犯人探し
女教師の事件は結局自殺で処理された。
「俺さ、深雪先生絶対に自殺じゃないとおもうんだ」
葬式も終わり、学校も落ち着いてきたころ明は悠に言った。
「なんで?」
「だって、先生結婚するはずだったんだぞ?一ヶ月後・・」
「そうみたいだな」
割と有名な話だ。
「それなのに今、自殺なんてするか?」
「結婚が嫌になったとか」
「そんなのあり得ないよ・・」
「明?」
「先生はそんな人じゃない」
「・・・家庭教師だったっけ?」
明の中学1年生の時の家庭教師が深雪だったそうだ。
それからも交流はあったらしく、明はよく深雪になついていた。
「うん、だから深雪先生があんな自殺なんてする人じゃないってよくしってるし、結婚式すごい楽しみにしてたんだ」
「人間何があるかわかんないぜ?いきなり自殺したくなったとかあるみたいじゃん」
「確かに・・それもあるかもしれないけど・・」
「なんだ?」
悠の言葉に少し動揺するも明は言った。
「もしも・・本当に先生が自殺したいほど悩んでたとするよ」
「ああ」
「でも飛び降りなんかしない。絶対に」
「え?」
「先生は・・高所恐怖症だ」
「!」
「俺の部屋2階なんだけど絶対に窓とかベランダには近づこうとしなかったし、学校でもできる限り窓には近づいてない。それほど強度の高度恐怖症だったんだ」
「まじ・・?」
「マジ。学校では隠してたみたいだけど」
ほとんど学校では知る人のいない話だ。実際、悠も初耳だった。
「だから・・高いところから飛び降りるなんて不自然すぎるんだよ。自殺するなら・・手首切ったりとか・・練炭とかだよ。高い所になんでわざわざ・・」
高所恐怖症の人が、4階建ての校舎の屋上から飛び降りるのだから不自然も当たり前だ。
「じゃあ、殺人って明はいいたいのか?」
「・・・わかんないけど・・少なくとも自殺じゃない。絶対に犯人はいる」
「誰だよ」
「わかるわけねーだろ」
はあ、と溜息をつく。
「だからさー」
明はバンと机をたたいた。
「犯人探そうぜ!」
「・・・は?」
「犯人探ししようっていってんだよ」
「本気か?」
「本気」
次は悠が溜息をついた。
「はあ・・たとえ殺人事件だったとしても、そう簡単に犯人が見つかるわけないだろ」
「わかってる、でもこのままじっとしておくのも嫌なんだ。自殺って決められたし・・」
「明・・」
「それに、犯人がいるとしたらこの学校の関係者だと思う」
それには確信しているようだった。
「え?学校関係者?」
「ああ、だって昨日の放課後先生に会ったと時に、これから人と会う用事があるって言ってたし、学校を出ていないってなると学校関係者だろ?」
「わかんねえよ?意外と外部の人かも」
「外部の人がわざわざ屋上に呼びだすのか?あそこ鍵かかってて立ち入り禁止じゃないか」
「確かに」
「噂によると、鍵は先生が持ってたらしいし」
「じゃあ、先生があけたということか?」
「それもあるけど・・犯人があけて持たせたっていう可能性もあるだろ?」
「・・・そうだな」
一応明の言うことはおかしくはない。
「ちなみに、明の言う学校関係者って先生とか?」
「それか事務員とか」
「生徒は?」
「生徒もあり得るとは思う」
「容疑者いっぱいいるじゃねえか」
「仕方ないだろ!それ以上はわかんねえんだ!」
「はいはい」
「だから・・頼む!手伝ってくれ!」
「・・・」
「俺は先生の幸せを奪ったやつが許せないんだ。絶対に捕まえたい」
「・・・はあ・・」
「悠、溜息つくなよー」
「危険かもしれないぞ?」
「わかってる」
「本当に?」
「わかってるよ、それでも俺は犯人を許せない」
「・・・わかったよ」
「悠!」
悠の言葉に明は満足する。
「でも」
「何?」
「無茶はするなよ、気が済むまで手伝ってやるよ」
「ありがとう!!」
明はただ、純粋に協力者ができたことに喜んだ。
協力者の気持ちなんか知らずに。
本格的な捜査は明日からということになって帰路についた。
明とそして一緒に帰っていた美帆とも途中でわかれると、悠は一人真剣な顔をして歩いていた。
「はあ・・」
大きく息を吐いた。
悠の頭の中ではさっきまで会話がめぐっていた。
「犯人・・見つかるわけないじゃん」
深雪の立っていた教壇を思い出す。そして・・突き落とす瞬間も。
「高所恐怖症なんてデータになかったぞ」
さっき明に言われるまでそんなこと知らなかった。組織から送られてくる資料にもそんな記載は一切なかったのだ。
「しまったなあ・・」
ぶつぶつと呟いていた。
「何が?」
曲がり角を曲がった瞬間に声を掛けられていた。
「何でもないですよ」
「・・・そうか」
サラリーマン風の男が角を曲がると待っていた。
「それより仕事だ、ツキ」
「・・・・」
差し出してきた封筒を悠・・ツキは黙って受け取った。
「この前の女教師の婚約者」
男は淡々と言う。
「やはり女教師が喋ったようだ。運よくまだ警察には知られていないが・・」
「・・・」
「殺せ」
「・・はい」
詳細は封筒の中身を読め、とだけ言うと男はどこにでもいるサラリーマンのように町中に消えていった。
悠は・・ツキはそのまま婚約者の家に向かった。
「こんにちは」
「・・・深雪の高校の・・」
「教え子です」
泣きはらした目をする婚約者に一生徒として話しかけた。
「ま、今日はそんな用事じゃないんですけどね」
「え?」
ツキは手袋をつけ、ロープを準備していた。
「先生から何か余計なことをきいてますよね」
ロープをピンとはった。
「君・・?」
「死んでください」
「!!!」
気づいたのか逃げようとした。
「暴れないでくださいよ」
「な・・きみ・・は!!!」
いつの間にかうつぶせに上から押さえつけられていた。
「深雪を・・殺したのは・・お前か!!」
「ええ、口止めしたのにあなたに話しちゃうから」
「!!」
「おしゃべりはここまでです、よかったですね、もうすぐ先生に会えますよ」
ツキはロープを首にかけると一瞬で勢いよく引いた。
「っ。・・・・・・・・・」
動かなくなった。
「さて・・と」
自殺に見えるように工作をするとツキはその場を後にした。




