表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/34

第5話 喚んでないよ、センゴクさん!

 



 営業の外回りで、センゴクが道を歩いていると。


 道のど真ん中にある光の門に吸い込まれそうな少年を発見した。

 

「ううっ! ちょ、何だよこれ。だ、誰か助けて!!」


 だが少年の声は周りの人間には届いてない。

 誰も彼もが少年の横を素通りしていくばかりだった。

 だが、無視しているという感じではなかった。


「誰にも見えていない? 俺だけかよ」


 センゴクは、正義漢ではない。助ける義理も無い。

 だが、目の前で必死に助けを求めて手を伸ばす、そんな姿を見せられたら。


「誰だって、助けたくなるよなぁ。コード・アクセス!」


 センゴクは加速の魔法を使い、地を蹴った。

 少年が光に飲み込まれそうになる寸前にセンゴクが伸ばした手が、少年の手を掴んだ。


 しかし、光の吸引力は並みではない。センゴクも、少年と一緒にのみこまれてしまいそうになるほどだ。


「うっ、ぐう、君、この手を離すなよ!!」


「は、はい……!」


 いたいけな少年がこんなに苦しそうにしている。センゴクの胸のうちに怒りがわいてきた。


「ふざけやがって、コード・アクセス」


 センゴクは、引っ張り上げる力を魔法で強化した。


「んんんん、そおい!!」


 あまりの膂力に少年の肩が外れたが、センゴクは、少年を光の門から引き剥がすことに成功した。


「ん、っとととと」


 だがセンゴクはバランスを崩し、引き剥がした少年と入れ替わりになるような形で、光の門へと倒れこんでいく。


「お、おじさん!!」


 思わず少年が叫んだ。

 悲痛な表情でセンゴクを案じる少年に、センゴクは笑みを返した。


「大丈夫、俺は魔法使いだから! あ、あと俺はおじさんじゃなくて、おにい――」 


 センゴクが全てを言う前に、センゴクの身体が光の中にすべて吸い込まれていった。

 

 そして光は役目を果たしたとばかりに、すっとその姿を消してしまった。


「あ、ああ……」


 少年はその場にしりもちをついて、呆けるしかなかった。










 


 まぶしさに目がくらむ。ようやく目が慣れてきた頃、光が止んだ。


 センゴクの視界に入ってきたのは、石つくりの壁と、華やかなドレス姿の女性を中央に並ぶ、ローブを着た者達。

 足元を見ると、円の中に六芒星と幾何学模様が描かれた魔法陣らしき図。


「■■■■■■」


 黒いチョーカーを手にした女性が一歩前に出て、にこやかな笑顔で何かを話してきた。

 しかし言語体系が違うのか、内容がまったくわからない。

 英語ではない、中国語や、ハングル、中東の言語でもない。まったく別の体系だ。


 少年、光の門、魔法陣、石造りの部屋、ドレス姿の美女。

 符合するキーワードは、20年ほど前に見た、御伽噺にそっくりだ。


――ああ、これが異世界召喚という奴か。


 魔人(魔法を使う人の略)が、異世界にお呼ばれした。 


「■■■■■」


 女性が、黒いチョーカーを差し出すようにして、何かを話している。

 

――しかしわからん! 女性が何を言っているかさっぱりわからん!


 だからセンゴクは、とりあえず翻訳魔法を使った。

 これでセンゴクの話す言葉は相手に誤法無く伝わり、相手の言葉も齟齬無く聞くことが出来る。


「ああ、もしもし。これでわかるよね」


「まあ!」


――まあ! じゃねえよ。


 ローブ姿の男たちも、驚きにざわついたらしい。


「ようこそおいでくださいました。勇者様!」


 ドレスの女性が、嬉しそうに言った。


 勇者って。勇者って。

 三十歳のおにいさん(・・・・・)捕まえて勇者はねーよと、センゴクは思った。




 

センゴクの怒りが、異世界にこだまする!


次回、怒りのグラビティアクセル! Don't miss it!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