それぞれの魔武器
ガネルは少々落ち込みながら魔力を流し始める。
すると、魔鉱石が光りだした。光が収まったときには魔鉱石は無く、かわりに黒色で指が出る、皮製の手袋的なものがあった。甲には赤くて丸いガラス玉のようなものがくっついている。
「これは・・・・・・」
「手袋・・・・・・ですか?」
「ちょっと期待はずれ」
3人は少しがっかりしているが、作った本人は・・・・・・、
「これが俺の魔武器・・・・・・・」
うれしそうに目をきらきらさせていた。
「カナタ!こいつの名前決めたぜ!!」
「言ってみろ」
「【ブラックキャニオン】!!」
「「「【ブラックキャニオン】?」」」
「言いづらい名前だな」
「別にいいだろ~?」
「それで、固有能力はなに?」
「あ?」
「だから、固有能力はなにって聞いてるの。名前をつけたときにわかるのよ?」
「おお、さっき頭に流れてきたあれか!」
「で、なんだったの?」
「『強化』」
「『強化』?」
「なにを強化するんですか?」
「それは秘密♪」
ガネルは上機嫌だ。
「次は私がしてもいいですか?」
リルが控えめに手を挙げる。
「いいぞ」
「どんなのができるんだろうね」
「では・・・・・・・」
魔力を流す。
すると、さっきと同じように光り出し、それが収まるとリルの手には弓が握られていた。
「弓・・・・・・ですか」
その弓はリルの髪の色と同じ緑色だった。
「名前は決めたの?」
「はい。【グリーニア】です」
「【グリーニア】か」
「良い名前ね」
「俺の時とは正反対!」
「固有能力は、『マリオネット』です」
「ほう。どんな能力かはお楽しみか?」
「そうですね」
「俺、無視ですか・・・・・・?」
「次は、あたしがするね」
落ち込むガネルを徹底的に無視し、レナは魔力を流す。
光が収まると、そこには一本の槍があった。
「槍か・・・・・」
「きれいですね」
その槍はきれいな琥珀色をしていた。
「決めた!」
「なにを?」
「この槍の名前!」
「なんていうんだ?」
「【コハク】!!」
「そのまんまかよ!」
ガネルが突っ込むが、3人に睨まれた。
「・・・・・・ごめんなしゃい」
よほど怖かったのか、ガネルは小さくなってしまった。
「固有能力は『増加』みたいね」
「なんかヤダな・・・・・・」
そう言ったガネルはまた睨まれた。
学習しない奴だ、と全員の考えが一致した。
「・・・・最後は俺だな」
すぐに魔力を流し始める。
「(厄介なものが出ませんように)」
光が収まる。が、カナタの手には何も無い。かわりに背中に漆黒の翼があった。
「・・・・・きれい」
「吸い込まれそう・・・・・・・」
「わぉ」
3人が驚いている間、カナタは翼を広げたり閉じたりしていた。
「(漆黒の翼か・・・・。それなら生まれつき持ってるんですけど。てか、これで魔族だってことばれないよな?)」
「ねぇ、カナタ。それの名前は?」
「こいつ?こいつは【漆黒】。そのまんまだ。固有能力は・・・・・・『創滅』」
「なんだ、そりゃ」
「それは秘密、だろ?」
ガネルは少し残念そうだった。
「触ってもいいですか?」
「いいぞ」
カナタの許可をもらったリルは恐る恐る翼に触る。
「あっ!気持ち良い・・・・」
【漆黒】に抱きつき、ふにゃんとなってしまった。
「こら、寝るなよ」
「無理・・・です・・・Zzz」
リルは【漆黒】によかりながら寝てしまった。
「どうしよう、こいつ・・・・(つーか寝つき早いな)」
カナタが困っていると、ノウの声が響いた。
「みなさ~ん!言い忘れてましたが、作った魔武器は『ボックス』にしまってくださ~い!消えろと念じればしまえますので~!!」
「ほう。良いことを聞いたな」
にやっと笑い、消えろと念じると【漆黒】はボックスに消え、【漆黒】によかっていたリルは、
「ひゃっっ」
地面にダイブした。
「い、痛いです・・・・・・」
「なかなか便利だな」
カナタはリルの心配をせずに嬉しそうにしている。
「カナタ君・・・・?」
「ん?」
リルの呼びかけにこたえて振り向いてみると、
「きちんと謝ってください」
黒いオーラをまとったリルがいた。
「・・・・・・・ご、ごめんなさい」
「よろしい」
カナタが謝った瞬間、黒いオーラが消え、いつものリルに戻った。
「(こ、怖かった・・・・・・)」
今回の教訓。リルを怒らすとめっっっっっっっっちゃくちゃ怖い。
「ねえ、ノウ先生が呼んでるわよ?」
レナが言ったとおり、ノウが一生懸命みんなを集めている。
「本当ですね。行きますか?」
「センセーかわいそうだし、行こうぜ!」
「だな」
4人はノウのところに集まった。
「みんないますね?」
「「「はーーーーーーい!!」」」
「では・・・・・・」
こほん、と咳払いをする。
「えー、今日の授業はここでおわりです」
「うおーーーーーーっ!」
生徒から歓声があがる。
「明日は使い魔を召喚しますので、ここに集まっていてください」
「うおーーーーーーーーーーーっっ!!!」
さっきよりも大きい歓声があがる。
「(うるせー・・・・)」
あまりのうるささに耳をふさぐが、あまり効果が無い。
「では、解散です」
みんなぞろぞろと帰り始めた。
「俺らも帰ろーぜ」
「そうですね」
「疲れたー!」
「何もしてねぇだろ」
「気にしないの!」
などの会話をしながら寮のほうに歩いていった。