第4話 破壊と殺戮の魔王
陽射し穏やかな昼下がり。
某国が予告なく、核ミサイルを発射した。
それは怨恨であり、悲願だった。
憎き資本主義国家ども蹴散らすのだと。
わが国が、現代において覇を唱えるのだと。
そんな短慮からだった。
狙われたのは、アメリカにヨーロッパ、ロシア、中東アジア、日本の主要都市だ。
発射されたミサイルには、高度なジャミングが搭載されており、自動追尾による撃墜が不可能だった。
海上で迎撃できなかった各国は、いよいよ決断を迫られていた。
ギリギリ迎撃が間に合ったとしても、都市部に放射線が降り注ぎ、人が住めなくなる。
各国首脳は、保有している核兵器のスイッチに手を伸ばした。
報復のためだ。
押してしまえば最後、第3次世界大戦……いや、そんな言葉など生ぬるい、破滅の道へと人類はひた走ることになるだろう。
脂汗がにじむ。しかし、只でやられるわけには行かない。
国民だって、無慈悲に、たった幾人かの意志で死んでいくのは我慢なら無ないはず。
意を決して指導者たちが、スイッチを押そうとしたその瞬間。
「待ってください! 核ミサイルの反応が……しょ、消失しました!」
その報告は誤報でもなんでもない。
反応どころか、核ミサイルそのものが、消失していたのだから。
すぐさま、各国による連合軍が編成され、某国は制圧された。
もっとも、制圧も何も、某国には銃ひとつとして兵器と呼べるものが消失していて、無血で制圧が完了されたのだったが。
その核ミサイルを消失させた男――センゴクは。
「まったく、安眠妨害だよ」
出先のトラブルで早めに上がったので、公園で昼寝をしていた。
世界はまだ、センゴクの名前を知らない。
ちなみに、消失した核ミサイルが、何処へ行ったのかというと。
異世界・ルーンワールド。
破壊と殺戮の魔王ドラクルーが世界を破滅へと導くべく、永き封印を破り、復活しようとしていた。
「ふははは。我が名はドラクルー、この世界を死と怨嗟の混沌に塗り替え……ちにゃあああああああああっ」
Dimension Transport……DT魔法により異世界から飛来した数十発の核ミサイルが、ドラクルーを祀る神殿ごと、ドラクルーを焼却せしめた。
以後、その一帯は死の大地として、出入りを禁じられたという……。