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魔王  作者: 秋雨
32/38

逃げるが勝ち!

場面がコロコロ変わります。

「で、お前は律儀に帰ってきたと?」

どこかの空間でマルクが機嫌悪そうに言う。

「はい、申し訳ありません・・・・」

マルクの前で片膝をついているマーデルはマルクの顔を直視できずに下を向いている。

「律儀なのはいいけどな、もう少しで始末できたのを放って帰ってくるのはないだろ」

「はい・・・・・」

マルクに説教されて小さくなっていくマーデル。

「・・・・・・はあ、まあいいさ。次は俺直々に行ってやる」

「マルク様直々に!?」

マーデルが驚いて顔を上げる。

「ああ。最後くらいは俺の手で決着をつけたいからな。文句あるか?」

「い、いえ・・・・・」

にい、と(わら)うマルクに、マーデルは大人しく引き下がった。

そこで、あることに気づく。

「マルク様、アーネスはどこですか?」

いつもマルクにぴったりくっついているアーネスが見当たらない。

「あ?俺が知ってるわけねぇだろ」

「(マルク様も知らないのか・・・・。どこに行ったんだ、アーネスの奴は)」

アーネスが行きそうなところを思い出そうとする。

が、思い出せない。

マーデルがうんうん唸っていると、ちゃららら~、とどこか抜けたような音が空間に響いた。それと同時に、モニターが現れる。

〔はろはろー。マルク様ぁ、見えてるぅ?見えてるってことでいいよねぇ。聞いてくださーぁい!わたしはぁ、今ぁ、雷桜学園の前にいまぁす。この後どうするかわかるぅ?・・・・・もちろん、現魔王くんに会いに行きまぁす!ビックリしたぁ?えへへぇ。じゃあ、いってきまぁす!いい知らせを持って帰るからねぇ。ばいば~い〕

言いたいことだけ言ってモニターは切られた。

「・・・・・勝手な行動しやがって」

マルクが座っている椅子の肘置きがへこんでいく。

「マ、マルク様・・・・・」

その様子を震えながら見つめるマーデル。

「ちょっと迎えに行ってくる」

マルクは椅子から立ち上がり、ふらりとこの空間の出口に向かう。

「い、いってらっしゃいませ・・・・・(アーネス、頑張れ!!)」

マーデルは怒っているマルクにビビりながらアーネスを心の中で応援した。

アーネスの地獄はすぐ近く。

  

マルクが迫っていることなんて露知らず。

「さ~て、現魔王くんはどこかなぁ?」

怒られる前にモニターを切ったアーネスは現魔王であるカナタを探し始める。

「これはぁ、探すの大変そぉ」

言葉とは裏腹にどこか楽しそう。

「早く見つからないかなぁ」

鼻歌を交えつつ、アーネスは歩き出した。


その頃、ガネルとレナとリルは学園内の森に来ていた。

「あ~あ、めんどくせぇな~」

「しょうがないでしょ。授業に必要なんだから」

「元はと言えばガネル君のせいなんですし、しっかり探してください」

「わかってるよ~」

なぜこの3人が森に来ているのかというと、それは2時間ほど前にさかのぼって説明しよう。

  

――2時間ほど前――

ガネルたちは教室で魔法についての授業を受けていた。

ここからが問題で、ガネルとカナタはその授業が話しを聞くだけの授業でとてつもなくだるかった。

まあ、だるいと思うだけなら良かったのだが、2人に睡魔が襲いかかり、そのまま夢の世界に旅立っていってしまった。

その2人を起こそうとして、リルとレナが丸めた紙などを投げていると、先生に見つかってしまい、罰として明日の授業で使う薬草を取りに行かされることになったのだった。


「はあ、あたしたちって、完全に巻き添えよね」

「そうですね。カナタ君とガネル君が寝なければこんな事にはならなかったのに・・・・・」

「ううう・・・・・」

リルとレナの言葉が痛い・・・・。

ところで、なぜカナタがいないかというと。

「カナタには捕まえる直前で逃げられちゃうし」

「《転移》を使って逃げるなんて卑怯ですよね」

カナタは危機を察知して逃亡していた。

魔法の無駄遣いである。

「次あったときはボコボコにしてやるんだから!」

「では私はあんなことやこんなことでカナタ君をお仕置きしましょうか。ふふっ」

リルの笑顔が真っ黒い。

「(自業自得だ。がんばれ、カナタ!!)」

カナタに未来はあるのだろうか・・・・・・。

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