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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第15章 踊る世界
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時を待つ日々(憂さ晴らしはやり過ぎぐらいがちょうどいい)21

「結局こうなるのよね」

 断絶するポイントに向かっている船のラウンジでロザリアが呆れた。

「なんかさ、手のひらで転がされてる感ありありだよね」

 ロメオ君まで。

「ちゃんと見返りは貰えるんだからいいだろ。納税者の長者番付から外して貰えるんだぞ」

「その分お布施ができるわね」

 それはしろという意味ですか?

「それで何を落とすんですか?」

 ダンテ君が聞いてきた。

「これなのです」

 リオナとピノ、ナガレがちょうど抱えるようにして大きな玉を持ってきた。

 それは対ベヒモス決戦兵器『眩しい未来を貴方に!(仮)』を光の魔石ではなく、普通の属性で改めて造った物だ。火、水、風属性の物をリオナたちがそれぞれ持っている。

 皆、無言で見ている。次の一句を待っているようだ。

「巨大鏃なのです。丸いのは愛嬌なのです」

「鏃自体は八面体だよ。巨大な魔石だとばれないように土で覆ってるんだ」

 だから見た目はただの土の玉なんだけどね。

「念のため雪を溶かしたり、山火事を消したりするために持ってきたんだけど。直に叩き込むことになろうとはね」

「これでよかったですか?」

『衝撃波』と書かれた札を僕に見せた。

 僕は頷いた。

 ドラゴンタイプのタロスにはブレスがあるから、山火事になる危険性が高い。水流系だと足元が緩くなるので、一発鎮火を狙って造ったのだが……

「確信犯なのです」

「違うから!」

 まったくもう。言い訳考えるの大変なんだからな。

『目的のポイントが見えてきたよ』

 投下地点に到着したようだ。

『通信が来ました。退避状況を確認する、だそうです』

 味方を巻き込むわけにはいかないからな。

 随行してきた第三師団の飛空艇から発煙弾が執拗に打ち上げられた。

 特に北側に。撤収命令である。


「それってどれくらい威力があるんですか?」

 格納庫で出番を待つ間、暇つぶしの会話のなかでパスカル君が聞いてきた。

「このなかには巨大な魔石が入ってるんだよ。凝縮した奴がね。魔石(大)が四十個分ぐらい?」

「えええ?」

 すいません、鯖読みました。光の魔石を作るときは四属性必要だったから圧縮したりして、四十個使ったけど、今回は一属性なので十個しか使ってません。

「直径千メルテの湖ができるよ」

 笑いながらロメオ君がしれっと僕の嘘に付き合った。

 地盤と相談だ。堆積地のようだから岩盤は深そうだけど。でかい魔物もいるから浅いと意味がない。

『許可来ました』

「落下地点の再確認」

「間違いありません!」

「投下するぞ」

「足元、開きます」

 床のハッチが手動で開いていく。

 結界で囲んでいるとはいえ、冷気が吹き込んでくる。

 ロメオ君とパスカル君と物見遊山な連中が身を乗り出して遙か先の足元を覗き込んだ。

「うわっ、高ッ!」

「投下するぞ! カウント開始、十…… 九……」

 皆食い入るようにこれから吹き飛ぶ大地の最後の姿を見詰めていた。

「三…… 二…… 一…… 投下!」

 鏃はほぼ真っ直ぐハッチの枠に収まったまま降下していった。

 そして一瞬の間……


 爆発した!

 地面が土砂を巻き上げた。

「衝撃波が来るぞ!」

 結界を叩く猛烈な衝撃が来る。

 皆、悲鳴を上げるが、その瞳は同心円状に広がる衝撃の波紋を追い掛けていた。

 視界が晴れると抉られた大地が姿を現わした。

「被害甚大だね」

 大穴の周囲の木々は土砂崩れに遭ったかのように薙ぎ倒され、大量の土砂のなかに埋まっていた。

 干上がった渓流に流れが戻ってくると、大穴に各所から流れ込み始めた。

 地肌が剥き出しの黒い半球は想定通りの大きさを確保した。周囲の河川の水が溜まるにはもうしばらく掛かりそうだ。

「次――」

 パスカル君たちは呆然と立ち尽くしていた。

 上の階も静まり返っていた。

「ナーナーナ」

 ヘモジの声だけが聞こえる。

「金貨二千枚……」

 パスカル君たちは高額に見合った威力の鏃にぐうの音も出なかった。

 こんな物を安くポンポン使われたらたまらないだろ?

「妥当な値段だね」

 ロメオ君は四倍鯖を読んだ金額を妥当と言った。

「よくよく考えると僕たちの税金分より高いよね?」

「どうかな? 今年はドラゴン狩りまくったからな」

「後一発ぐらいにしとかないと赤字だよね」

「本番でけちる?」

 僕とロメオ君の会話に皆付いて来られない様子だった。

 税金だけで金貨数千枚を超えるわけだから、収入は推して知るべしである。

「別世界だ」

 パスカル君が呟く。

「君たちの内職の稼ぎだって、一般人からしたらもう既に別世界だろ?」

「そりゃ、そうですけど」

「ただ発明と破壊はセットになり易い。売る相手は選ばないとな」

 材料費的には四倍鯖を読んでいるので、実際は儲けが出るはずである。差額は技術料ということで。

「向こうの船も今頃、動揺が走っとるじゃろうの」

「いつも通り、ハイエルフの秘術ということで」

「お主と一緒におるとハイエルフの株が上がって仕方ないの」

「実際、術式はアイシャさんから教わったハイエルフの秘術ですからね」

「ならそういうことにしておこう」

「テト、移動すると打診しろ」

『了解』

「じゃ、移動中に間食するか」

「やったーっ」

 ピノたちは飛び上がった。

「デザートは?」

「プリンとシュークリームとアップルパイとバウムクーヘン、タルトにビスケット、後マンダリノ」

「どれだけ持ってきてるんだよ」

「だって泊まりだろ」

「そりゃそうだけど」

「三食デザート付きなのです」

 向こうの船から戻って来たときの宰相の顔が見物だな。きっと焼き肉パーティーもするだろうし。

「テト、何がいい?」

『アップルパイで』



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