丘と森の惨劇
〔それでは、午後の部を始めま~す!〕
〔7グループの人は集まっていますね?〕
〔《強制転移!》〕
返事も待たずに《強制転移》をした。
もう恒例となってきている。
「このグループも普通に終わりそうですね」
「そうだな。何かつまんねぇ」
「大丈夫ですよ。この次はレナちゃんの番ですので、きっと面白いことしてくれますよ。ね、レナちゃん」
リルの笑顔が怖い。椅子の上で正座をさせられているレナとガネルはそう思った。
「う、うん。がんばるわ」
引きつった笑顔でレナが返す。
「そうかそうか。期待してるぞ」
カナタの笑顔も怖い。
「た、楽しみにしててね(楽しんでもらえなかったらどうなるの・・・?)」
不安になりながらもきちんと返事をする。
次の試合でレナの生死が決まってしまうだろう・・・・・。
最悪の結末だけは回避しなければ・・・・。
と意気込んでいる間に、試合は終わっていた。
〔次は8グループだよ~。集まってね~〕
「あっ、あたし行かなきゃ!」
レナが逃げるようにその場を去る。
「がんばってくださいね」
「期待してるぞ~」
不安なレナにさらに追いうちを掛けるカナタとリル。
〔集まりましたね?では、《強制転移》〕
「うっわ~・・・・・・」
レナが転移したところは丘の上だった。
〔はいは~い、それでは、がんばってね!〕
〔開始〕
特に説明もされず、すぐに開始の合図がかかった。
「さて、あの2人はなにが楽しいのかしら・・・・・」
始まったとたんに考え始めたレナ。
その後ろに、1人の男子生徒が迫ってきていることに気付かずに。
「覚悟!!」
男子生徒が飛び掛ってきた。
「え?」
男子生徒の声でレナはやっと気付いたが、すでに遅く、男子生徒は目の前にいた。
「きゃあっ!」
とっさに顔をかばい、目をつむる。が、衝撃がこない。
「・・・・・・・」
目を開けてみると、男子生徒のかわりにナミが目の前にいた。
「あれ?ナミ?なんで??」
『まったく、なんで戦いの最中に目を閉じるかな。実戦だったら死んでたよ』
ほうけているレナにナミが頬を膨らましておこる。
その様子からナミが男子生徒を倒したんだと思う。
「ごめんね・・・・。でも、ありがとう」
『っ!な、なんてことないよ、こんなこと』
お礼を言われたのがうれしかったのか、ナミは頬を真っ赤にしてそっぽを向いた。
「ふふっ。・・・・・・さて、いっきに片付けるわよ」
『もちろん』
レナとナミは走り出した。
「―光よ。我の居場所を皆に伝えよ―《光の導き》」
詠唱をすると、空に向かって一筋の光が放たれる。
その光に気付いた他の生徒達が集まってくる。
普通は警戒して動かないだろうに、寄ってきてしまうのはこの魔法の性質ゆえだ。
「―光の雨よ。我に仇なす敵を討て―《シャイニングレイン》」
広範囲に光が雨のように降らす。
「・・・・・ふう、片付いたわね」
『楽勝、楽勝』
「ナミは何にもしてないでしょ」
『助けたでしょ』
「それはそれ。これはこれ」
『む~~~~~~ぅ』
ナミは軽くふてた。
〔あれ?1人しかいないねぇ。予定が狂っちゃうけどいっか〕
〔余計なことを言わないの。《強制転移》〕
「なんか、呆気なかったわね」
『失格になりかけた人がよく言うよ』
「まだそれを言うの?」
ナミと言い合いになりながらレナが帰ってきた。
「すごかったですね、レナちゃん」
帰ってきたレナをリルが笑顔で迎える。
「敵の前で目を閉じたのは意外はよかったぞ」
さりげなく毒が入っているカナタの言葉。
少しレナに突き刺さった。
「レナはやっぱり強いな」
未だに正座をしているガネル。足が痛いのか、涙目になっている。
「(何とか満足してもらえたのかな?)」
リルとカナタの満足そうな顔にほっと一安心。
〔次は9グループ!用意はいいかな?それでは開始ッ!〕
そして、時間は過ぎていく。
〔はいはい、お次は10グループ!〕
〔早く集まってください〕
「お~、次、俺の番か。じゃ、行ってくる」
「はい。がんばってください」
「応援してるよ~」
「あ、足が~~~ぁ」
ガネルが足を押さえて泣いていた。痺れたらしい。
「はははははは・・・・・・・・・」
その様子を苦笑しながら見ていたカナタだが、グラウンドに歩いていった。
〔それでは素早く《強制転移》っ!!〕
「ここは・・・・・・・・、森か?」
『どう見ても森だろう』
カナタは木が生い茂る森にいた。
〔では、時間節約のために早く始めてください〕
「本音が出たな」
『まぁ、その期待に答えてやれんがな』
「いいや。すぐに終わらせてやるよ」
カナタは指輪に手を掛ける。
『それを外す気か?バレたらどうするんだ』
「大丈夫。ここ、センセーが創った異世界っぽいところだし、魔力は漏れないって」
『だが、この中にいる生徒たちはどうする』
「あ~、ま、大丈夫だろ」
指輪を2つ外す。それだけでカナタの魔力がさっきより何倍も大きくなる。
「さて。ここは水と雷、どっちがいいかな」
『水でいいだろう』
「んじゃ、水で」
水に決まった。
「―大地に流れるすべての水よ。津波となりすべてを壊せ―《水の破壊神》」
詠唱が終わると、水属性の上級魔法《水の破壊神》が発動し、カナタを中心に津波を起こす。
その津波はすべてを飲み込み荒れ狂う。
「一応、これもしとくか」
津波の中に手を入れる。
「―雷よ。水と共に敵を打て―《雷の援護》」
雷の下級魔法《雷の援護》が水に流れる。
数分後、津波が収まったときには何もなく、荒れ果てた大地が広がっていた。
「終わ~りっと」
指輪を再び指にはめるカナタ。
『派手にやったな』
「そうか?」
〔あ、あれ?終わっちゃったの?〕
〔《強制転移》〕
「つっかれた~」
カナタが首を回しながら帰ってきた。
「ちょっと、カナタ!」
「なにをしたんですか!?」
「どうやったらあんなことになるのよ!!」
帰ってきて早々、3人はカナタに質問攻めを始める。
「何って・・・・・・。見てなかったのか?魔法でやったに決まってんだろ」
「威力がハンパねぇ!何の魔法使った!」
「あ~、そこね。それなら、こいつの魔法だよ」
カナタは自分の頭を指差す。そこには、は?って顔をしたギオウがいた。
「あ~、そういえば、カナタの使い魔ってウォーターウルフだったわね」
「だからあんなに威力があったんですね」
「そうそう。そこに俺が雷の初級魔法を放っただけ」
「な~んだ、そうだったのか。俺、てっきりカナタがしたのかと思ったぜ」
「俺がそんなことできるわけないじゃんか」
澄ました顔でしれっと言うカナタ。
『はぁ』
ギオウがこっそりとため息をついていたことは誰も知らない。
そしてまたまた時は過ぎて。
〔今日はこれで終わりで~す〕
〔明日は本戦をしますので、是非いらしてください〕
〔それではまた明日、お会いしましょう!〕
武闘祭1日目は無事に終わった。




