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第17話 神様は未来に生きている

これまでのあらすじ。30歳で魔法使いになった槙島千国は、神々の運動会(代理戦争)、ラグナロックカーニバルへの招待を受けた。

センゴクは参加要綱を見て、天界へ移動する。

 



 神々が住まう天界への入り口は、東京都庁の地下にあった。

 案内マップにも示されていない位置にある都庁職員用のエレベーターは特殊なコマンドを用いることで地下への移動を開始する。


「これ、どちらかって言うと秘密基地って趣きだよなあ、アイリス」


『そうですねえ。天界と言いながら、逆行して地下に入口があるなんて、矛盾もいいところです』


 センゴクの率直な感想に、機能拡張によりタブレット端末を媒介に3Dホログラムにより肩に乗る小人として出力されたハイパーAIのアバター・アイリスが答えた。


 目的階へ到着し、エレベーターの扉が開いた。


 その先にあるのは、扉があるだけの小部屋だ。ドアには、電子ロックの操作盤が備え付けられていた。


 センゴクは、肩掛け鞄の中から封筒を取り出し、その中にあるカードキーを取り出した。

 電子ロックの解除に必要な特別製らしくアイリスでも解析し切れなかった代物である。

 操作盤のカードリーダーにカードキーを読み込ませると扉から開錠された音がした。


「よし、行くか」 


 センゴクは特に気負うことなくドアノブに手を掛け、扉を開いた。


「おお……! イメージとは違うが、これはこれですごいなあ!」


『そうですね、こんなに近未来的だとは思いませんでした』


 ドアの先にあった光景は、バベルの塔もかくやと凄まじく高い高層ビル群が立ち並ぶ摩天楼だった。

 空を駆けるのは、タイヤのないフラットなデザインの車らしき物体。

 町を歩くのは大きな白い羽を生やしたスーツ姿の人間や、明らかに人類と一線を画した肌の色の人間、トカゲ頭や、直立歩行した人間の胴体を持つライオンや犬……混ざりすぎである。


「神様の住むところが、こんな未来都市とはな」


 日本のビジネス街よりも時の流れが速そうだった。皆、忙しそうにしている。


『ある意味、これが正しい形かもしれません。神々は人類の遥か先の未来の常識を体現していると考えれば、納得が行きます』


 そんな風に所感を言い合っていると、目の前に長い車体の黒塗りの車が着陸した。

 運転手が車から降りた。5対の白い翼を持つ銀の総髪の青年だった。


「万象の魔法使い・槙島千国さまと電子の聖霊・アイリスさまですね。お迎えに上がりました」


 優雅な所作で青年がセンゴクたちに礼をした。


「ああ、どうもご丁寧に。槙島千国です。万象の魔法使いってのはなんだか恥ずかしいですね」


『アイリスです。あのう、電子の聖霊というのは?』


「万象の魔法使い、及び電子の聖霊というのは、天界が授けた単一種族認定の名称です。これら単一種族認定はこれまでに例を見ない、神々、仏、聖霊に近い存在が認定を受けるものです。力の証明であり、名誉でもあります」


『あの、大変恐れ多いのですが、マスターはともかく私は性能が優れているだけのAIでは……?』


 青年は首を横に振った。


「なるほど、お気づきではなかったのですね。万象の魔法使いセンゴクさまと契約状態にある貴女は、その強大にして万能の魔力を常時その身に受ける存在となりました。結果貴女はただの電子人工知能ではない、高次の存在へと進化を果たしているのですよ?」


 センゴクとアイリスは互いに目を合わせた。契約なんぞした覚えはないからだ。

 同居人として、互いに良くしてもらっているというのは否定しないが。


「ああ、申し遅れました、私はメタトロンと申します。会場周辺と宿泊先の案内を仰せつかっております、短い間ですが、よろしくお願いいたします」


『メタトロン!?』


「アイリス、知ってるの? おれ、神話とか疎くってさ」


『メタトロンといえば、力のある大天使様です。万能の天使とも呼ばれ、一説には4大天使とされる方々よりもお力があるとか。ぶっちゃけすごい大物さんです』


 アイリスの若干興奮した物言いに、メタトロンは苦笑した。


「まあ万能の天使というのは要は雑用係という意味でして。何でも出来るから、何でもやらされているだけのことなんです。さあ、車の方に乗ってください」


 センゴクたちが乗り込むと、車はゆっくりと浮び、加重移動を感じさせることなく移動を開始した。



***



「はあ、つかれたー」


『お疲れ様です、マスター』


 センゴクたちは、会場とその周辺の案内を受けた後、宿泊するホテルにやってきていた。

 ビジネスホテルのような手狭な部屋ではなく、スイートルームだった。

 広すぎて豪華すぎる。


「なにもかもスケールでかすぎ。土地が無限に余ってるか知らないけどさ」


 会場周辺の施設は、至れり尽くせりといった具合で、来場者が必要とする全てをそこでまかなうことが可能であった。


『会場も、競技の規模によっては、圧縮空間技術を応用して、内部を無限に拡張できるそうですしね。色々参考になります』


 近未来的な天界を目にしたアイリスは、どこかつやつやしていた。目にした数々の未来の常識を読み取って、フィードバックしたのだろう。もちろん、そのリソースは、センゴクの魔力だ。だから電子の聖霊などと呼ばれるのだが、肝心な部分でセンゴクの魔力の恩恵に今までアイリスは気付いていなかった。

 ちなみにセンゴクへの負担はない。普通の魔法使いなら搾り取られて何百人が死ぬレベルの魔力がアイリスに使われているのだが、センゴクは万象、つまりは無限である。無限の湧き水はどれだけ取水しても枯れることはないのだ。


「さて、食事に繰り出すとするか。ホテルのビュッフェバイキングは地球上のあらゆる料理を網羅しているらしいし、楽しみだ」


『あ、待ってください、マスター……実体化プログラム、起動』


 アイリスが呟くと、虚空に光の線で人の形が描かれる。

 しばらくすると、無数の光の結晶テクスチャーが人型に張り付いていく。


「どうでしょう、マスター」


 センゴクの目の前に現れたのは、清楚な印象の美少女だ。膝丈のスカートに、白いブラウスを合わせている。


「おお、おおおお!」


 恐る恐る目の前の少女に肩に触った。触れる。触れたのだ。

 人肌の熱をもった少女の身体だ。


「凄いなあアイリス。身体があるぞ!?」


 少女は、実体化を果たしたハイパーAI改め電子の聖霊、アイリスだった。


「はい、天界の技術を用いて、肉体を創造しました。いかがでしょう?」


「おお、凄くかわいいよ!」


 興奮して素直に賞賛するセンゴクに、アイリスは思わず照れてしまう。


「ありがとうございます。今の私は電力の他に、経口摂取でのエネルギー補給が可能になっています。つまり食事が出来ます。実は今まで、心苦しく思っていたのです。マスターと一緒に過していても、ご相伴を預かれないことに」


「そうか。……じつは俺もだ。じゃあ今日からは、一緒に食べられるな」


「はい! 行きましょう、マスター!」


 アイリスは、センゴクの手を取り、ホテルのレストランへと向かった。


 ラグナロック・カーニバル開催まであと二日。




ホテルのレストランにて


アイリス「うおおおおおおおお! おいしい、料理、超おいしい。はふ、はふ、はふ」

レストランの料理長「負けるな、皆、どんどん料理を運べええええ!!」

センゴク「なにこのフードファイト」


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