きっかけ
放課後、学校から出ようとした瞬間に悲鳴が聞こえた。
「キャー!!」
「だれか落ちたぞ!!」
「自殺!?」
自殺?学校で!?
そんな言葉が頭をよぎる中、木下明は叫び声のした方向へ走った。
「明!」
「美帆!何があったんだ?」
人だかりの中に幼馴染みの吉川美帆を見つけると話しかけた。
「飛び降りだって!」
「自殺!?誰!?」
美帆は見えないからわかんないというが、次の瞬間誰かが叫んだ。
「深雪先生だ!!」
深雪先生・・斎藤深雪。男子も女子も関係なく人気のある女教師の名前だ。
「深雪先生だって・・」
「うそっ」
深雪だと断定された瞬間に、周りの騒ぎはより大きくなった。
「深雪先生・・?」
明と美帆は思わず顔を見合わせた。
「うそでしょ?」
「そんなわけ・・だって、先生もうすぐ結婚・・」
結婚する予定だった。幸せそうに笑う深雪の顔が頭の中をよぎる。
「本当だよ」
2人で混乱する中、クラスメイトが大群の中から出てきた。
「悠・・」
狩谷悠。明のクラスメイトであり親友。
「見たのか?」
「見た」
悠は人だかりの向こうを見た。
「先生は?」
悠は首を振る。
「あれじゃ・・生きてるわけない」
「・・・」
「・・・行かないほうがいいよ」
明と美帆が見に行こうとするのを止めた。
「見ないほうがいい」
それと同時に気持ち悪くなったらしい生徒が何人か出てきた。
「ほら・・」
悠は彼らたちを指差して言う。
「でも・・っ」
明は悠の腕を振り切って大群の中に入って行った。
「・・先生・・」
コンクリートの上には赤い血だまり。
そしてその血だまりの中に、おかしな方向に首や腕が曲がった女がいた。
「うっ・・」
吐きそうになるのをこらえ、正面をみる。
「せんせぇ・・」
「うそだろ・・!!」
周りでは泣き崩れる人の声が響いていた。
「なんで・・結婚するんじゃなかったのかよ!!」
ぐっと歯をかみしめる。
「ほらほら!どいて!下がりなさい!!」
騒ぎを聞きつけた教師たちがようやく到着し、生徒を現場から遠ざけ始めた。
警察が到着するとブルーシートに囲まれ、生徒たちは全員追い出された。
「明、先生だったの・・?」
少し離れたところで美帆と悠が待っていた。
「顔は・・見えなかったけど・・」
正面から落ちたのか、顔は潰れてほとんど誰かわからなかった。
「あの格好は深雪先生だ・・」
明は悔しそうに話した。
「見ないほういいっていっただろ?」
真っ青な顔をしている明を心配するように悠が肩をたたいた。
「大丈夫か?」
「・・・大丈夫・・」
そして明はもう一度、深雪の死体のあった方向を眺めた。
明の顔色が少し良くなると、急に悠は美帆に言った。
「吉川さん、明を頼む」
「え?」
「こんなときに悪いけど・・俺急用があって」
ばつがわるそうに言う。
「うん、わかった」
「本当にごめん」
「悠・・?」
明が悠を見た。
「お前はさっさと帰って休め」
「・・・わかった・・」
悠は明が了承するのを確認して、走って校門を抜けた。
「・・・明?帰ろっか」
「そうだな・・」
美帆は明に話しかけ、2人はゆっくり校門へ向かった。
そして帰りながら明は確信したように言った。
「深雪先生が自殺なんて考えられない」
「・・・そうだね。もうすぐ結婚って言ってたし」
「犯人・・絶対許さねえ」
「明・・」
明は手をギュッと握りしめた。




