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犯人は・・・  作者: 槻乃
1/9

はじまりの事件

プロローグみたいなものです。

赤い赤いモノが夜の暗闇で噴き出した。

嫌な鉄の匂いがひろがり、うめき声が聞こえる。


「任務完了」


ぼそっと呟く声がした。声を刺した主は携帯を取り出すと迷わずある番号をうち電話をかけた。

「ツキだ。動物公園東の通り」

それだけ言うと携帯をしまい、その場・・死体のそばからそっと立ち去った。




翌日の太陽が真上に上がったころ、ある古いぼろぼろのアパートで一人の青年が目を覚ました。

「んー・・よく寝た」

寝癖でぼさぼさの紙をなおしながら思いっきり背伸びをした。

「12時か・・・学校・・」

そうぼやきながら壁を見た。そこにあるのは紺色のブレザー。

そう、青年・・いやまだ少年といえる顔つきのこの子は高校生。今日は平日で明らかに学校には遅刻だ。

「仕方ない・・ああ」

溜息をつきながら他のものに目をうつす。パソコンにメールが届いていた。


  15時  修佐高校 屋上


今は12時。修佐高校は少年の通う学校だ。

「さぼれないな・・、今からなら午後の授業には間に合うか」

少年は面倒くさそうにおきあがると、制服に着替えアパートを出た。





「今ごろ登校かよ、もう昼休みだぞ」

教室に入るなり近くにいたクラスメイトが話しかけてきた。

「ああ・・」

「寝癖つきまくりだぞ」

「今起きた・・」

「遅いって」

そう声をかけられながら席につくと、チャイムがなり午後の授業が始まった。


ホームルームが終わって少年は教室からすぐに姿を消した。

向かった先はメールの指示する屋上。

ここの屋上は当たり前だが立ち入りい禁止でドアにももちろん鍵はかかっていた。

「さて」

一つ溜息をついてポケットから特殊な形の針金を取り出した。

カチャカチャと鍵をためらいもなく開けた。

「あの・・」

屋上に入って中央まで歩いた時、後ろから呼び止められた。

バタンとドアが閉まるのを聞いて少年は振り返る。

「何ですか、深雪先生」

そこに立っていたのは20代の女性。学校では結構人気のある女教師だ。

「何かご用ですか?なぜここに?」

「あ・・」

「はあ・・」

また溜息をついて、女教師の目をじっと見つめて言った。


「卑しきもの、賤しきものに・・」


すると深雪は恐る恐る言葉を紡いだ。


「制裁を」


「苦しむものに・・」


「安らぎを」


少年と深雪は交互にそう言った。

「じゃあ、本題に入りましょうか」

「え?」

「えって・・わかってて合言葉を言ったんじゃないですか?」

「なら・・あなたが」

「はい」

深雪は驚き、少年は淡々と答えた。

「ブライト社、掃除係です」

「か・・」

「しっ・・・名前は呼ばないで」

少年はさっと深雪の後ろに回り口を塞いでいた。

「仕事中の名前はツキっていいます。

「ツキ・・」

「はい、それで呼んでください。ちなみに仕事以外で呼んだら殺します」

「・・・わかった」

少年ツキは深雪の返事にうなずき少し笑った。

「では、本題に入ってもいいですね」

ツキは深雪の正面に回った。

「ええ・・・」

そして彼女は話し出した。


要約すると話はこうだ。

数年前に付き合っていた彼氏と偶然再会したそうだ。そして急によりを戻そうと言ってきた。

今、新しい彼氏もいるため断ると、ストーカー行為を始めたそうだ。しかも、男を別れた原因は暴力であり、今も生活を壊そうとしている。


「で、男をどうして欲しいんですか?」

「・・・」

「質問を変えます、男にどうなって欲しいんですか?」

すると深雪は静かに言った。

「消えてほしい」

「・・・」

「あいつがいると私の生活はどんどん壊れてしまう、やっと手に入れた幸せを・・!だからこの世から消えてほしい。あいつの存在は迷惑なのよ!!」

深雪は苦しそうに叫んだ。

「わかりました」

「え・・」

ツキの返事に深雪は驚く。

「わかりましたよ。先生の元彼を消せばいいんですよね」

「そうよ」

するとツキは携帯を出した。

「携帯は禁止って言うのは目をつぶってくださいね」

修佐高校は携帯持ち込み禁止。

「依頼確認です」

電話がつながるとツキはしゃべり始めた。

「ツキです・・はい、依頼は男の・・はい、そうです。日付ですか?・・あー・・はい。わかりました。では」

携帯を切ると深雪をみた。

「今週の日曜日に依頼を実行します。料金ですが300万円です」

「300・・・」

「300万は一気に支払ってもらいます、分割はありません」

貯金でぎりぎり払えますよね、と付け加えた。

「期限は実行から1週間以内」

ツキの言葉に深雪は考え込む。

「・・・わかった」

深雪は悩みながらも決心したように答えた。

「わかりました」

