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カードゲーマー百合  作者: 橋比呂コー
第3章 木村和菜
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和菜の逡巡

久々の更新だけど短めでごめんなさい。

「お疲れ様。初めてでここまで戦えるなんて。唯ちゃん以来の逸材かな?」

「ありがとうございます」

 私ははにかみながらも、手渡されたカルピスソーダを受け取る。


「あーあ、負けちゃった」

「でも、翔ちゃんもいい線行ってたよ。ほら、勝負の後は握手、握手」

 翔太少年がおずおずと手を差し出して来る。私が握り返すと、朗らかに歯を見せた後、テーブルから去っていった。


「どう、バトルの感想は」

「楽しかった、です」

「そんな遠慮しないでも、楽しければ素直に楽しいと言えばいいのよ」

 バシリと肩を叩かれる。これは友美が夢中になるのも分かる。それに、三平がカードを欲しがるわけも。


「なんならさ、キムっちが自分で使うのはどう? せっかく使いこなしてたし」

 思わぬ提案に私は目線をデッキに落とす。逆転のきっかけとなったモモ・タローのカード。それに、未だその真価を確かめられていないアリス。魅力的なカードたちが、まるで手招きしているかのように見つめ返しているようだった。


 私は生唾を呑み込む。正直、二つ返事で許諾したかった。だけど、

「悪いけど、それはできない」

 固辞するように掌を広げる。意外そうな顔をする友美と芽衣さん。私は無言で俯く。


 そう、あの日誓ったのだ。私があの子たちを守る。だから、私が余計な遊びにかまけるわけにはいかないのだ。


「和ちゃん、そんな気負わなくても」

 芽衣さんの言葉が途切れる。その時、どんな顔をしていたのだろうか。飄々としていた彼女が息を呑んでいるというのが嫌でも伝わって来たのだ。


 そして、こういう時に茶々を入れてくる友美までもが押し黙っている。我に返った私は無理に笑顔を作る。

「すみません、変な空気になって。とにかく、そのデッキは弟へのプレゼントと決めているんです。それ以上の高望みをするつもりはありません」

「デッキをどうするかは当人の意思だから、これ以上どうこう言うつもりはないけど」

 それでも、芽衣さんの困惑は拭い去れないようだった。


 その後は滞りなく業務が進む。閉店時間は夜の八時だが、「中学生をそこまで働かせるわけにはいかない」と、午後五時に業務終了となった。

「二人とも、お疲れ様。おかげで助かったよ」

「いえ、大したことしていませんし」

 カードを並べて、ゲームで遊んだぐらいだ。そんな単純作業に四苦八苦している間にも、芽衣さんはレジでの接客だの、ネットの更新だのを進めていたのだから驚愕の極みだ。


 タオルで汗をぬぐっていると、私の前に小さな箱が差し出された。その正体は今更言及するまでもない。ワンダラーのストラクチャーデッキだ。

「今日の報酬。大切に使うんだぞ」

「はい、ありがとうございます!」

「芽衣姉ちゃん、あたしには何か無いの?」

「友ちゃんは勝手に店を手伝うことあるじゃん。でも、丸一日働いてくれたからな。何か欲しいカードあったら、持って行っていいわよ」

「ほんと!? ちょうど試したいカードあったんだよね」

 餌を前にした犬のように、カードケースにかじりつく。その様子を遠巻きに眺めつつ、私は手に入れたデッキを抱きしめるのだった。

カード紹介

狂った茶会

魔法カード コスト5

山札の1枚目を裏向きのまま場に出す。それは場を離れるまで、以下の3体のうち、選択したクラス:ワンダラーのトークンサーバントとして扱われる。


マッドハッター

コスト5 ランク1

攻撃力700 体力100

このサーバントが破壊された時、このカードのプレイヤーは400ダメージを受ける。


三月ウサギ

コスト5 ランク1

攻撃力200 体力400

このカードが場に出た時、相手の手札を1枚見ないで選んで捨てさせ、山札からカードを1枚引く。


眠りネズミ

コスト5 ランク1

攻撃力300 体力300

このカードが場に出た時、場のカード1枚を持ち主の手札に戻す。

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