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第0話 目的

アルバヌス王国軍第七騎士団副団長、クロス。

それが、この国での俺の肩書きだ。


王国に忠誠を誓う騎士。

部下の命を最優先し、冷静な判断で戦線を支える存在。

少なくとも、周囲の人間はそう認識している。


だが、その認識は正しくない。


俺は魔族だ。

魔王軍四天王ロウキ直属の命を受け、王国軍へ潜入している。


目的は一つ。

人類最強を倒すこと。


「左翼、後退。第三列を前へ」


戦場で俺は、王国軍の副団長として振る舞う。

声に感情は乗せない。

命令とは、届けばそれでいい。


アルバヌス王国軍は、規律と連携を重んじる組織だ。

英雄の存在を柱に据え、戦争を続けている。


そしてその柱こそが――

第一騎士団副団長、アーク。


人類最強と呼ばれる存在。


彼が戦場に現れた瞬間、流れは変わる。

士気は跳ね上がり、恐怖は後退する。


個の力が、組織の論理を上書きする。


俺は距離を保ったまま、その戦いを観察していた。


(正面からでは勝てない)


それは感想ではなく、結論だった。


だからこそ俺は剣を振るうのではなく、

この国の内側にいる。


信頼を積み重ね、

組織を理解し、

英雄への依存を把握する。


王国軍が、なぜアークを失ってはいけないのか。

そして――失った時、何が起こるのか。


それを知るために、俺は人間として振る舞う。


戦いが終わり、負傷者の手当てが始まる。

騎士たちは祈りを捧げ、仲間の死を悼む。


俺はその輪の外に立っていた。


祈りを否定するつもりはない。

だが、そこに救いを求めることもない。


魔族として生きる俺にとって、

これはあくまで任務だ。


遠ざかる第一騎士団の背中を見つめながら、

俺は改めて胸の内で確認する。


――人類最強を倒す。


剣、組織、それとも信仰そのものでか。


方法は問わない。


アルバヌス王国軍第七騎士団副団長クロスは、

そのために今日も忠実な騎士を演じ続ける。


魔族であることを隠し、

潜入者として、

そして――人類最強を終わらせるために。

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