すると少しツキは表情を緩めた。

「依頼成立ですね、失敗したらお金は結構です。では、この契約書にサインと血判をお願いします」

そして契約書は作成された。






日曜日、今日までにキャンセルはなかった。

「仕事開始・・かな」

ツキは準備を整えアパートを出た。

時間は昼過ぎ、町を歩き回って男を探した。


みつけた・・・


そのまま男を尾行した。すると、夕方男は深雪のマンションの方へ向かった。

「すいません」

ツキは男に近づき話しかけた。

「少しついてきてもらえませんか、ある人が待っています」

「は?」

「そこのマンションに住む女性です。あなたに話があるそうなんですけど・・」

「どこだ」

男は深雪のことだろうとわかったのか話しに食いついてきた。もちろん・・嘘だ。

「晴舞神社です」

この先にある神社の名前を言った。

「ふっ」

男はにやりと笑うと歩き出した。



神社に着いた。もちろん誰もいない。

「お前・・」

男が振り返る。

「暗くなりましたねー・・」

ツキは周りを見渡す。

「おい!」

男はツキにつかみかかろうとして・・地面に投げ飛ばされた。

「うっ!!」

「さて・・始めましょうか」

ツキはそう言うとナイフを取り出した。

「は?」

男の様子に関係なくツキはナイフを構え、走った。

次の瞬間には男の腕から血が流れ出していた。

「ぎゃあああ!!」

それに続いて、腹、背中、足と血は止まらない。

「な・・何で・・」

「依頼です。苦しんで・・死んでください」

ツキは傷口を蹴り上げた。

「た・・たすけ・・」

男の言葉に耳を貸すことなくツキは傷つけ続けた。

「う・・がああ・・・」

動けなくなったところを仰向きに寝かせると、ツキはまたがって何か所も無表情で刺した。

気絶できていたらどれだけ楽だっただろう。ツキは、急所を外し、気絶できないギリギリの状態を保たせた。

「さあ」

ツキは男が真っ赤に染まったところで手を止めた。

「伝言です」

「だ・・れ・・」

「深雪さんから」

「!!」

「さようなら」

ツキはそれを言うと首を掻き切った。

そして動かなくなった男をみて携帯を取り出した。

「ツキだ、晴舞神社」

ツキはそれだけ言って電話を切った。



次の日、ツキは久しぶりに朝から学校に来ていた。

「おはよう」

「・・・珍しいな」

そんなことを言われながら席に着いた。ホームルームが始まり、担任の話があった。それも終わると、ツキは教室から出て人を探した。

「深雪先生!」

一枚の紙を取り出す。

「え?」

深雪がその紙を見て静かにうなずいた。



放課後、2人は屋上にいた。

「任務完了です。契約は守ってもらいます」

「わかったわ」

「それでは1週間以内に現金で俺のところまで持ってきてください」

「ええ」

深雪は覚悟していたように答えた。

「もしも、持ってこなかったらすぐに先生のところに行くんで」

ツキはにっこりと、でも冷たく言った。

「そして、契約の際にも言いましたが・・誰か人に話すようなことがあれば殺しますから」

「・・・言わないわよ」

「今は・・ね」

「どういうこと・・?」

不安そうに深雪が聞く。

「依頼したことが後になって怖くなって人に言ったり、警察に行こうとしたりする人、少なくないんですよ」

「!」

「だから今は・・ということです。わかりました?」

「・・・わかった」

そしてこれからのことについていろいろ話したあと、最後に深雪が言った。

「最後に教えてくれる?」

「何を?」

「彼を殺した・・・手をかけたのはあなた?」

ツキはためらうことなく簡単に

「そうですよ」

と答えた。

「えっと・・なんで・・?」

「はい?」

「何でそういうことをしているの・・?」

「・・・はあ・・」

ツキは大きく溜息をついた。

「お金のためですよ。親いませんし、生きるためにはこれしかないんです。殺すことに何も感じませんし」

ツキは反論は聞かないという目で深雪を見た。

「では、そろそろ戻りましょうか」

校内に入るドアを指差した。

「こっちも最後にいいます」

「?」

「先生の命は俺が握っていると思ってください」

ツキはナイフを深雪に向けた。

「わかりました?」

「ええ・・」

そう、とツキは言うと先に深雪を帰らせた。

そしてドアを閉め1人屋上に残り小さく呟くのだった。


「確かに手をかけたのは俺だ。でも・・先生・・あなたが彼を殺したんですよ・・」


と。






半年後、修佐高校で飛び降り自殺が起きた。

「だから言ったのに・・」

少年は誰にも聞こえないように呟く。

携帯のバイブがなり面倒くそうにとった。

「・・・わかりました」

少年は携帯を閉じ、歩き出す。次の依頼主のもとへ。

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