少しの秘密
「ほら、カナタ様。手が止まってますよ」
「うっ・・・・、うっ・・・・」
カナタの部屋では、カナタがジルに怒られながら仕事をしていた。
「ジル~、休憩しようぜ~」
「何言ってんですか。始めたばかりでしょう」
机に突っ伏し、弱音を吐くカナタ。
そんなカナタの頭をたたいて、ため息をつく。
「そうですねぇ。ここの部屋にある書類を全て片付けたら休憩を入れてもいいですよ」
「え゛」
カナタの部屋には足場がギリギリ作れるくらいしかないほどの書類が積まれている。それを全て片付けろというのは無茶がある。
「鬼ぃ~~」
カナタは泣きながら書類と格闘した。
「普段しておかないからですよ」
カナタを監視しながら、ジルはお茶を啜っている。
「たぁぁのもぉぉぉ!!」
涙を流しながら書類を整理していると、部屋のドアが勢いよく開き、ガネルが入ってきた。
「カ~ナタ~、遊ぼ~ぜ!って、うおっ、あぶねぇ!!」
積み上げられていた書類がガネルを襲うが、ギリギリ止める。
「ふう、よかった」
「残念ですね。受け止めきれてないですよ」
「へっ?」
止めたはずの書類の上部分が崩れ、ガネルを襲う。
「ぶべぇっ・・・・・」
ガネルは書類の下敷きに。
「ああ~!!そこの書類、ちゃんと整理してたのに!!何してくれてんだよ!」
ガネルの心配より書類の心配。
「下敷きになった方はよろしいんですか?」
「んなこと知るか!!」
「(ううっ・・・・。誰でもいいからタスケテ・・・)」
ガネルの心配なんか毛ほどもしていないカナタ。
書類に埋もれながら泣くガネル。哀れなり。
「早く助けてあげないと死んじゃいますよ?」
「いや、あいつは死なない。でも書類がダメになる前に戻す」
ガネルの生命力はゴキブリを超えるからね。
「つーわけで、《つむじ風》」
詠唱破棄をして旋風を起こし、書類を戻す。
「た、助かった・・・・・」
「書類が汚れなくてよかった」
最後の最後まで書類の心配。
「俺の心配もしてくれよぅ。・・・・・・あれ?」
「どうかしましたか?」
泣いたり考え込んだりするガネルを心配して声をかけるジル。
「今、カナタが風属性の魔法使ったよな?」
「それがどうかしましたか?」
「俺の記憶が正しければ、カナタの属性は水と雷だったよな」
ちょっと不安げに言うガネルだが、それは正しい。
「あ゛(しくった。やべぇ・・・・)」
墓穴を掘ってしまった。後悔してももう遅い。
「カナタ、どういう事か説明してくれるよなぁ?」
カナタピーンチ!!
「・・・・・しょうがねぇな。教えてやるよ」
言い訳を作るのも面倒になり、少々真実を話すことにいた。
「マジで!?」
「ただし、リル達には言うな」
「なんでさ」
「いいから。約束しないと教えないぞ」
「わかった・・・・」
しぶしぶ了承する。
「実は、俺の属性、全部なんだ」
「・・・・・・・・・ぜ、んぶ?ってことは、火、水、雷、風、土、木、氷ってことか?」
カナタは魔族だから、闇属性も入るが、説明するのが面倒だったので補足はしなかった。
「そう。知られたら大騒ぎするだろうから隠してたのに、最初にバレたのがガネルかぁ。はぁ、しくったなぁ」
ガネルを軽くけなしているが、本人は気づいていない。
「カナタが、全属性使える・・・・・。それって・・・・」
俯いたガネルが震えている。
「超スゲェじゃん!!」
ガバァっと勢いよく上がったガネルの顔は、キラキラしていた。
「なんで教えてくれなかったんだよ~、カナタのバカ~」
「誰がバカだ」
ゴイィンとガネルの頭を殴る。
「いって~・・・・」
殴られたガネルは頭を抑えてうずくまる。
「ふふっ。仲がよろしいですね」
「どこがっ!」
カナタがジルに反論する。
ジルはカナタを無視してズズッとお茶を啜る。
「(まぁ、類は友を呼ぶって言いますし)」
カナタとガネルを同類でくくってしまうジル。
「(なにはともあれ、カナタ様が楽しそうでよかった)」
学園の上空に1人の青年が浮かんでいた。
「・・・・・ここが現魔王のいる学園か」
青年は学園を無感動な目で見ていた。
「ふっ・・・・。現魔王も堕ちたものだな。これならマルク様の方が何倍もいい」
青年は学園内に降り立った。
「現魔王、早くこないとこの学園が全壊するぞ」
青年は歩き出す。




