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第16話 推薦招待選手



 神様も、玄関からやってくる。




「あ、どうもセンゴクさん、ご無沙汰してます」


「がうがう、へっへっ(遊びに来ました!)」


 センゴクが呼び鈴を聞いて玄関を開けた先に立っていたのは、手土産を持った、背の高い短い青髪で丈あまりのチャラい格好をした男と青い毛並みの狼だ。

 北欧の神ロキと世界喰らう神狼フェンリルである。




「がうがうがうがう(もっと撫でてください)」


「小さくなってもかわいいなおまえ~」


「ははは、流石センゴクさんッす。フェンリルがそこまで懐くのなんて、神の間でもいないっすよ」


 フェンリルは手に抱えられるほどの小さな体躯になっていた。

 センゴクのマッサージが気持ちいいらしく、されるがままであった。

 ロキを家に招いたセンゴクは彼に粗茶を出して畳の上に座らせた。


「今回は戦いに来たとかそういうんじゃないですよね?」


「もちろん、俺に戦う意志はないっすよ~。ああでも、ある意味物騒かもしれないんですけど」


 そういいながらロキが懐から赤い蝋にRと印し、封がなされた便箋を取り出した。


「これは?」


「その中に今回俺が派遣されてきた理由が入ってます」


「開けたら、ボンッ……、ってことにはならないよね?」


「大丈夫ですよ、そこは信用してください」


 そうは言うが、ある意味名高いロキ神なので最低限警戒しつつ、封を切った。

 そこに書かれていたのは。


「ラグナロック・カーニバルへのご招待の報?」


 意味がわからなかった。


「ああ、やっぱり! さすがセンゴクさんっすね」


 どうやらロキも中身を知らなかったらしい。

 しかしそれだけの重要な催しということなのだろうか。


「えーっと、槙島千国様。このたび貴方は来たる神々の祭典、ラグナロック・カーニバルへの推薦招待選手としての参加資格を得られました。つきましては、参加・不参加、ご希望の方へ〇をお印しください……」

 

 だから、意味がわからない。


「ロキさん、ラグナロック・カーニバルって?」


「えーっと、そうですね、センゴクさん。ラグナロックについてはご存知です?」


 それはセンゴクでも知っていた。神々の黄昏と称される世界新生へのプロローグ、すなわち終末の戦争のことだ。


「まあ、概ねそんな感じの理解ならOKです。で、昔にもラグナロクってあったんですけど、復興も大変だし新興の神も育たないってことで、神々の争いをスポーツの勝敗に置き換えたんです。それがラグナロック・カーニバルの起源ですね」


「……つまり神様たちのオリンピックで、代理戦争ってこと?」


「ええ、そういうことです」


 これにはセンゴクもたまげた。センゴクの驚きを余所に、ロキは話を続ける。


「選手層の厚さでは日本の八百万が一番ですね。本命はキリスト親子とか、帝釈天、大黒天、あと一応ウチのオーディンの親父なんかも挙げられるっすかね」


 ロキが指折り数えながら言った。


「あ……神様って、全領域なのね」


「そりゃそうですよ。いまや神もグローバルですからね。今回三回目なんすけど、それはもう毎回大盛り上がりで」


「そんなところの選手に、俺が?」


「センゴクさんなら文句ないと思いますよ。一応何処の陣営にも属さない物質界特別枠ってことで推薦も色んな神話領域から連名で出ていますよ。ウチのオーディンとか、キリストとか、あとは仏連中にスサノオにイザナギもたしか推してるはずです」


 神々のビッグネームの名前が出てきて、いよいよ冷や汗が止まらなくなってきた。

 やはり見てるところは見てるんだなあと思いつつ、センゴクは魔法で悪行してなくて良かったと心の仲で安堵した。


「これ出場したほうがいいのかな?」


「俺的にお得だし、いいと思いますよ。招待枠なら、予選免除で決勝トーナメントいけるし。それに天界を下見がてら見物するのも悪くないっすよ」


「……なに、下見って」


「いやあセンゴクさんの場合は、多分死んだらそのまま神になると思うんで」


 ああ、そうですか。死んでからの就職先も決まってるんですね。

 そんなさも当然のように言われてもセンゴクにはわかりがたい話である。


「ふうん……死人とか出ないよね?」


「死人出ても復活余裕ですよ、医療スタッフも神々最高峰ですから」


 やはり出るほど過激なのかと思いながら、センゴクは意を決して参加に丸をした。


 すると用紙が光り輝いて消えたかと思うと、代わりにA4サイズの封筒が現れた。


「あ、その中に参加要綱とか、天界への行きかたとか書いてると思うんで」


 よいっしょっと、とロキが立ち上がった。


「それじゃあ、俺はこの辺で。お茶ご馳走様でした。フェンリル~、帰るぞ~」


「あ、フェンリルは置いていっても」


「ああいえ、こいつ置いておくと寝ぼけて物質界食いかねないんで」


「ああ、そう……」


「がうがうがうがう(また遊んでください!)」


「それじゃあまた、天界でお待ちしてますね」


 そういってロキは玄関から出て行った。







「なんかとんでもないことになったな……」


 言葉とは裏腹に、内心昂ぶるセンゴクは、参加要綱の入った封筒を手に取った。




一番楽な天界への行きかた……どんな方法でもいいので死んでください。無料で天使を迎えに出します。


センゴク「……他の方法で行くわ」



魔人センゴク・ラストエピソード ラグナロック・カーニバル編、始動 

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