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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第15章 踊る世界
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時を待つ日々(やっぱり遠足は演習だった)27

 翌朝、姉さんの入れた紅茶の香りで目が覚めた。

「スコーンか」

 シンプルな朝食だな。ラウンジでくつろいでいた。

「ファイアーマンにゴーレムを用意するそうだな」

 姉さんが尋ねてきた。

「エテルノ様がね。ロックゴーレムを」

「扱えるのか?」

「召喚できなきゃ、ダウングレードかな」

「お早う……」

 リオナが寝ぼけながら下層の食堂に向かった。

「今日は厄介な連中を排除して貰うぞ」

「タイタンを持ち出すに値するような相手がいるわけ?」

「エントだ」

「樹人?」

「そうだ。ユニコーンと同じで聖獣扱いされてる奴だがな。ベヒモスと同じだ」

「呪われた?」

「それも一体じゃない」

「コロニーごと?」

「それって正式な依頼だったりするの?」

「こっちへ」

 窓のある所に誘われた。

「あの山の向こうに樹海がある」

「あんな所まで行ったの?」

 遙か先の霞んだ山だ。

「魔物たちにとっては目と鼻の先だ」

「飛空艇で?」

「なんのためにテトたちを呼んだと思ってる。今回は隠密船のテストフライトも兼ねてるんだ。しっかりこちらのスタッフを指導して貰うぞ」

 しまった。テトたちも一緒だから気楽な遠足だと思ってた。

「それはいいけど。エントの呪いっていうのは? 原因は分かってるの?」

「アンデットだ」

 土地が汚れたんじゃないのか?

 呪いを振り撒くアンデットなんて……

「確かにゴーレムなら呪いとは無縁だけど」

 それって相当物騒な相手なんじゃないのか?

「むしろ本命はそいつの討伐だ」

「そいつ?」

「単独犯? まさか死霊の類いじゃないよね?」

「ゾンビだ。それも羽があって尻尾がある」

「!」

「生前はブレスも吐いていただろうな」

 食堂から子供たちの叫び声が聞こえた。

「悪いな。誰か僕の朝食、持ってきてくれ」

「分かった!」

 ピノが吹き抜けに顔を覗かせた。

「聖騎士団に頼む…… 駄目だ。騎士団は今西方だ」

「ベヒモスを浄化したその腕でなんとかして貰おう」

「なんとかって…… 報酬は?」

「お前が最初に作った特殊弾頭の解禁だ」

「え?」

「障壁貫通弾?」

 姉さんは頷いた。

「それって対抗策ができあがったってこと?」

「そうだ。通常障壁に転移障害を加えた物を標準化した。今後、各騎士団の標準結界に採用されるだろう。いずれすべての基本結界と入れ替わる。町の結界には元々組み込まれているから大した変更ではないがな」

