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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
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似た者同士


 午後になり、どうにか家事が一段落した。その頃には、私はソファを借りて伏せっていた。正直、予想していた以上の重労働だったわ。母親は毎日のように、これをこなしているというの。


 私も両親が共働きだから、家事の手伝いをすることはある。でも、あくまで手伝いだ。丸ごと全部一人でやりきるなんて、想像しただけでも億劫だ。

「こんなのを毎日こなしている和菜は尊敬に値するわ」

「私もそう思う」

 私の呟きに同調したのか、双葉が頷く。


 どうにかノルマを達成できたのは、彼女の助力に依るところが大きい。はっきり言って、敦美よりも数倍有能かもしれない。

 知らない間に冷たい視線を送っていたのだろうか。当の敦美は拳を振り上げて反論する。

「不平。わたしだって、ずっと三平の相手をしていた」

「九割ぐらい、デュエバをやってなかった」

 掃除の合間にその様子を観察していたのだが、デッキを強化した後の三平は飛躍的とでもいうべき強さを発揮していた。本気のデッキを使っている敦美が苦戦しているのだから間違いない。私が挑んでいたとしても、下手したら負かされていたかもしれない。


 しばし、テレビを見ながらグダグダする。そんな姿の母親が揶揄されることあるけど、体験してみると馬鹿にはできないわね。

 そうしていると、私の携帯電話が着信音を奏でた。スリーコールぐらいした後、通話ボタンを押す。


「こにゃにゃちわー」

 珍妙な挨拶をする時点で通話の相手は丸わかりだ。努めて冷淡な声音で応じる。

「どうかした?」

「んもう、つれないな。もうすぐ、そっちに帰るから様子を聞こうと思っただけだって」

「さぞかし、お楽しみだったんでしょうね」

「だから、声が怖いって」

 ウキウキしてるところ悪いけど、こっちは疲労困憊だっての。


「なーんか、偏見持ってそうだから言っとくけど、こっちはこっちで大変だったんだからね。フルタイムの労働を舐めるなよ」

 遠くで、「フルタイムではない」という補足の声が入る。


「疲労。とにかく大変だった」

「あんたは三平とデュエバやってただけじゃない」

「おお、なんとも興味深い話をしているじゃないか」

 敦美が割り込んでくると、友美が食いつく。予想通りの反応ではあるけど。


「もしもし、小鳥遊さん。悪いわね、家事を手伝ってもらったみたいで」

 電話口の相手が代わったのか、落ち着いた声音が届く。

「気にしなくていいわよ」

「問題はなかった? 三平がわがまま言ったりとか、善詩乃が大騒ぎしたりとか」

「そういうことはあったけど、平気だったわ」

 努めて平然に受け答える。実際は大変だったのだが、これで和菜に心配をかけては意味が無い。


 無理に話題をかえるためにも、私は自然とこんなことを口走っていた。

「それよりも、双葉ちゃんだったかしら。彼女、妹にくれないかしら」

「あなた、何言ってるの」

 対面していなくとも、冷ややかな視線を浴びせられていることは察せられる。仕方ないではないか。今日を乗り切れたのは、彼女の助力に依るところが大きいのだ。


「やっぱ、キムっちは姉妹で似た者同士だよね。すごいなぁ、芽衣お姉さまとか言って」

「それは言わないお約束でしょ」

 友美が何故か急襲されている。あっちで芽衣と何かあったのだろうか?


 ともあれ、和菜が帰宅するということは任務は終了となる。彼女たちと合流するため、私は敦美を伴ってお暇しようとする。

「お姉ちゃんたち、もう帰るのか」

 挨拶もそこそこに靴を履き替えていると、三平に呼び止められた。後ろ髪を引かれそうだったが、一時の援助のために訪れたのだ。これ以上、長居するわけにはいかない。


「よければ、また来てくださいね」

 うん、一時の援助のために訪れたのだ。あれ、どうしよう。靴紐って、どうやって結ぶんだっけ。

「指摘。唯、指がとまっている」

「う、うるさいわね。ほら、友美たちが待ってるわよ」

「不服。唯が待たせている」

 遠くで善詩乃の泣き声が聞こえたのを言い訳にしようか。そんな横着がよぎったものの、双葉が駆けて行ったことで霧散したのだった。

カード紹介

俊足コヨーテ

クラス:ビースト ランク1 コスト2

攻撃力100 体力200

速攻

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