第2話 本邦初公開、電脳魔法!
某48と名のつくアイドルのセンターのスキャンダル発覚の翌週。
「どやぁ」
「言葉に出してんじゃねえ」
センゴクは、昼の社員食堂で同僚に早速、宣言したスキャンダルの件を報告した。
「今度こそ信じるよな、魔法のこと」
「いや……たまたまだろ」
同僚は、生粋のリアリストであった。
がんばったセンゴクとしては、流石にへこむ。
「ぐへえ。いや、あれは俺の千里眼と念写魔法で取ったスクープなんだぜ」
「最悪の出歯亀じゃねえか」
呆れながら同僚は、漬物のきゅうりをかじった。
センゴクは、視線を動かして七味唐辛子のビンを操り、カレーに振りかけた。その一方で、水を空いたコップの中に念働魔法で注ぎつつ、コンソメスープを飲んでいた。
「あくまであのスキャンダルは、俺の魔法じゃなく、ただの偶然だと言うんだな」
「ああ」
「よしわかった。だったら、今度はうちの会社のことにしよう。情報がまとまったら人事部にいるお前に真っ先に教えるよ。事が事だしな」
センゴクがなんてことのない風に言った。
同僚から、急に不快な汗が噴き出た。
「……ぐ、具体的には」
「専務の不正をつまびらかにする。専務の奴、ライバル企業へうちの技術情報を売って、そのまま向こう側に――」
「今やれ、すぐやれ」
同僚は、カレーで汚れたセンゴクの口を押さえた。
社員食堂にいる間に読心魔法で専務とライバル企業の極秘会談の日時を知ったセンゴクは、その当日、ライバル企業の役員の視覚と聴覚をハッキングした。
センゴクはハックした映像と音声をDVDに焼いて、同僚に渡した。
奥義、電脳魔法である。
同僚は、このDVDを元に調査を開始し、見事専務を退社へと追い込んだ。
専務は表向き、体調不良を理由に退社した。
同僚は、翌年の出世を確約され、その年のボーナスが倍近くに上がった。
後日センゴクは同僚から、デパ地下厳選のスイーツをプレゼントされて、ご満悦だった。