味方か敵か
翌日、さっそく明は石島に会いに行った。
「俺が斎藤先生を殺したと思っているのか?」
石島は簡単に察したようだ。
しかし、その後明は思い切り説教をうけてから解放されたのだった。
「明、単刀直入に言いすぎよ」
美帆が少し離れたところで待っていた。
「せめて、狩谷君と一緒に行けばいいのに」
「あいつ、今日風邪で休みなんだよ・・」
だから一人で石島の所にのりこんだという。
「そっか。結構体弱いよね、狩谷君」
「そうなんだよ、昨日まで元気だったくせに」
そうため息を明はついていた。
一方、
「はっくしゅん」
とくしゃみをしている悠は遠く離れた町にいた。
「んんー・」
「風邪か?」
「噂でしょう・・たぶん」
鼻を押さえながら明のことを思い出していた。
「噂・・ねえ」
隣の黒服の男がじっと悠をみた。
「何ですか?」
「女教師を殺した犯人を探している、という噂があるのだが?」
「!」
「なにそんな馬鹿なことをしているんだ」
「遊びですよ」
「・・遊びならいい。しかし、本気になる前にやめさせろ」
「わかってますよ」
それはうすうす悠も感じていることだった。
「だったらこんなところ連れてこないでください」
今日は石島に会いに行く予定だったのだから。
あの日、屋上をでてすぐに石島をみかけていたのだから。他の生徒の悲鳴によって姿はみられていないが、確実だとは言い切れない。
妙なことを言わないか少し心配だった。
「そういうな。働け」
「はいはい」
そして悠は視線を前に戻し、ライフルを構えるのだった。
悠が登校してきたのはそれから2日後だった。
「おはよう、もう風邪大丈夫か?」
「大丈夫、すまんな」
「いいって」
「石島先生には話を聞きに行ったのか?」
「行ったよ、空振りだ。また一からやり直しだぜ!」
明は諦めていなかった。
その様子を見て悠も決心していた。
石島以外の情報は何もなくただ日にちだけが過ぎて行った。
「吉川さんも大変だね」
今日は美帆と悠が2人で手掛かりを集めていた。明は追試の真っ最中だ。
「狩谷君も同じでしょ」
諦めたような顔をしていた。
「あはは、それにしても・・明って粘るな、この犯人探し」
「本当に明、先生のこと大好きだったからね」
2人は深雪の落下地点のそばにきていた。
「ここで・・深雪先生」
「うん。まだ、血のあと残ってるな」
「・・そうだね」
「狩谷君、あの日人だかりの中にいたよね?」
「下校しようと思ったら悲鳴聞こえてさ、思わず駆け寄ってた」
「・・・そうだよ・・ね」
「何?」
美帆は悠から一歩離れて、恐る恐る口を開いた。
「本当に・・?」
「本当だよ」
実際は、突き落とした後、人に見つからないように急いで降りてきたところで群衆の中に入ったのだが。
「明に・・話してないこととか、黙ってることとかない・・?」
「え?」
「だって、何か知ってそうなのに・・何も言わないし・・、この犯人探しやめさせようとしてる感じがするから・・」
「・・・」
正直、悠は驚いていた。明ではなく美帆に言われたことに。
そんなに接している回数は多くないのだ。
「そりゃ、危ないからだよ。真犯人がいたとして、ばれて殺されるとかなったら嫌じゃん」
「そうだけど」
「それに、婚約者さんも死んでるんだ。俺としては別に深雪先生に想い入れないからいつだってこの犯人探しやめてもいいって思ってる。他の生徒だってそうだ。俺達以外にも犯人探そうと躍起になってる生徒いたみたいだけど、もうあきらめてるよ。あれから・・1か月もたってるんだから」
「!!」
「俺は死んだ人より、生きてる人を心配してるだけ。悪い?」
「・・・え・・と・・悪くない・・です・・」
弱々しく答える美帆をみて悠は我に返った。
「あ・・、ごめん。言い過ぎた・・・」
「うんん、狩谷君の言うことは正しいよ」
でも決して美帆は悠と目を合わせない。
「明がしてるのは無謀なことだって・・本人もわかってると思う・・」
「・・・」
「あのさ・・1つだけ・・正直に答えてほしい」
「何?」
「狩谷君は明の味方・・だよね?」
ようやく顔を上げ目を合わせた。
その目は泣きそうで、恐れていたけれども・・真剣だった。
「・・・そうでありたいと思うよ」
美帆を目の前にして、断言した答えを出すことを悠はできなかった。
夜、悠のアパートに黒服の男が訪れた。
「ツキ、何をしているんだ?」
「え?」
高校の宿題をしていた。
「宿題ですよ」
「そうじゃない」
男はバンと手を宿題の上においた。
「高校で何をしているかと聞いているんだ。この前の話を忘れたのか?」
「・・・」
悠は、じっと男をにらみ返した。
「これ以上は許されないぞ」
明の行動はずっとおさまることはなかった。どれだけ悠が止めようとしても。
「お前がすることはわかってるな」
限界に近付いているのは悠にもわかっていた。それを見越しての命令だった。
「はい」
「それならいい」
そして、男は何事もなかったかのように手をどけると次の仕事について話し始めていた。




