疑惑
身の周りでは起きなくても日常的に殺人事件はどこかでおきているものだ。
「あ」
明の家に遊びに来ていた美帆はついていたテレビのニュースに目を止めた。
「どうした?」
「これ・・・」
「殺人事件か。隣町?」
「そう」
昨日、隣町で殺人事件が起きたというものだった。
「犯人は交際中の男。犯人わかってるじゃん」
明はいまだに深雪を殺した犯人を見つけられないことと重ねていた。
「犯人わかってるんだ・・・」
「これがどうかしたのか?」
美帆の様子がおかしいことには気がついた。
「昨日・・・隣町の駅で狩谷くんを見たの」
「悠を?」
「うん・・・」
美帆は拳をギュッと握りしめた。
「いつもと違う人にみえた・・・」
怖々と口を開いた。
「もしかして、この事件の犯人とか思ってるのか?」
犯人は交際中の男だろ?と不思議そうな顔をした。
「でも、捕まってない!」
握りしめた手は震えていた。
「何で悠だと思うんだ?ただの高校生だろ」
「ただの高校生ならこんな心配しないよ」
「え?」
「真っ黒な格好で、暗くて、何も見えてない感じで・・」
「は?暗いって、それこそ逆だろ」
明からみる悠の姿は一般の高校生男児だった。
「それは明の前だけだよ!!」
「え?」
「狩谷君、たまにすごい怖く感じるの」
「何で?」
その時は、美帆の言う悠の姿を想像できなかった。
翌日、明は早速悠に尋ねていた。
「悠、一昨日隣町にいた?」
「は?」
「一昨日なにしていた?」
悠はじっと明をみた。
「・・・家にいたよ」
「そうか」
明はそれ以上聞かずにこの話題を終えようとしていた。
しかし、悠は終わらせなかった。
「いきなりなんでそんなことを聞くんだ?」
「美帆がさ、隣町の駅でお前そっくりの人を見たって言うから」
「ふーん」
「でも、出かけてないなら人違いだな」
「俺そっくりの人ねえ」
「そうそう、なんか暗くて怖かったって。一昨日、ちょうど隣町で殺人事件起きてたみたいでさ」
「なんだそりゃ、まさか俺が犯人ってか?」
驚いたように明をみた。
「犯人はわかってるよ。まあ・・それが本当ならな」
冗談っぽく笑いながら明は答え、悠も笑ってみていた。
「え!?狩谷君に言ったの!?」
犯人探しを終えた帰り道はいつものように明と美帆は一緒だった。
「うん」
「何で!!」
「でも、ずっと家にいたってさ」
「そんなの本当かどうかわからないじゃない」
美帆の足が止まった。
「美帆?」
一歩前に出たところで明は振り返って美帆をみた。
「心配してるんだよ?」
美帆はうつむいて今にも泣きそうな声で言った。
「狩谷君、明に言ってないことあるよ?隠してることあるよ?」
「そりゃ、一つや二つ隠し事くらいあるだろ」
「深雪先生の事件のことでも?」
「!!」
深雪の名前がそこで出てくるとは思っていなかった。
「どういうことだ?」
「深雪先生の事件のあった日、狩谷君はあの校舎の4階にいたんだよ」
「え・・?」
「やっぱり聞いてないんだ」
ため息をついた。
「だからおかしいっていってるの。明が必死に探してるの知ってて隠してるんだよ?こんな大事なこと・・」
「悠を疑ってるのか!?」
「・・・うん・・・、一昨日だって殺人事件のあった町にいたし、他にも事件のあったところの近くで見かけたこともあったの・・」
ずっと前のことらしい。偶然通りかかったと言っていたので気にしていなかったが最近どうしてもそのことが気になり始めた。
「でも・・」
「わかってる!これだけで犯人とか決めつけられないことらい。だけど・・・、私は明が心配なの」
美帆は力強い目で明を見詰めた。
「たまに冷たい目で明のことみてる時もあったし、何より感情があるように見えない」
「感情・・」
「作ってるって感じがしてたまらないのよ。狩谷君が怖いの!!」
あまりにも真剣な顔で言われて明はたじろいでいた。
「お願い・・狩谷君には気をつけて・・」
美帆の言葉に明は何も反応ができなかった。
美帆と明から少し離れたところに黒服の男が立っていた。
「ツキ」
黒服の男の陰に隠れるように悠も潜んでいた。
「仕事だ」
悠は小さく
「はい」
と答えた。




