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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第15章 踊る世界
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時を待つ日々(要塞を見に行こう)23

 雪が降り積もるほどに月日は流れ、ひよこのお尻のようにお尻の膨らんだつなぎを着た子供たちがソリのコースに溢れ出した。

 僕はなるべく近づかないように心掛けた。

 この冬には『神様の腰掛け』の西にスキー場を完成させる予定だったが、それどころではなくなってしまったので、去年と同じ場所に子供が遊べる程度の簡単な滑走コースを造っていた。


「た、助けるのじゃ…… し、死ぬ……」

 戦闘では無敵のエテルノ様もあのソリのコースには耐えられなかったようだ。

「いかれておる……」

 同感だ。

「ソリも少しずつ進化してるみたいですよ」

 別荘に向かう準備をしているロメオ君が言った。

「死人が出ないことが不思議でならないよ」

 別荘に宿泊ついでに、今日はみんなで要塞見物である。

「ちゃんと考えているのです」

 獣人の反射神経に付いていく人族の子供たちも大概だよな。

「準備できましたよ」

 パスカル君たちが泊まりの準備をして居間に集まってきた。

 今回も別荘の外に出る予定なので、フル装備装も忘れずに。ゴーレムを実戦投入する予定である。

「ウィスプはスルーで」

「!」

「どんなとこだよ?」と先輩たちは青ざめた。

 災害指定されたウィスプが彷徨いていると聞いて行軍コースの難易度を勝手に引き上げた。

「迷宮ほど難易度ないから」

「でもいるんですよね?」

「姉さんもいるから」

 アイシャさんは欠席だけど、エテルノ様はふたり分張り切っていた。

 が、先程撃沈されて戻ってきた。

「これから別荘に行こうというのに、ソリ遊びなんてするから」

「我のせいだと申すか! こんなコース誰が想像するか!」

「長老が正しい」

 同じ被害に既に遭っているパスカル君たちも頷いた。

「癖になるけどな」

 ファイアーマンだけは例外だった。

「今年は大会も開く予定なのです。名付けて『子供早滑り大会』なのです」

 別の意味で滑ってるぞ。

「普通じゃな」

「じ、じゃあ、『一等賞品、ブルードラゴンの肉、子供早滑り大会』!」

「凄いけどなんか違う」

「普通に『子供ソリ大会』でいいじゃないですか」

 ふかふかの帽子を被ったロザリアが言った。

「きゃー、その帽子可愛いーッ」ということになって話題が逸れた。

「ブルードラゴンの肉は駄目ですか?」

「ナーナーナ」

「『マンダリノも付ける?』だって」

「冗談言ってないで行くぞ」

「遠足は楽しいのです」

「ゲート潜るだけじゃない」

 ナガレが主に突っ込んだ。

 振り子列車では定員オーバーなので、ロメオ君とエテルノ様のゲートキーで観光客として入場する。



「おー、ここが最寄り駅か!」

 ガラス窓にファイアーマンが張り付いた。

 僕たちはスプレコーン発の振り子列車の駅の玄関口から少し離れた上階のポータル部屋にいた。

 その部屋からはホームから出てくる人たちが見下ろせた。

「なるほど」

「これであなたは特別な招待客ですよ」という演出をするわけか。

 列車の到着を待つ人たちの列を見下ろすだけでも専門の旅行業者を通した甲斐があると思わせられるわけだ。

 ぼくたちはロメオ君に付いて外に出た。

 さすが砂漠の東、山間だが雪がない。むしろ快適だ。

「暖かいのです」

 縮こまった筋肉がほぐれていく。

「中型艇が飛んでるな」

「ドラゴンを空から眺める観光ツアーじゃ。行って帰ってくるだけで銀貨十枚じゃぞ」

「何かあったときの保険も入ってるんでしょ」

「少し来ない間に随分商売っ気を帯びたわね。もっと静かな場所だったはずなのに」

「寂しいよりいいのです」

「じゃ、跳びますよ」

 僕たちはゴーレム工房に跳んだ。

「うわぁああ!」

 パスカル君たちは驚いた。目の前に巨大なゴーレムが横たわっていたからだ。

「な」

「造ってるとは聞いてましたけど、まさかこんな大きなゴーレムを造ってたんですか?」

「パスカル君たちはまだタイタン見たことないんだっけ?」

「た、タイタン!」

 腰を抜かしそうだな。

「まずは荷物を下ろそう」

 工房にあるゲートから別荘のなかに跳んだ。

「……」

 先輩たちは唖然としながら吹き抜けを見上げた。

「前と同じ部屋でいいんですか?」

「夜にはピノたちも来るから、あいつらの部屋以外なら好きにして構わないよ」

 パスカル君たちは前回同様二階層の四人部屋を選んだ。

 アルベルトさんはそのまま男子と合流し男子部屋に、ナタリーナさんとシモーナさんは女性陣の部屋の隣りの部屋を選んだ。

 ピノたちの部屋は三階層の落ち着いた木目調の部屋なので問題はない。

 僕たちは普段使っている最上階の部屋に収まった。最上階には余った部屋がないのでエテルノ様はアイシャさんの部屋を使うことにした。

 レオはさすがにピノたちと相部屋とはいかないので僕と相部屋にした。アイシャさんが一緒なら相部屋でもよかったのだが、相手がエテルノ様ではいくら気さくとはいえ、落ち着かないだろう。

 空き部屋からベッドを一つ調達して僕の部屋に入れた。元々客室並みの調度品しかないし、ベッドは『楽園』に放り込んで運ぶだけなので気楽なものである。

 先輩たちは目下、天然のアースドラゴンに見入っている。


 荷物を置くと早速、外に繰り出した。

 目的の一つ、建造中の要塞見学である。



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