拳骨と正体
男の青い瞳がキラーンと光る。
「この、大馬鹿野郎がっ!!」
勢いをつけた男の拳がカナタの頭に直撃。
「いってーーーーーっ!!」
そのあまりの痛さにカナタは頭を押さえてしゃがみ込む。
その衝撃で、寝ぼけていた頭も覚醒した。
「なにすんだよっ!」
拳骨を喰らったカナタは男を涙目で見上げる。
「バカジル!」
「誰がバカだ、アホ」
ジルはカナタを睨みつける。
それだけで人ひとり殺せるんじゃないかと錯覚するくらい、眼光が鋭い。
「アホ!?誰がアホだと!?」
「お前だよ。こんな所でダラダラしてないでとっとと帰ってこい。ったく、こっちがどれだけ頑張ってカナタを探してたか知りもしないで。相手の迷惑ぐらい考えて行動しろ」
「うっさいハゲ!」
「誰がハゲだって?あ゛?言ってみろや」
ヤンキー顔負けの迫力のあるジルにひるまず、カナタも言い返す。
「ジルの頭に決まってんだろ。そんなこともわかんないのかよ!」
「俺のどこがハゲてるって?どこもハゲてないだろ。お前の目は節穴か?」
「あの・・・・・・」
だんだんとヒートアップしている2人の言い争いに、ガネルが遠慮気味に入る。
「「あ゛?」」
「いえ、何でもありません!」
2人に睨まれたガネルはびしっと敬礼し、リルとレナのところに逃げていった。
「ちょっと、なんで帰ってくるのよ!」
「ちゃんと聞いてきてくださいよ!」
「無理だ、俺には無理!」
ガネルは半泣きになって首を横に振っている。
「意気地なし!」
むしろただのヘタレだ。
ガネルを罵っている間に、カナタたちのほうは少しクールダウンしていた。
「ふう、少し落ち着きましょうか」
「お前が悪いんだろ」
「何か言いましたか?」
額に手を当てたまま、ジルがぎろっとカナタを睨む。
「なーんにも」
カナタは明後日の方を向き、口笛を吹いた。
「・・・・まあ、いいでしょう」
カチャッとメガネを直し、姿勢を正す。
「カナタ様、一緒に帰っていただけますね?」
「やなこった」
即答し、カナタはべーっと舌を出した。
何とも子どもっぽい。
「・・・・・なんですって?」
ジルのこめかみに青筋が浮く。
「俺、帰んねーからな」
「ほう・・・・・。なら、力尽くでも」
ジルが剣を構える。
「あの、水を差すようで悪いんですが、少しいいですか?」
「・・・・・・何ですか」
剣を降ろし、かなり不機嫌なジルがリルの方を向く。
「帰るって、どこにですか?」
「そんなの決まってます。ま「わーっ、わーっ、わーーーーっっっっ!!」
ジルの言葉をカナタがさえぎる。
「・・・・なんですか」
ジルの不機嫌度が上がったが、それどころではなかった。
「ジル、ちょっと来い」
カナタはジルを闘技場の隅の方に連れて行く。
「あのな、ジル。俺はまだ言ってないんだよ」
「何を――――――って、ああ、そうなんですか?なら、今すぐ言いに行きましょう」
「ちょ、やめろって!」
リル達のところに行こうとしたジルを引き止める。
「離してください」
「嫌だね」
しばらく睨み合いになる。
「・・・・・はあ、わかりました。言いませんよ」
先に折れたのはジルの方だった。
「しかし、いつかは言わなければならないんですよ?」
「そうなんだよなー・・・・。いつまでも隠しておけないし」
「今がそのときなんですよ。で、早く帰りましょう」
「・・・・・お前、そのことしか頭にないのか?」
さっきから“帰る”ばかり言うジルに呆れ気味のカナタ。
「悪いですか?こっちはあなたがいない間の仕事を処理しまくってたんですよ。しかしあなたしかできない仕事もあるわけでして、さっさと帰ってもらわなければ後々面倒なことになるんです。わかってますよね?」
「それについては何とかするからさ」
「・・・・本当ですね?」
ジルの目が光る。
「本当だって」
しかしそれに気づかないカナタ。
「ならいいです。では、魔界に帰ってくださるんですか?」
「それとこれとは話が別」
「そうですか・・・・。やはり、あいつらのせいか」
「は?何言ってんの?んな訳ないじゃんか」
口調が変わったジルを警戒する。
「そうなんだな」
「いや、人の話聞けよ」
ジルはカナタの話を無視して、遠くで傍観していたリル達に殺気を放つ。
「「「!!」」」
いきなり殺気を向けられたリル達は、その場から動けなくなった。
「さて、邪魔者は排除するか」




