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マイバイブルは『異世界召喚物語』  作者: ポモドーロ
第15章 踊る世界
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時を待つ日々(最前線ちょい後方)19

 全員が乗り込むと僕たちの船は北を目指した。

 隣接するのは聖騎士団の統治エリアだが、尾根が高くて西側には抜けられない。当初北側から回り込むルートを模索していたが、一向に埒が明かないので、南の火竜の巣の北側、尾根の若干低いルートを空から進攻して今に至る。

 現在、北軍の後退に伴い、北の尾根を回り込む形で本隊が北西に進攻を開始している。

 決戦場は恐らく聖騎士団の行く先にある平原である。

 第三軍の正面、北軍の南西が恐らくタロスの出現ポイントになる。どちらも現在尾根を越えることができていない。

 北の尾根はあってないような丘でしかないのに。進攻のし易さでは敵も同じなのでこれまで苦戦を強いられていたのだそうだ。が、現在の最大の敵は平原を吹き荒れる吹雪に変わりつつあった。魔物たちは挙って南下しているので、ゴールは一番早くなりそうなものだが、やる気があるのかないのか。

 おかげで第三軍は北軍に引っ張られる形で前線が斜めに、北西を向いた状態で展開されている。

 前線が間延びするなど、戦略上あってはならない状況だが、かと言って、正規軍が遅れるわけにも行かない。北と西、二方面に展開するだけの戦力もなく、結果、斜めに間延びするしかない状況なのである。

 ダンディー親父はさぞ胃の痛い思いをしていることだろう。

 来月になれば諸国連合が合流し、第二軍も合流することになっている。それまでに北軍の尻を叩いて進行を早めなければならない。

 まったく、討伐エリアを狭くして貰ったというのに北は何をしてるんだか。

 宰相の視察の一番の目的はその間延びした前線のどうしようもなさの確認だったりする。

 飛空艇は聖騎士団の最前線の駐屯地を越え、一路、第三軍本部を目指した。


 山の険しさはなくなっていくのに、前線がどんどん後退していくのが見て取れた。

 そして第三軍の旗が棚引く、前線の砦がようやく見えてくる。

 こちらにも聖騎士団の旗が揚がっている。こちらは救護班がメインだろう。

「南部の前線から一時間遅れか……」

 ロッジ卿が大きな溜め息をついた。

 空の移動で一時間だから、これが雪のなかを行軍してとなると一日では到底合流することは叶わない。穴の出現ポイントによっては最初の数日間、第三軍が孤軍奮闘する必要が出てくるかもしれない。

 北側にずれないことを願うしかない。南側なら余裕で包囲戦が可能になるのだから。

 まあ、この辺りに諸国連合と第二軍の本隊がひしめくことになるだろうから、後半の追い上げは期待できるが、そのとき北はどうするんだろう。

「信号弾確認!」

「え?」

「着陸拒否されました……」

 チコとチッタが困った顔をした。

「作戦行動中だって」

 ピノが付け加えた。

「作戦?」

 探知スキルを働かせて森のなかを見回すと、なるほど大部隊が西方面に展開している。

「援護する?」

 オクタヴィアが呟く。

「宰相を普通袖にするかな」

「弟君……」

「一番偉い人があそこにいるからなのです。留守番では接待できないのです」

「盗み聞きすんなよ」

「ふざけた理由だったら、間違って大型鏃が落っこちたところなのです」

「味方殲滅してどうすんだよ」

「取り敢えず急いだ方がいいんじゃないかな?」

 前線が魔物の群れに押され始めた。

「第三軍にも飛空艇があるはずじゃろ?」

「斜め方向を飛び回っておるんじゃろ」

 そうか、延びきった戦線を維持するためには機動力が必要か。

「肝心なときに援護がなくてはの」

「タロス戦大丈夫かな?」

 パスカル君が素朴な疑問を呈した。

 みんな溜め息で答えを返した。

「じゃあ、みんな、上空から援護するぞ。テト、北側から迂回して蹂躙するぞ」

『了解! 戦闘モードに移行します。障壁レベル…… よし。加速装置、起動します』

「バリスタ使っていい?」

 ピノが聞いてきた。

「いらないのです。敵は小者なのです」

「試し撃ちいつできるの?」

「ドラゴンクラスが出たらな」

「本番まで撃てないじゃん」

「いいことなのです」

「味方も大勢いるんだから」

 すごすごと後部の狙撃室に入っていった。

 そのときだった。

 全員が一瞬、黙り込んだ。

「ピノ、一発だけ撃っていいぞ」

『一発だけ?』

「外したら魔法で殲滅するからな」

『しょうがないな』

『進路変更!』

「第一級戦闘態勢! 全員、配置に就け!」

 船が大きく旋回した。身体が浮き上がる。

「何が起きたんだね?」

「ちょっと、大物が釣れたので」

「大物?」

『敵影確認! 何あれ?』

 監視部屋からピオトが声を発した。

 望遠鏡で確認する。

「ガルーダだ」

「こりゃ大変じゃ」

 まったくだ。

「転移してくるぞ! 警戒怠るなよ! 一気に来るぞ!」

「ガルーダだって?」

「転移って?」

 学生たちが目を丸くする。

『魔獣図鑑』の最新版を見るように。

「最近、発見したのです。あいつら転移してくるのです」

「テト、振り回す準備しておけよ」

『了解』

「そろそろじゃぞ」

 雲に入った途端、忽然と姿を消した。

「来るぞ!」

 魔力が増大すればそこが出現ポイントだ。

「後方! 上だ! ピノ!」

『機首下げ、反転させるッ!』

 テトが叫ぶと同時に、船はピノが撃ちやすいように機首を下げながら反転ロールした。

「来い!」

 大きな影が突然、姿を現わした。

 ナガレの雷の網に掛かった。

『バリスタ発射!』

「あ!」

『え? 何?』

「近過ぎる」

『推力全開!』

 ドーンっと衝撃が船を襲った。ピリピリと船体が揺れた。

『撃墜した!』

 ピノが叫んだ!

 ガルーダが煙に巻き付かれながら地上に落ちていく。

「生死の確認を――」

「もう死んでるよ」

 チコが言った。

 リオナも頷いた。

『救援に向かいます』

 船体を起こして、天地を戻す。

「船体に異常は?」

『上は異常なし』

 ピオトが言った。

「左舷異常なし」

 ファイアーマンが窓から頭を出して言った。

「右舷も問題ないわ」

 シモーナさんが言った。

「またガルムなのです」

 地上部隊はガルムの襲撃を受けていた。

 一斉に銃砲が轟いた。

 一体が雪のなかに沈んだが、敵の包囲は完了していた。後は蹂躙を待つばかりだった。



1000話到達。祝辞ありがとうございます。

投稿が遅れがちですが、今後ともよろしくお願いします。m(_ _)m

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