2.神の啓示
俺はなんでもないと笑って畑の中へ入ろうとしたのに、テインスは俺の腕をつかんで引きとめる。
「エラン、本当に何かあるなら言え。お前に隠しごとは似合わない」
「そうだよな。だけど……今はまだ確信が持てないんだ。だからこの後、何か起こったその時は……」
俺はぎこちなく笑ってごめんと言ってから、畑へ向かう。
テインスはそれ以上聞いてこなかったが、俺の様子を気にして側から離れない。
元々力仕事が苦手なヤツだから、普段は農具の修理とか細かい作業をしているはずだ。
だけど、この日はたまたま外にいたのは覚えている。
で、俺も適当に話しながら畑を耕していたら……急に頭痛がしたはずと考えた瞬間。
キィンという音と共に激しい頭痛に襲われる。
「くっ」
「おい、エラン! 大丈夫か?」
テインスはすぐに俺の側に近寄って心配してくれる。やっぱり……この頭痛も一緒だ。
そして俺が大丈夫と答えようとすると、急に頭の中で声が響く。
『エラン……エランティーノ・セイフェル。お前は選ばれし者、勇者である』
「勇者……」
「おい、何を言って……」
『今すぐ旅立ち、魔王を打ち倒すのだ。世界の平和は、お前の手にかかっている』
神の声はすぐに消えた。そうだ、この簡単な一言だけだった。
心配しているテインスに笑顔を向ける。俺はテインスにまず全てを打ち明けることにした。
前は喜んで神の啓示だと騒いだが、今回はやりなおしの世界なんだ。
だから、俺はこれから起こることも確信できる。
「テインス、お前は俺と違って頭もいい。だから、今から俺が話すことを聞いてほしい。俺は嘘偽りなく話すが、信じられない話だと思う」
「エラン……お前が何を言いたいのかは知らないが、今日のお前がどこかおかしいことは分かる。オレにも分かるように説明しろ」
「……ありがとう」
俺はもっとテインスを頼るべきだった。テインスはやりなおし前も一人で行くのは無謀だ。
本当に旅立つ気なのかと何度も止めてくれていたのに、俺はテインスを振り切って一人で旅に出てしまったんだ。
だから、今回は全てテインスに話すと決めた。
俺は……今ここにいるのはやりなおしの玉のおかげであること、前回同様に神の啓示を受けて勇者だと言われたこと。
そして前回は一人で魔王の元へ行ってやられてしまったことまで、全て包み隠さずテインスに話して聞かせた。
「お前の言っていることは正直信じられない。それでも、オレに話してくれたということは……これが真実であるという証拠が出てくるということか?」
「啓示を受けた者は、手の甲に神に選ばれた者の印が浮かび上がるんだ」
俺はテインスに手の甲を見せてやる。右手の甲には間違いなく神の印が浮かび上がっていた。
その印は教会のシンボルとよく似ていることから、本物なのだろうという話になったはずだ。
「確かに……その光る印は今までお前の手の甲にはなかった。神の啓示は本当で今ここにいるお前は一度今の出来事を経験済みだってことか」
「そうだ。だから、俺は今から長老のところに行って旅立つことを伝えてくる。今度こそ……間違えたくないんだ」
「エラン、お前の言うことが全て本当ならお前は魔王に殺されたってことだろう? それなのに旅立つのか」
「ああ。世界が平和になるなら。だけど……それは強い武器と防具に頼ることなく、みんなを守っていけたらいいと思うんだ」
俺にはまだ何が正しくて間違いなのかは分からない。だが、伝説の剣と勇者の鎧を受け取るのは間違いな気がしていた。
バルセリオン城で神の啓示を受けた勇者だと伝えた後、王様が授けてくれた武器と防具。
そして、魔王が最後に言い残した言葉。私の真意も知らぬ者とはどういう意味だったのか?
俺は何となく引っかかっていた。今はあくまで、ただの勘にすぎない。