「ただし、A級冒険者以上にのみ供給される。お前たちは例外だ。そもそもなんでお前たちがB級なんだ?」

「冒険者ギルドに余り貢献してないので」

「マリアが愚痴るわけだ」

「マップ作成とか結構貢献してるんだけどな。ポイントになんないんだよね」

「オープンにできないことばかりしてるからだ」

「まあ、それはある」

「それでドラゴンゾンビは倒せそうか?」

「ファビオラの弟の一件で一度。姉さんもいたでしょ? ほら暗黒竜の――」

「ああ、そうだったな」

「そのときの記録なら教会にありますけど、取り寄せましょうか?」

 ロザリアが朝食を済ませて上ってきた。

「改ざんされた物などいらんだろ。できればそれ以前の記録が欲しいな」

 戦闘に関しては嘘は記録してないはずだけど。

「本来教会の仕事ですから急がせます」

 ロザリアは上ってきた階段を降りていった。

「エントもいるんじゃ、ベヒモス戦で使った『眩しい未来を貴方に! (仮)』も用意しておくか。『聖なる光』で充分だと思うけど」

 持ってきた魔石だけじゃ足りないか。

「ロザリア、宝物庫の僕の棚から光の魔石を…… 僕も行こう」

 ロザリアひとりでは持ちきれない。

 僕は朝食もそのままに、ポータル経由で家に飛んだ。


「便利だ」

「なんだか別荘って気分じゃなくなるわね」

「移動する時間こそが世界の広さを認識させる重要なファクターということだろうな」

「じゃ、そっちは頼んだ」

 仕事をするのは護衛のナナシさんたちだろうけど。

 僕はアンジェラさんとおざなりな挨拶をして宝物庫に潜った。

「光の魔石は余り使わないから在庫がないんだよな」

 呪われたエントがどれくらいいるか。一発で足りると思うけど、砂漠と違って光が通らないからな。汚染範囲が広かったら……

「なんだかんだ言って僕の持ち出しなんだよな。僕の領地に影響あることだから仕方ないけどさ」

 全部で九個しかない。一つ作るか。

 特大が手に入ればいいんだけど、光属性の大物っていないんだよな。

 やっぱり作るしかないか。

 各属性の魔石(大)なら売る程あるからな。四属性合せて、光の魔石(大)を一つ作る。

 圧縮して…… これで一つ作れるな。

「やっぱり魔石集めはサボっちゃ駄目だよな」

 特大を両替しただけなんだけど。

「うーん。この際十発ぐらい作っておくか」

 今は時間がないから移動中にでもやるか。

 僕は『楽園』に各属性の魔石(大)を百個ずつ放り込んだ。

 薄い報告書を手にしたロザリアと合流すると、僕たちは別荘に戻った。


 僕はひとり冷めた朝食を取る。

「投入した人員は聖騎士団百名――」

 ラウンジで姉さんは教会の昔の報告書の頁をぺらりとめくる。

 そういや暗黒竜のネーロはファビオラとうまくやってるのかな?

 ああ、あの馬鹿弟も年期が空けたか……

「装備は一昔前の物だな」

 魔法付与が発達していなかった、材質特性のみに依存していた時代の討伐資料だった。

 結界がまだ魔法使いだけのものだった時代の。

 当時はまだ魔法使いが防御担当と攻撃担当に別れて特化していた時代だ。当然、一部隊の編成も今とは規模が違う。

 百人のうち二割は結界防御と回復、付与担当だ。

 呪いと戦うにはさらに高等聖魔法が必要だった。

「我はドラゴンゾンビの相手はしたことがないからの」

「霧のブレスを吐くのです。魔力を吸い取られるのです」

 その辺は『魔獣図鑑』にも載ってる基本情報だ。

「あれは厄介だよな。近接泣かせもいいところだ」

「問題は汚染されたエントの数だな」

「元々少ない種だからついでに浄化できればいいんですけど」

「山の陰に入られると面倒か」

「なるべく高い位置で『眩しい未来を貴方に! (仮)』を炸裂させてやれば、多少違うんじゃないか?」

「いい加減、その名前なんとかしなさいよ。いつまで(仮)付けてるのよ」

「売り物じゃないんだからいいだろ?」

「その内教会が欲しがるわよ」

「だったら教会に決めて貰うよ」

「じゃあ、行くぞ」

「こんなことなら零番艇持ってくればよかったね」

 チコが言った。

「結界自体は同じ物を積んでるんだぞ」

「馬力が違うよ。あっちの加速ユニットは絶品なんだから。制御ユニットだって徹底的に調整したんだから」

 テトが言った。

 魚のエラか。確かにあれは凄い。

「隠密船の性能がどの程度か、知るいい機会だ」

「でも、第一・五世代にこの人数は多過ぎない?」

「元々あの外装を支える必要があるからな。ブラックボックスを積んである」

 飛行石か。結構金掛かってるな。

「居住性は比べるべくもないがな」

 敵の攻撃が届かないところに浮かんでいられるのなら問題ない。

 むしろ問題は死んだドラゴンの探知能力がどうなったかということだ。

 魔力探知能力は健在か?

 アンデット特有の生命探知に移行したのか?

 あるいは両方。

 隠密船の隠遁能力が意味を成すのか、否か。

 あのときは気にもしなかったけど。


 アレだけ騒いでたヘモジもゾンビと聞いてすっかり鳴りを潜めた。

 死肉をミョルニルで叩きたくないのだろう。

「ナナーナ」

 何が『実験最優先』だよ。現金な奴だな。



また大ちょんぼだ~ ドラゴンゾンビとは既に戦ってた模様。取り急ぎ改訂版。

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