけなのかな?」

「後で調べてみるよ。『切り込み隊長』は装備したままだもんね。こっちにも武装があると思うんだけど…… 拳だけじゃ心許ないよね。いつものミンチハンマーがあればもっとスマートに戦えそうなのに」

 修理に勤しんでいたテトから声が掛かった。

「若様、あれ見て!」

 テトがトンカチで遠くを指差した。

「うわっ、森が移動してくる」

 エントの集団だった。

 どうやら不幸の震源地の様子を見に来たようだ。

「すまん、急いでくれ」

 テトは頷いた。

「手伝おうか?」

 ロメオ君が声を掛ける。

「平気。もうすぐ終わるから」

「じゃあ、先に操縦室に戻ってるよ」

「了解ー」

 ロメオ君は戻っていった。

 代わりにアイシャさんがオクタヴィアを肩に載せてやって来た。

「酷い目にあった」

「すいません。不測の事態で」

「それをどうにかするのがお主じゃろ?」

「向こうの動きの方が早かったんですよ。まさか船が見えてるとは思ってなかったもので」

「熱じゃ」

「熱?」

「熱探知じゃ。告死蛇は蛇と名が付いておるじゃろ? アンデットとしての生命探知能力の他に、熱を探知するセンサーでもあるんじゃないのか?」

 なんだ、冗談か。

 本当かと思った。

 さすがに検証できる相手ではないのでこの件は当分闇のなかだ。


 補修が済んだところで、船は動き出した。まだ浄化作業が済んだわけではい。震源地から半分を浄化しただけだ。残りの半分も浄化しなければならない。

 僕たちは残りの『眩しい未来を貴方に! (仮)』をすべて投下した。

 それでも足りない分は『楽園』に放り込んでおいた魔石を加工した。

「まさか、全弾使い切るとは……」

 魔石(大)を幾つ使ったんだ?

「戻ったら特大集めするかな」

「そうだ。パスカル君たち、この間火鼠狩ってたんだよな」

「ナーナ」

「次の火蟻フロア同行させて貰おうか」


 要塞に戻ってきたときにはすっかり夜になっていた。

 汚染した土をどうするかは今後の議題だそうだが、エントがなんとかするだろうというのが姉さんやエテルノ様の考えのようだった。



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