キレたジルの行く末
「【黒夜】」
ジルの左手に、黒く光る剣が握られる。
「これがテメェが見たがってた俺の魔武器だ」
「片方は俺と同じか」
マーデルは持っていた【暗黒】目の前にかざす。
「テメェのと一緒にするな」
ジルは素早くマーデルの背後に回り、【蒼姫】を振る。
「(速い!)」
マーデルはなんとか両剣で【蒼姫】を防ぐ。
しかしその瞬間、ジルが口端を吊り上げる。
「しまっ・・・・・」
気づいた時にはもう遅かった。
ジルは【黒夜】切り上げる。
マーデルはそれをかわそうと後ろに翔ぶが、【黒夜】はマーデルの腕を切った。
「く・・・・っそ!」
マーデルは左腕を抑えながら着地する。
「へぇ、あれをかかわせたのか。なかなかやるな」
「・・・・・」
余裕な表情のジルに対し、マーデルは冷や汗を流し顔をしかめている。
「場所が悪いからな、ここは。全力が出せなくても仕方ねぇか」
ジルたちが戦っているのはグラウンド。つまり、学園のど真ん中。
ジルは本気を出せないかもしれないが、マーデルは本気を出しても構わないはずだ。
「クソが・・・・・」
ジルが嫌味を言ったことに気づいたマーデルは悪態をつく。
「ふん、なんとでも言っとけ」
ジルは鼻で笑いながらとても意地悪そうな笑みを浮かべる。
「(おいおい、これじゃジルの方が悪党だよ・・・・)」
しょうがないんだけどさぁ、どうにかならないものか・・・・・、と複雑そうな顔を浮かべるカナタ。
「・・・・・・・ナタ~」
「ん?(今、声が聞こえたような・・・・・)」
首を傾げ、あたりを見回す。
「カナタく~ん!」
「カ~ナタ~!」
「げっ!(あいつらの声だ!)」
カナタは口元に手を当てて自分の名前を叫んでいるリルたちを見つけた。
「部屋で待ってろって言ったのに・・・・・」
何で来るんだよ・・・・・・、とカナタは額を押さえる。
「あっ、カナタ君、見つけましたよ!」
「えっ、どこどこ?・・・・・ほんとだ、いた!」
「やっと見つけたぁ!」
嬉々としてリルたちがこっちに近づいてくる。
「来るな・・・・・って言ってもムダか」
リルたちはすでにカナタのところまで来ていた。
「(さっきは15メートルくらい離れてたのに・・・・)」
何か秘密でもあるんだろうか。
「チッ、人間が来たか」
「ん?カナタ、あいつ誰?」
ガネルの視線がマーデルに固定される。
「ああ、あいつは・・・・・(なんて言えばいいんだ?)」
「俺は魔族だ」
マーデルはあっさりと自分の正体を明かす。
「魔族だって!?・・・・・・・って魔族って何?」
その場にいる全員(マーデル以外)がコケた。
なぜわかったフリをして驚いた。
「・・・・・あとで説明してやるから」
カナタはガネルの肩に手をおいて言う。
「?おう」
カナタの顔が悲しそうに見えた気がしたガネルだが、一応返事をしておいた。
「さて、どうしますか?このまま大人しく引き下がりますか?それとも・・・・・」
ジルの口調が元に戻っている。
さっきのガネルのボケで冷静になったらしい。
「ここで殺されますか?」
・・・・・・口調しか戻っていなかった。
「ああ、殺されるな。・・・・・・おまえらが」
マーデルが一気にカナタに近づく。
普段のカナタなら対処できただろうが、今はリルたちがいるため、迷いが出た。
そのせいか、カナタの反応が遅れた。
「もらった!」
マーデルの剣がカナタの首を狙う。
「くっそ・・・・!」
「カナタ様!!」
ジルが走ってくるのが見える。
しかし、間に合わない。
もうダメだ、そう思った瞬間・・・・・・
マーデルの剣がカナタの首スレスレのところで止まった。
「・・・・・・時間か」
マーデルは剣を消してカナタから離れる。
「運が良かったな、現魔王。タイムアップだ。また会ったときは貴様の首、刈り取ってやる」
マーデルは《転移》してその場から消えた。
・・・・・まあ、俗に言う“言い逃げ”というやつで。
「・・・・・ぁんの野郎・・・」
カナタは拳を強く握りしめた。
「次会ったら借りはきちんと返してやる・・・・」
カナタの口は笑っていたが、目は冴え冴えとしていた。




